しっぽり更ける飯坂の夜
食が止まらない! とはいえテーブルには円盤餃子に焼きおにぎり、サラダにコーラと料理がぎっしり! そんなすぐには食べ切れない。
「そういえば、V-tuber のほうはどう?」
食に夢中になりつつ頭の片隅にずっとある、今回の旅の目的。V-tuber『うつくしまももか』をプロデュースするにあたっての材料集め。
「福島だけでやるのはなかなか厳しいよね、色んな意味で」
「風当たり的な?」
「飯坂ではね、そういうの認めてくれるけど、というか欠かせない存在にまでなってる感あるけど、私の身の周りではなかなか」
「茅ヶ崎でも風当たり的なものがないわけじゃないけど、田舎町と言っても全国的に見れば都会の類に入るだろうから、他人に干渉されにくい部分はあるかも。隣の藤沢は思いっきり都会気質だからか2次元カルチャーも含めて新しいものをどんどん取り入れてるし」
「藤沢は2次元キャラだけで自治体ができる。藤沢市特別自治区2次元村みたいな」
「そういう中で存在感を示すのは逆に難しいかもね。とりあえずは私たちにできることを地道にやっていこう」
もぐもぐもぐ、もぐもぐもぐ。おしゃべりしたり黙々と飲食していたら、おやなんと滞在1時間以上。ラストオーダーの時間になったので、味玉味噌ラーメンを取り皿付きで注文した。
しばらくして運ばれてきたのは、野菜炒めと半熟の味玉が乗った、これだよこれ! な食堂の味噌ラーメン。少しだけ食べたいという巡ちゃんの分を取り皿に分けていただきます。スープを一口、野菜シャキシャキ麺つるつる、味玉とろ〜りおいしいね。
「あ〜、いいねぇ、静かな街で、のんびりまったり、これぞ福島の良さだと、茅ヶ崎人の私は思うねぇ〜」
「そういう意味では茅ヶ崎と福島って、似てるよね。隣に藤沢と鎌倉という派手な観光地、福島の隣はあの仙台や松島を擁する宮城」
「派手なところはそれはそれで楽しいが、心を落ち着けたいときもある」
「あー、ね」
「そういやね、私たちが泊まってるほりえや旅館はサッポロ軒のおっちゃんのお気に入りで、隣のお茶屋さんはサザン通りのお茶屋さんとつながりがあるんだよ」
サッポロ軒は茅ヶ崎の雄三通りにある北海道ラーメンの店。サザンオールスターズの桑田さんが通っていたのも有名な話。
「ほへ〜、世間は狭いね」
お酒は飲んでいないのに、しっぽり更けてゆく飯坂の夜。




