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私たちは青春に飢えている ~茅ヶ崎ハッピーデイズ!~  作者: おじぃ
なつやすみ

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クマ出没注意!

「いーなわーしろー!」


 SATONO号との別れを惜しみつつ猪苗代駅で下車。外構だけログハウス風の駅舎を出て、後ろに誰もいないのを確認した沙希ちゃんは郡山駅到着時と同じく笑顔で両手を天へ伸ばした。東京駅ではやらなかったけれど、もはや恒例行事。藤沢でも横浜でもやらなかったから、近所ではやらないのかな。基準がわからないし自ら訊いて知ろうとも思わない。


 よく晴れて、暑いは暑いが風涼し。


「うーん! 風が涼しい! 茅ヶ崎より北極に近い!」


 北海道は沖縄より暑いけどな。


 ツッコミは心の中に留め、とりあえず実家のある右方向へ歩き出す。


「クマに気をつけてね」


「おお、こんな街の中でもクマ出没注意なのかい?」


 街の中とはいえ現在、駅前は活気があまりなく、歩いている人はほぼいない。観光客も地元住民も駅からはバスやクルマで移動する。付近の店舗も多くは閉店し、飲食店が数軒残っているだけ。


「うん、脅しでもなんでもないっす」


 ボコボコの歩道を歩きながら歩きながら、沙希ちゃんにクマ出没について説明する。


「町民からの目撃情報は駅から離れたところで多く上がってるけど、全国ニュースになった地域はここから徒歩20分ちょいくらい。茅ヶ崎で例えると駅から海辺のゴルフ場とか高田のス◯ローくらいの距離」


「まあまあ遠いね。そこはどんな感じの場所なの?」


「ざっくり言うとホームセンターがあって、その向こうに湖がある」


「湖って、猪苗代湖?」


「うん、猪苗代湖」


「そこってさ、川が流れてたりする? 幅10メートルくらいだったかな」


「ああ、うん、小黒川おぐろがわね。沙希ちゃんよく知ってるね」


「前回みんなで行ったんだ。ああ、あそこらへんね。開けてるし、茂みはあるけどクマが出るようには見えないね」


「そう、いまはどこに出るかわからんのよ。猪苗代じゃないけど、大型スーパーの中に入ったとか、帰宅したら炬燵こたつに入ってた家もあるっていうし」


「都会は通り魔とか泥棒に気を付けなきゃだけど、のどかな地域ではクマさんに気を付けなきゃなんだね」


「マジで不意打ちだからね。物陰に隠れてるかもしれない。あそこの家の裏にいるかもしれない。すぐ後ろまで迫ってきているかもしれない。なるべくクルマとかバスとか、ハコのある乗り物で移動したほうがいい」


 せっかく来てくれたなら、安全に楽しんでほしい。だからこそ、クマがどこに出るかわからない現実から目を背けない。結果的に遭わなかったなら良かったねと、楽しい思い出を持って茅ヶ崎へ帰りたい。

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