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私たちは青春に飢えている ~茅ヶ崎ハッピーデイズ!~  作者: おじぃ
なつやすみ

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真っ赤なお鼻のやまびこさん

 上りエスカレーターを乗り継ぎ、無数の人混みの中を進む。コンコースは自動車のように同一方向へ進む人が固まるから、案外苦ではない。しかも茅ケ崎駅より人の流れが心なしか遅い。


 東京は田舎者の集まり。


 どこかで聞いたそれを、否が応でも実感する。


 新幹線の改札機にICカードをタッチ。それを境に福島が近くなった気がしてくる。引っ越すとき、きっぷを使ったのが懐かしい。ICカードを駅の黒い券売機に入れて簡単な手続きをすると、新幹線の一部区間はチャージ分からの引き去りで利用できる。ただし自由席限定。指定席はウェブサイトでの登録が必要。こちらもクレジットカード入手を機に済ませた。これで茅ケ崎から猪苗代まできっぷを買わず、ICカードだけで鉄道を利用できるようになった。


 21番線と22番線の間の通路にあるコーヒーショップでBLTサンドを私と沙希ちゃん揃って購入。ドリンクは私がアイスロイヤルミルクティーで、沙希ちゃんはアイスカフェラテ。


 階段から21番線に上がり、帰省の際いつも乗っている東北新幹線『やまびこ53号』を待つ。17両編成で、私はいつも自由席の中で比較的空いている、前から2両目の16号車に乗る。


「やあ、真っ赤で長いお鼻のやまびこさん、久しぶりだね」


 ほぼ全身が緑の車両と、鼻だけ赤い車両が併結した列車が進入、停車した。私たちの前には赤鼻電車の白い側面。沙希ちゃんは電車に話しかけるという奇行に出たけど、こういうニュアンスのアクションはいつものこと。


「乗ったことあるの?」


「うん、みんなで福島に卒業旅行したとき。あのときもこのくらいの時間だったなあ」


 沙希ちゃんたちが私と出会う前、飯坂温泉や猪苗代を訪れたと以前聞いた。違う土地の友だちが私の地元や馴染みの場所を知っているのは、なんだか不思議な感覚。


 折り返し運転時の車内清掃が終わり、乗車してデッキから左へ。ガラスに稲穂のイラストがあしらわれた自動ドアが開くと、黄色いシートが左右2列ずつ配置された客室が広がっている。通常の新幹線は片側が3列になっているが、鼻の赤い新幹線は在来線にも乗り入れるため車幅が狭く、そのぶん座席が少ない。


 沙希ちゃんを窓側に通し、進行方向右側、一番後ろの席に座った。後ろに人がいるのが落ち着かない性分。リクライニングを好きなように調節したいのもある。


 埼京線と並んでゆっくり走る新幹線。BLTサンドを頬張る。知り合いが乗ってくる確率がやや高い大宮駅では顔を伏せてスマホを注視。埼玉県は東北人だらけ。


 大宮、雛人形や着せ替え人形(ビスクドール)岩槻いわつき朝霞あさか。いまや猪苗代より埼玉県在住の同級生が多い。きっと交流のなかった顔見知り程度の人らも埼玉のどこかに潜んでいる。会いたくない会いたくない会いたくない……。

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