お盆の藤沢ライブ!
「わーあ、マジモンのライブハウス!」
暗黒の密室、換気はバッチリ。現地集合の武道くんと自由電子くんお久しぶり。自由電子くんは受験生なのに音楽活動をして大丈夫なのか。
ドラム、アンプ、なんか色々と機材。ステージと言っても数十センチの段差があるだけで、客側に椅子はなく、欲しけりゃパイプ椅子でも持ってこいという感じの質素な空間。けど、それがいい。たぶん郡山にもあるんだろうけど、シモキタなんかを彷彿させる、キャパ数十人の小さな小さなライブハウス。いよいよ私もシティーガールになってきたな。会津訛りも段々なくなってきた気がする。
訛りがなくなった気でいる福島県民は、だいたい大いに訛っているらしい。
みんな、こんなところで練習してるんだ。イメージよりも少し小さめ、ステージの高さは低めだけど、なぜかそれが余計に興奮する!
バンドメンバー5人、観客は私だけの、実質無料貸切ライブ。試聴会ともいう。
打てば響くドラム、漂うベースの重低音、波打つエレキギター、鈍い直線のキーボード。
チューニング、音合わせ、淡々と準備を進める5人。何曲かやるつもりなのか、聴き覚えのある曲もさらっと演奏していた。演奏される度、聴かれる度、パチンカス、ギャンブルクズのタトゥーを刻まれるまみちゃん先生の曲。少し間が空くと、沙希ちゃんがエレキギターで『真夏の果実』のサビを奏でた。何この厨二病っぽく気取った真夏の果実。
何もすることのない私は部屋の隅に畳んで立て掛けられていたパイプ椅子を持ってきて座った。
「さて、そろそろライブを始めますかね。座りっぱなしオーケー、棒立ちもオーケー、茅ヶ崎ハッピーデイズのショータイム、はじまりはじまり〜。ワンツーさんしー」
ギターとツインベースの主張が強いサウンド、小さいハコはまるで特大のヘッドフォンのように脳や鼓膜、胸にドスンとのしかかる。
最初の曲は『バスのりおくれ』。バスバスバスに乗り遅れたー、6時半のバス行っちゃったー、満員ぎゅうぎゅうぴかぴかのー、赤いおニューなカラーリングー。
きょうは新曲の試聴ということで呼ばれたけど、これは既存のポップソング。単調で軽いノリでありながら、社会人の現実を唄う、詩だけ読めばやや重たい楽曲になっている。
◇◇◇
『バス乗り遅れ』
・作詞、作曲∶白浜沙希
バスバスバスに乗り遅れた
6時半のバス行っちゃった
満員ぎゅうぎゅうぴかぴかの
赤いおニューなカラーリング
ギラギラ朝陽を浴びながら
現実満載ひた走る
時間に余裕を持ってご利用くださーい
こちとら睡眠3時間
帰ってきたのテッペン過ぎ
黒光りしたクソ職場
定時で終わると飲み会あり
お茶代旅行積み立て飲み会代
ただでさえ安い給料が
想定外に引かれてゆく
バスバスバスに乗り遅れた
6時半のバス行っちゃった
満員ぎゅうぎゅうぴかぴかの
赤いおニューなカラーリング
ギラギラ朝陽を浴びながら
現実満載ひた走る
きょうはもう行きたくない
不正にまみれたクソ職場
なんでなんで自分が悪者?
黒いカラスが白になる
色素の抜けた伽藍洞
バスバスバスに乗り遅れた
6時半のバス行っちゃった
閑散スカスカボロボロの
錆汁滴る古いバス
きょうも朝陽は眩しいが
現実逃避と未来あすを視る
マイノリティー思考は善悪問わず村八分でございまーす
きょうからあそこは行かないよ
不正にまみれたクソ職場
自分の道を切り拓こう
まずは雑草刈り取って
さっきのバスが戻ってきた
閑散スカスカボロボロの
反対方面向かうバス
勇み足で乗ってみたら
人生少しマシになった
なんとかきょうも生きられそうだ




