表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私たちは青春に飢えている ~茅ヶ崎ハッピーデイズ!~  作者: おじぃ
なつやすみ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

255/277

お盆の藤沢ライブ!

「わーあ、マジモンのライブハウス!」


 暗黒の密室、換気はバッチリ。現地集合の武道くんと自由電子くんお久しぶり。自由電子くんは受験生なのに音楽活動をして大丈夫なのか。


 ドラム、アンプ、なんか色々と機材。ステージと言っても数十センチの段差があるだけで、客側に椅子はなく、欲しけりゃパイプ椅子でも持ってこいという感じの質素な空間。けど、それがいい。たぶん郡山こおりやまにもあるんだろうけど、シモキタなんかを彷彿させる、キャパ数十人の小さな小さなライブハウス。いよいよ私もシティーガールになってきたな。会津あいづ訛りも段々なくなってきた気がする。


 訛りがなくなった気でいる福島県民は、だいたい大いに訛っているらしい。


 みんな、こんなところで練習してるんだ。イメージよりも少し小さめ、ステージの高さは低めだけど、なぜかそれが余計に興奮する!


 バンドメンバー5人、観客は私だけの、実質無料貸切ライブ。試聴会ともいう。


 打てば響くドラム、漂うベースの重低音、波打つエレキギター、鈍い直線のキーボード。


 チューニング、音合わせ、淡々と準備を進める5人。何曲かやるつもりなのか、聴き覚えのある曲もさらっと演奏していた。演奏される度、聴かれる度、パチンカス、ギャンブルクズのタトゥーを刻まれるまみちゃん先生の曲。少し間が空くと、沙希ちゃんがエレキギターで『真夏の果実』のサビを奏でた。何この厨二病っぽく気取った真夏の果実。


 何もすることのない私は部屋の隅に畳んで立て掛けられていたパイプ椅子を持ってきて座った。


「さて、そろそろライブを始めますかね。座りっぱなしオーケー、棒立ちもオーケー、茅ヶ崎ハッピーデイズのショータイム、はじまりはじまり〜。ワンツーさんしー」


 ギターとツインベースの主張が強いサウンド、小さいハコはまるで特大のヘッドフォンのように脳や鼓膜、胸にドスンとのしかかる。


 最初の曲は『バスのりおくれ』。バスバスバスに乗り遅れたー、6時半のバス行っちゃったー、満員ぎゅうぎゅうぴかぴかのー、赤いおニューなカラーリングー。


 きょうは新曲の試聴ということで呼ばれたけど、これは既存のポップソング。単調で軽いノリでありながら、社会人の現実を唄う、詩だけ読めばやや重たい楽曲になっている。



 ◇◇◇



『バス乗り遅れ』

・作詞、作曲∶白浜沙希


 バスバスバスに乗り遅れた

 6時半のバス行っちゃった

 満員ぎゅうぎゅうぴかぴかの

 赤いおニューなカラーリング

 ギラギラ朝陽を浴びながら

 現実満載ひた走る



 時間に余裕を持ってご利用くださーい



 こちとら睡眠3時間

 帰ってきたのテッペン過ぎ

 黒光りしたクソ職場

 定時で終わると飲み会あり



 お茶代旅行積み立て飲み会代

 ただでさえ安い給料が

 想定外に引かれてゆく



 バスバスバスに乗り遅れた

 6時半のバス行っちゃった

 満員ぎゅうぎゅうぴかぴかの

 赤いおニューなカラーリング

 ギラギラ朝陽を浴びながら

 現実満載ひた走る



 きょうはもう行きたくない

 不正にまみれたクソ職場

 なんでなんで自分が悪者?

 黒いカラスが白になる

 色素の抜けた伽藍洞



 バスバスバスに乗り遅れた

 6時半のバス行っちゃった

 閑散スカスカボロボロの

 錆汁滴る古いバス

 きょうも朝陽は眩しいが

 現実逃避と未来あすを視る



 マイノリティー思考は善悪問わず村八分でございまーす



 きょうからあそこは行かないよ

 不正にまみれたクソ職場

 自分の道を切り拓こう

 まずは雑草刈り取って



 さっきのバスが戻ってきた

 閑散スカスカボロボロの

 反対方面向かうバス

 勇み足で乗ってみたら

 人生少しマシになった



 なんとかきょうも生きられそうだ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=50222365&si

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ