藤沢に興奮するオタク
夏休み後半、お盆真っ只中。せっかくの夏休みなのに晴れの日が少なくて、夏らしいイベントがあまりできていない。晴れた日は暑すぎて外出する気にならない。
ここのところ巡ちゃんの家に泊まり込みが続いている。巡ちゃんの親御さんが福島から送ってきてくれた桃がうまい!
高田ニュータウンではきょうもどこからかセミの声が聞こえる。ミンミンジリジリシネシネ。クマゼミの鳴き声には何か思うところがある。
高田ニュータウンからバンドの練習で利用しているライブハウスに近い藤沢駅まではバスで1本だから便利。だからこそ余計に居座りたくなる。
家主の巡ちゃんはバンド練習には来ておらず、演奏が安定して曲が仕上がったら聴きに来るとのこと。
いま、部屋には私とヘビと、どこかに隠れているであろうGがたぶん50匹くらい。ほかのみんなは外出中。
テレビはいつも通り、朝の情報番組が映っている。
8月に入り、津波が来たり台風が来たり花火大会が中止になったり私は創作で忙しくなったりと、何かとバタバタ。
津波の日は東海道線が運休したり警報が出た影響で道路混雑が酷く、藤沢に出かけていた私たちは帰るまでに2時間以上かかった。バス移動だったけど、歩いたほうが早かったかもしれない。
そんな中で、主にまどかちゃんといっしょに擦り合わせをしての曲づくりには特に注力した。
そしてやっとこさ曲が出来上がったので巡ちゃんをライブハウスに呼び、披露することにした。
「藤沢! 藤沢ふじさわ!!」
「え、どうした?」
バスを降り、頭上にペデストリアンデッキがあるため昼間でも薄暗い藤沢駅のロータリーに降り立った午後3時。なぜか巡ちゃんが興奮している。いつもなら「どしたん? 話聞くよ」とか言ってボケるところだけど、特に普段と変わりない藤沢に興奮する様が異様で、つい素で疑問符を浮かべた。
「好きなアニメの聖地なの! ここのロータリーとかあそこの家電量販店とか! うほー!」
「ああ! え、でも、初めて? 何回も来てるものだと」
思い当たるアニメが私にもある。茅ヶ崎や辻堂も描かれたあのシリーズだブヒ。
「何回も来てる! 多いときは週3くらいで!」
「それでもハッピーなんだ」
そりゃすごいわね。素直に感心。
「うん! ハッピーハッピー!」
「ハッピーハッピーいえーい!」
私から巡ちゃんにハイタッチ!
駅からライブハウスまでの道のりの一部もアニメに描かれているから、巡ちゃんは終始興奮。冷めやらぬ中、ライブハウスに到着した。




