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私たちは青春に飢えている ~茅ヶ崎ハッピーデイズ!~  作者: おじぃ
茅ヶ崎の道の駅

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246/277

オタクに湘南の道の駅は似合わない?

「ゲスト? 県外の人っていえば、巡?」


「あ、うん、そうなんだけど、見当たらないな。巡ちゃん講義があるから終わったら現地集合ってことになってて」


 福島県猪苗代町出身、茅ヶ崎に越してきて約3ヶ月の彼女は、どうやらまだ到着していないようだ。


 三人揃って外階段脇のベンチに座り湘南ゴールドサイダーをちびちび飲みながら待つ。湘南ゴールドは今村温州いまむらうんしゅうとゴールデンオレンジを交配した柑橘類。黄色い皮、程よい甘さと酸味が特徴の蜜柑みかんのような果物。


「ごめん、駅でバス40分待ちだった」


 暑すぎるカンカン照りのベンチに座り込み20分ほど経ったところで私たちの前に巡ちゃんが現れた。よく考えたら日陰か屋内に移動すれば良かった。


「道の駅の前まで来るバスは70分ヘッドだもんね。時間によっては南口からも北口からも出てる団地行とか循環バスに乗って歩いたほうが早いって教えておくべきだった」


 巡ちゃんは土地勘がないから浜見平団地から道の駅まで徒歩10分弱とは知らず、愚直に柳島スポーツ公園行のバスを待ってたんだ。悪いことしちゃったな。



 ◇◇◇



 バスの系統は茅ヶ崎駅南口から道の駅の目の前に行く柳島スポーツ公園行は茅38系統、浜見平団地を通るバスは茅33系統、茅37系統、いずれも1番のりば。日中は合わせて毎時4本。


 茅ヶ崎駅北口から浜見平団地へ行くバスは茅31系統、茅35系統、いずれも駅ビル出入口横から改札口へ続く階段、エスカレーターの目の前3番のりば、浜見平団地方面の乗車口から。日中は合わせて毎時3本。



 ◇◇◇



「大丈夫、私、猪苗代じもとのバスもよくわかってないから。それより、これが道の駅なの?」


「そうです、こちらが道の駅です。だっふんだ」


「なんていうか、海外のカフェみたいな外観で、私みたいなオタクが来ると浮くような。お客さんも、特にオバサンはハワイ旅行してるみたいな格好の人多いし」


 短パンランシャツ褐色肌の中年層が多い茅ヶ崎。そういうオジサンはどこにでもいるけれど、そういうオバサンは、言われてみれば茅ヶ崎と藤沢以外ではあまり見かけない気もする。他所を知らないとそういうところに気付きにくい。そういえば浜松のうなぎ屋さんのお客さんとか豊橋の街には黒っぽい服装で尖った感じの人が多かった。福島旅行のときはそういう人を見た覚えはなく、あれも地域の特色なのかもしれない。個人的見解。


「ああ、それは大丈夫! 茅ヶ崎って別に海外大好きな人だけの街じゃないから! 朝は梅おにぎりと味噌汁に沢庵たくあん、昼は枯山水かれさんすいのある庭園でお抹茶をて、夜はお寺で鐘を撞き眠るみたいな、そういう日本人らしい暮らしをしている人もけっこういるよ!」


「それはあんまいないだろ。ていうかゼロかもしれない」


「まどかちゃん! キミには日本を愛する心があるのか! 茅ヶ崎が、日本が、私たちのふるさとじゃないか!」


 まったく最近の若者は郷土愛が足りんよ!


「沙希より海外かぶれしてないよ。昼に抹茶を点てて夜に鐘を撞く日常を送る人間なんて日本中探しても一握りいるかいないかくらいだろ」


 近所に住むオジサンは若かりしころ四国八十八ヶ所巡りに出て以降、寺を見かけると鐘を突きたくなる性分と言っていた。深夜に通りかかっても必ず撞くらしいけど、言われてみればそんな人はあまりいないかもしれない。正月でもないのに深夜に鐘撞きとか迷惑極まりない。


「お茶会に、誘われ行ったよ松籟庵しょうらいあん。明けの宵、鐘を撞いたよ海前寺かいぜんじ


 とりあえず二句詠んだ。


「いやそもそも私、朝は桃かイチゴとエナドリ、昼はエナドリたまにラーメン夜は動画配信とエナドリだし」


 巡ちゃんの体内にある全エナジーが昇天しそうな生活しとるな。真似しちゃアカンやつや、中毒でブッ倒れたら救急隊とかお医者さんに迷惑かかる。


「あの〜、建物の中に入らない?」


 見かねた様子のつぐピヨは、夏にほだされて暑苦しそう。


「よし入ろう」


 いざ再び、涼しい駅舎内へ。

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