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私たちは青春に飢えている ~茅ヶ崎ハッピーデイズ!~  作者: おじぃ
遠州・豊橋の旅

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231/277

東海道方面の旅

JRジェイアール東日本E231系電車だって」


「電車がホームに入ってくるとき撮ってた写真?」


 すっかり昇った朝陽を浴びる東海道線下り列車のボックス席、進行方向を向く通路側、私の斜め向かいに座るまどかちゃんが言った。


「そうそう。いつもの電車だけどなんていう車種なのか不意に気になって画像検索したらSNSの動画が出てきてテロップにそう表示された」


 もちろん音声はオフ。


「私、電車の動画のポストを見るとニューヨークの地下鉄でもJR東日本E233系電車って表示されるよ」


 私の正面に座るつぐピヨが言った。


「だとするといま私たちが乗っているこの電車はなんなのか。熱海あたみ行きと見せかけ実はマンハッタン行きだったり? 謎は深まるばかり……」


 パープルの座席、ドア横にボタン、ゆらゆら揺れる二等辺三角形の黒い吊り手。乗り慣れたいつもの電車。10両編成と5両編成を連結した15両編成。


「自由電子くんに訊いておくよ」


 気怠そうに言うまどかちゃん。


 ということで珍しく晴れた梅雨の朝8時半より少し前、私、まどかちゃん、つぐピヨの三人は茅ケ崎駅から電車に乗って旅に出た。階段やエスカレーターに近い位置の車両はかなり混んでいたけれど、最後部の15号車は海側のボックス席が丸ごと一つ空いていたのでそこに着席。宇宙からも見える大きな相模川を渡った電車は茅ヶ崎の西隣、平塚ひらつかの街へ進入した。


 福島県の会津あいづ地方、猪苗代いなわしろに帰省する巡ちゃんに触発され、なんとなく旅に出たくなった私は二人を誘ってみたもののこれといって行きたい場所がなく、模造紙に大雑把な日本地図を描いて床に置き、目を瞑って赤マジックを当てた地点へ向かっている。


 あんま遠いところじゃなくて良かった。何も考えないで北海道から沖縄まで描いちゃったもんね。


 平塚を出て大磯おおいそ二宮にのみや国府津こうづと順調に運転を続ける電車は城下町の小田原おだわら市街を抜け、山間部の高台から大海原を臨む根府川ねぶかわに到達。私たちは壮大な車窓を写真撮影もせずぼんやり眺めていた。密室ではけっこう静かな私たち。


「あーたみー!!」


「うるさい」


 電車を降りたら駅名標の下で両手を広げ、思いっきり深呼吸&まどかちゃんからクレーム。しかし目的地はまだまだ先、次の電車に乗り換えるぞい!


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