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私たちは青春に飢えている ~茅ヶ崎ハッピーデイズ!~  作者: おじぃ
大学1年の日常2

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サッポロ軒3

 着丼したらまずはスープを一口含み、それからネギやもやし、チャーシューを口に運んで様子を見てから麺を啜った。麺から行く人が多いのは承知。隣の悟は一口目から麺。コイツ、まずは麺から派か。


「前よりまろやかになったんじゃない? うまいよ」


 と店主に向かって言ったのは、私たちから最も離れた雄三通り寄りの端に座る、だいぶお年を召したお爺さん。よく見ると茅ケ崎駅北口そばにあるイタリア料理の酒場、ガバチョハウスのマスターだ。未成年の私には数ヶ月早いけど、以前まみちゃんに連れてってもらった。もちろん私は飲酒せず、お茶やジュースを飲んだ。まみちゃんはソルティドッグとアンチョビのピザがお気に入りらしい。店内ではサザンの曲が大音量で流れていた。


「そう? 作り方も量も何も変えてないんだけどな。ほかの人にも前よりうまくなったとか言われたけど、久しぶりだからそう感じるんじゃない?」


「いや、そんなことないよ。俺の舌は肥えてるからね」


「え〜、そうかなあ。でもほんとに何も変えてないよ」


 首を傾げる店主。実は私もお爺さんと同意見。まろやかで、スープのパンチが増したと思う。


 チャーシューも歯応えはガッツリ残しつつ噛みやすくなった。玉子もちょっと旨味が増した気がする。メンマは変わらずタレに漬け込んで甘辛い味が染みている。


 以上、個人の感想。


 サッポロ軒を出て、私たちは来た道を戻る。


「サッポロ軒、前よりうまくなってね?」


「悟も思ったか。お爺さんもほかのお客さんも感じてるみたいだし、これは気のせいじゃないかもね。断言はできないけど」


「同じ作り方で味が変わるって、どういうことなんだろ」


「うーん、ガラを炊く寸胴とかタレとスープを混ぜる鍋とか、調理器具も食器も前の店から持ち出したものらしいし、空調とか建物の構造? 推理しかできないけど」


 調理器具などの話は店主とお爺さんがしていた。


「謎だな。解明されるか迷宮入りか」


「店主も自覚していない以上、神のみぞ知る世界か」


 サッポロ軒について語りつつ、ラチエン通りの香川屋分店で悟の失恋記念メンチを買って帰宅。悟は丸いサングラスを掛けて全力でメンチを切って、夜においしくいただいた。メンチを切って涙がちょちょ切れた悟であった。

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