復活のサッポロ軒2
ラーメンのできあがりを待つ間、スマホでタイムラインを眺めていた。
まどかちゃんは芹沢の池から付いてきたアオダイショウが白い鶏卵を呑み込む写真、まみちゃんは私が教えた飯坂温泉を満喫中。保原屋食堂で飯坂ラーメンや円盤餃子、昼からビール。宿泊先は私たちが泊まったほりえや旅館。保原屋食堂とほりえや旅館はいま私に背を見せて麺を茹でているサッポロ軒の店主のおじさんも訪れたらしい。ほりえや旅館で飼われている猫の風ちゃんがお気に入りなのだとか。
タイムラインを眺めてしばらく待っているけれど、店内はほぼ満席、以前の店舗より厨房が狭くなった影響もあるのか、提供時間は少し伸びているよう。いま私たちより前にいたお客さんのラーメンができあがって差し出された。提供時間が大袈裟に遅いということはないようだ。
さて、それではここでサッポロ軒についておさらい。
創業は店外の看板に記されているとおり昭和39年、西暦1964年。第1回目の東京オリンピックや新幹線開業もこの年。昭和の高度成長期の最中、本場北海道札幌で修行した初代店主が茅ヶ崎の地に店を開いた。現在の店主は3代目。
中華そばが主流だった当時、ニンニクのパンチが効いたスープともちもちのちぢれ麺は茅ヶ崎市民に大きな衝撃を与えた。その一人、少年時代から通っていたサザンオールスターズの桑田佳祐は『世界一美味しいラーメン』と絶賛。
地元のおじさんで学校の先輩を呼び捨てするの違和感あるな。
桑田さん絡みのテレビ番組や、最近ではお笑い芸人などが出演するグルメ旅番組で紹介されたサッポロ軒は、サザンオールスターズや桑田さんのファンの間では聖地としても知られ、地元の常連に加え、全国からお客さんが来る店となった。余談だけど、後者の旅番組では私もロケに居合わせたよ。そのうちの一人は、いつもの梅宮辰夫のシャツは着ていなかった。
「はいおまたせ〜」
店主が私たちの前に丼を置いた。
「わお、久しぶり、いただきまーす!」
「いただきまっす……」
久しぶりのみそラーメン。ラードの油膜が張った適度に熱い、ニンニクの香ばしいスープ。白髪ネギが乗っていて見栄えが良い。私はまずレンゲでスープを一口、悟は割り箸を割いて麺をすすり始めた。




