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私たちは青春に飢えている ~茅ヶ崎ハッピーデイズ!~  作者: おじぃ
大学1年の日常2

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東海岸北と若松町方面

 河童はマジでなんの役にも立たず消えていった。インスピレーションじゃ、インスピレーションが浮かんだのじゃ! とか言って消えていった。


 気疲れしてラーメンが食べたくなったから、登夢道とむどうに行こう。こういうときはニンニク入りのラーメンが良い。


 まだ日が沈まない初夏の夕方6時。自転車用のヘルメットを被り、自転車で裏道を進む。


 自動車はすれ違えない道幅のうえに曲がり角の多い住宅街を、LEDライトを点けた自転車に跨ってのんびり走る。推定時速16キロ。一部路面がボコボコしていて走りにくい。


 閉業した斎藤酒店前のY字路でヘアピン右折。ちっちゃいころ、おつかいでビールのリターナブル瓶を戻しに行って5円もらったっけ。5円にしてはなかなか重い仕事だった。


 ここからしばらく直進。少し前まで松林や公園があった土地は、いまや住宅がみっちり。その右に見える小さな公園は健在。


 ほっともっとと武蔵野の森珈琲の間の信号のない横断歩道を渡り小さくも地味にキツい坂を上がって秋上あきがみ踏切に着いた。東海道線の辻堂方面で茅ケ崎駅からいちばん近い踏切。小さな音で警報器が鳴動し、既に遮断桿しゃだんかんが降りている。


 北西の空にいる太陽はまだ高く、上下線合わせて8本のレールにまばゆい光が反射している。


 まもなく15両編成の下り列車が通過して遮断桿が上がると、溜まっていた自転車や歩行者がぞろぞろ動き出す。私は一応自転車を押し歩いて踏切を渡った。


 国道1号線を渡って除夜の鐘を鳴らしに来た海前寺かいぜんじの横を通過、惰性で緩い坂を下り市立病院前まで脚を休めた。


 そんなこんなで慣れていない人には難しい道順を辿ると、登夢道の裏手、駐輪スペースに出る。そこに自転車を停めて鍵とダイヤルキーを掛けて店に向かおう顔を上げると、正面の湘南バイパス下の歩道からまどかちゃん、つぐピヨ、巡ちゃんが現れた。


「やあみんな、奇遇だね」


「沙希こそどうした、きょう講義受けてないだろ」


「帰宅したら部屋に河童がいてな、かくかくしかじかで気疲れしてラーメンが食べたくなったのさ」


「あ、おつかれ、ご愁傷さま」


 まどかちゃんは私の心情を推察し、眉間に皺を寄せ苦く笑った。

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