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私たちは青春に飢えている ~茅ヶ崎ハッピーデイズ!~  作者: おじぃ
大学1年の日常2

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河童がいる日常

 来ようと思えばすぐ来れるのに、海を背にするときはいつも後ろ髪を引かれる想い。


 国道の砂を被った信号機、横断歩道を渡ってラチエン通りに入ると左に白い外壁、赤茶色いレンガ屋根のリゾートマンション。


 横付けラックにサーフボードを載せた自転車に追い抜かれ、コミュニティーバス『えぼし号』と擦れ違う、いつもの光景。変わりゆく街の、変わっていないようで、少しずつ変わっている風景。まみちゃん曰く漁師町っぽい古い建物が減って、洋風の静かな店や建物が増えたらしい。らしい、というのは、私が物心ついたころには現在の景色とだいぶ近かったから。


 マンションに帰宅したらレースのカーテンを閉めた薄暗い私の部屋に河童がいた。座布団であぐらをかいて両腕を座卓に乗せている。久しぶりに見たけど留守宅に上がり込むし作詞作曲のアイディアもVTuberをヒットさせる術も大学のなんたらかんたらもやってくれない役立たずだから見えていないことにする。


 帰ったら昼寝をすると決めていた私は河童の背後にあるベッドに仰向けで寝転んだ。


 童謡『赤とんぼ』のチャイムが聞こえた。夕方5時だ。ということは2時間くらい眠り姫になっていた。


「おや河童、まだいたのかい。お茶飲んでタコせんべいでも食べるかい?」


「やっと声かけおったか。客人が来てるのに茶の一つも出さんであろうことか眠るなど何事だ!」


「不法侵入だし私が帰ってきても無言だったじゃん」


「年長者から声をかける義理などあるか!」


「うるせえな敬うに値しない霊体の分際で。黒いゴムシートでかっぱ巻きにするぞチ◯カスクソ野郎」


「なんだと! もっと年寄りを敬わんか! これだから最近の若者は※〒@≧∆≦%οωοΨ±÷×∝」


 吐き捨てた私に対抗する買い言葉を無視して、親切でホスピタリティーマインドあふれる私は初夏だけど敢えて熱めに淹れた抹茶入り緑茶『茶山さざん』を注いだ湯呑みと、湘南ちがさき屋のタコせんべいの訳ありパックを座卓に出した。


「それで、きょうは何しに来たのさ」


 河童の正面白い不織布の座布団に着座しようと尻を下降させながら言った。


「追手から、逃げてきた」

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