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私たちは青春に飢えている ~茅ヶ崎ハッピーデイズ!~  作者: おじぃ
東京さんぽ

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202/277

隅田川と待乳山聖天

 雷門をくぐり抜けると外国人観光客も多く肩がぶつかるほど激混みの仲見世通り。スリに気を付けながら隅に寄っていちご飴を舐めたり瓶ラムネを飲んだり、大通りに面した店で雷おこしを買ったりと非日常空間を楽しんだところで、次の場所へ向かう。巡は人の多さにキョロキョロと酔っていた。


「さあさあ、ここは世捨て人がよくインタビューされる隅田川すみだがわ!」


 隅田川を背に右手をピンと伸ばしツアーコンダクター気取りの沙希。


 雷門などがある地下鉄の浅草駅周辺をにした私たちは、隅田川沿いの遊歩道を歩き始めた。開放的な遊歩道からは少し遠くに高さ634メートルの電波塔『東京スカイツリー』、通称スカイツリーを臨む。旧業平橋(なりひらばし)駅、現とうきょうスカイツリー駅方面へ、車齢30年以上と思われるノスタルジックな東武とうぶの電車が幅数十メートルのやや淀んだ川をダダン、ダダンタダンとゆっくり渡ってゆく。


 浅草駅周辺の賑わいが嘘のように隅田川沿いは人通りまばらで、やや静か。地面に座り込んでギターを弾き、訳のわからない歌唱をする小汚いオッサンとか、ロング缶片手に飲んだくれるキャップを被ったチビで不潔感漂う爺さんなんかがいる。この近辺は毎週月曜夜放送の、世捨て人や変わり者などに焦点を当てたバラエティー番組のインタビュースポットとして度々登場している。


「隅田川の唄、むかし茅ケ崎駅南口で流れてたよね」


 茅ケ崎駅南口のバスロータリーに6人の子どもが弦のような乗り物に乗ったモニュメントがある。かつては一定の時間になるとそれが揺りかごのように前後に揺れ、同時に音楽が流れていた。その中の一曲が春の麗らかな隅田川を詠った瀧廉太郎の『花』。


「そうさつぐピヨ。はーるのーうらーらーのーすーみーだーがーわー!」


 一見バカみたいな歌いかたをしているのに音程は外さず声は澄明。沙希なりの音楽家へのリスペクトだろう。


「はてはて、そんなこんなでここでヒット祈願をしてまいりましょう」


 きらめく川面かわもと街路樹が涼しげな隅田川沿いを歩き、途中で横断歩道を渡って辿り着いたのは待乳山聖天まつちやましょうでん。沙希いわく商売繁昌や心願成就などにご利益がある寺らしい。今回は巡がやっているVTuber『うつくしまももか』のヒット祈願が目的らしい。


 ここでは境内で大根を買い、聖天さまにお供えする。清浄で消化が良い大根は聖天さまの好物だという。


 大根は一人一本お供えして、各々祈りを捧げた。「はいはいこんにちは、相模國さがみのくに茅ヶ崎から参上しましたフルーツの香りがする夢のような女子、白浜沙希です。この珍物ちんぶつ、ぜひお見知り置きくださいませ」と心の声を漏らしているヤツもいた。ヒット祈願どうした。


 境内にある木々に囲まれた池を周回した後、ボタン式の小さなモノレールに乗って斜面を下り、私たちは再び隅田川へ向かって歩き出した。

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