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拠点から

「討伐証明部位、というのがあればあらかじめ教えてもらいたかったんだがな」


 傭兵団拠点に戻って受付嬢にウルフの耳と牙を投げ渡してからそう呟いた。

 相手に聞こえるか否かの声だ。


「その程度、自分で調べなさい」


「その方法もわからないから初心者なのさ」


「チッ……そこの棚に討伐証明について書かれた本があるから読んでおきなさい」


「それはどうも、ついでに文字について教えてもらえる場所を所望しているんだがどうだ」


「……しらないわよ、自分で探しなさい」


 そろそろ受付嬢の目つきが危ない物になってきたので笑顔で手を振っておく。

 その間も書類に何かを書き込む手を休めていないのは、仕事人といった風情だ。

 態度はともかく仕事ぶりには好感が持てる。


「ウルフの討伐証明確認、首輪を出しなさい」


 言われたままにドッグタグを差し出す。


「別につけたままで構わないわよ」


 そう言いながらドッグタグに触れて二,三何かを唱えるとドッグタグが小さく光った。 

 それを投げるように渡して、受付嬢は再び手元の書類に視線を戻してしまった。


「これが報酬、ウルフが倒せるなら相応の仕事を回すから」


「……意外と多いな。

それに相応の仕事か、繊細な仕事はできないからそのつもりで頼む」


「見るからに愚鈍そうだしね」


「あぁ、ウルフも倒せない繊細なお嬢様とは違ってな」


 私がそういったことで受付嬢が目線を上げた。

 そして、初めてにやりとした笑みを向けてきた。


「ところでどうだ、私の初仕事終了のお祝いに今夜一杯」


「あら、口説いてる? 」


「そうだな、気の強い女は嫌いじゃない」


「おあいにく様、私はか弱い淑女なの。

それに野蛮な人は好みじゃないのよ。

なにより今夜は予定があるの、またのお誘いを待つことにするわ」


「それは残念だお嬢さん。

それではまた明日、仕事を受けにくるとしようか」


 少し距離が近くなっただろうか、そう思いながら拠点を出て裏道に入って煙草に火をつけた。

 煙を吐き出して、関節を動かす。

 けがなどはないようだ。


「帰ってからもう少し丹念にチェックだな」


 腰回りを動かしてストレッチを終えてから煙草をもみ消して灰皿に詰め込むと肩を叩かれた。

 振り返るといかにもな悪人面が3人立っていた。


「いくらだ」


 なるほど娼婦の類と思われたか。

 こんな裏道にいたらそう思われるのもやむなしといったところだろう。


「悪いね、私は傭兵だ。

娼婦ではないので他を探してくれ」


 そう言いながら胸元のドッグタグを見せる。

 これで伝わればいいのだが。


「……見たところ魔法使いじゃねえか。

剣士だとしても獲物がねえ。

口をふさいじまえば良いだけだ」


 買春、とおもったがこいつらはただの暴漢だったらしい。

 なら手加減は……いや必要か。


 腰のホルスターからG17ハンドガンを引き抜いて太ももを狙い打つ。

 近距離だったことも幸いしてぶれる事無く着弾、続けて二発残りの男にも銃弾を叩き込んだ。


「ぐ……うぅ……」


 痛みに悶絶している男にナイフを向ける。

 こういう時は得体の知れない物より、見知った武器の方が恐怖心をあおる事が出来る。


「いいかい、もう一度言う。

私は傭兵だ、女が買いたいなら他を当たれ」


 そう言って頬に一筋の傷をつけてから表通りへ戻る。

 その途中で英兵を捕まえて事情を話して裏通りへ案内した。


 少々やりすぎだといわれたが、男三人は前科があったためあえなく御用となり連れて行かれた。

 まったく、デートの御誘いを断られた女の昇進に突け込むとはたちの悪い男もいたものだ。

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