第8話
はい!おはようございます!こんにちは!こんばんは!これが最後かもしれないメノウです!というより、もう終わっちゃいます・・・・・・。俺、ここでしか出てない・・・・・・。あっやべ、私情挟んじゃった。えぇっと!さぁ、サファイア様はどうなったのか!これはハッピーエンドに終わるのか!怪盗は戻ってくるのか!それでは、張り切って本編へどうぞ!
「王女様、隣国からお手紙が!」
「後にしてください!」
「王女様、街で酔っぱらい数人が暴れています!」
「警察、もしくは護衛を数人に任せてください!」
「王女様、友好国からお手紙が!」
「手紙などは後にしてください!」
これが今、私のおかれている状況です。
一息吐いたところで思い返す。
あれから…5年が経った。
あの後、私と子ども達は警察に保護された。
あの方は数日後に処刑となった。
人々はあの方がいなくなった嬉しさと次の王への不安で渦巻いていた。
警察の方は怪盗から聞いていたようで私に演説の場を設けてくれた。
最初は皆、私の髪の事や女であることを口々に言っていた。
しかし、私の意志や決意を話し終えると歓喜の声が上がった。
そして、私はこの国の王女となった。
最初は仕事の量に驚いていたけど、今はもう慣れてしまった。
子ども達は親に返したり、養子に出したりした。
あの子達は今、何歳になるのだろうか。
私は19歳になり、明日には20歳になる。
さらに「王女生誕祭」と呼ばれる大きな誕生日会が開かれる。
この国の人々が街に集まる。
準備は今日の朝にすべて終わった。
そして今は静かな夜。
私が王女になってからこの国には活気が戻っていった。
さらに多数の国々からも支えられている。
この城には身寄りのない子供や仕事を失った人達が働いている。
先ほどの彼らもその一部だ。
誰もいない部屋で溜息を吐く。
オパールさんはいつ、戻ってくるのだろう。
何度か、オパールさんの仕事は新聞で見てきた。
今はほぼすべての大陸を制覇しているようだ。
いつ…戻ってくるのだろう。
会いたいと思う気持ちと忘れているんじゃないかという嫌な気持ちが私の心を埋め尽くしている。
あの日から一行に治らないので、医者にも診てもらった。
すると医者は「すぐ分かりますよ」と言うだけで何も教えてくれなかった。
オパールさんのことを考えると心臓をぎゅっと握られているみたいに痛い。
でも、疲れたときに思い出すと身体がぽかぽかして温かい。
こんなのは初めてだ。
早く…戻ってきて欲しい。
「…様…女様…王女様!」
「はっはい!!」
顔を上げると衛兵が立っていた。
この衛兵は毎朝、新聞を持ってきてくれた人である。
「何をボーッとしているんですか?」
「えぇっと…明日の事を考えていまして」
必死に誤魔化そうとするけど衛兵は疑いの目を向けている。
話を逸らさなきゃ!
「あっ!酔っぱらいの人達はどうなりましたか?」
「先ほど、なんとか押さえられたようです」
「そうですか……」
「それで…何をボーッとしていたんですか?」
目の前の衛兵はよほど、気になっているようだ。
言って良いのかな。でもダメだよね。
そんなことをぐるぐると頭の中で考えていると、
「王女様…結婚の事はどうなされるんですか?」
見かねた衛兵が話題を変えてくれたようだ。
「えっ…結婚ですか……」
「結婚適齢期はもう過ぎていますよ。さらに、貴女の前にある手紙のほとんどが見合いの手紙です」
どうやら、説教をされているようだ。
私の机に置かれた手紙を一つ取った衛兵。
「前にもこんな手紙が来た時、ボーッと外の遠くの方を見てましたよね」
確かに、来たときは驚いたけどでもなんだか…
「違うような気がするんです」
「何がですか?」
私は衛兵の持っていた手紙を取り、椅子から立ち上がる。
それから、閉めていた窓を開け闇で姿の見えない国を見渡す。
「この方達とは会ったことはあります。でもこの方達は私の髪しか見ていないような気がして……」
衛兵は「たっ確かに」と小さく呟く。
「私は私の外見ではなく、私の内面を見て欲しいのです」
そう…外見に囚われず、私を私として見てくれた、
「…オパールさんのように」
「王女様!その名前は!」
「えっ…?あっ!」
振り返り、やっと我に返る。
でも、時すでに遅し。
衛兵は目をこれでもかと見開いていた。
「そういえば、貴女はその怪盗に助けられましたね」
数分後、落ち着いた衛兵は溜息と一緒にそんな言葉を漏らした。
私は窓を閉め、椅子に座り羞恥に耐えていた。
「あなたはその怪盗のことをどう思っていますか?」
衛兵は真剣な眼差しで私を見つめる。
「オパールさんの事を考えると苦しくなったり、嬉しくなったりしてなんだかよく分からない気持ちでいっぱいなんです…」
言った後、恥ずかしさに両手で顔を覆う。
すると、衛兵は「あぁ」と納得の声を出し、
「それはすぐに分かると思います」
医者と同じ事を言った衛兵。
「分かりました」
少し不機嫌な声を発しながら手紙を見ていく。
「隣国の第一王子…友好国の第二王子…侯爵子息……の見合いの手紙」
「さらには皆さん、イケメンばかりですよ」
衛兵が蛇足と言わんばかりに呟いた。
だから、無視してもいいと思う。
「会議の出席…インタビューの有無…怪盗からの予告状……」
よし、全部見たしさっさと仕事を終わらせ…ない……と。
「「怪盗からの予告状!?」」
息ピッタリに合ってしまった私と衛兵。
「えっ!誰からですか!」
「いっ一応、中身を見てみないと!」
白い便箋に「予告状」と書かれている。
恐る恐る中身から紙を取り出し、開ける。
「よっ読みます…」
――――――――――――――――――――
サファイア・トルマリン王女様へ
明日、
「王女生誕祭」の最中に
貴女と貴女のキスを
いただきにまいります
オパール・ブラック
P.S 約束を果たしに行くから待っててくれ
―――――――――――――――――――――
読み終えた後、少しの間が生じた。
無理もない。
だって、先ほど話題に上がっていた怪盗だから。
最初に口を開いたのは衛兵だった。
「そういえば、この怪盗と一緒にいた3人の王子は自分の国に帰ったと新聞に」
「ありましたね。すっかり、忘れていました」
それにしても、とても綺麗な字だ。
あの時の予告状の字もとても綺麗だった。
「しかし…約束って何ですか?」
それを聞き、ビクッと肩が跳ねる。
「そっそれは…秘密です……」
「へぇ…でも、明日が楽しみですね。みんなに知らせないと」
そう言った衛兵はそそくさと部屋を出て行った。
「もう…寝よう」
今日はいろいろあり過ぎてしまった。
寝室に行き、私には少し広いベッドに寝転ぶ。
そして、深い眠りに落ちた。
「「「「王女様、お誕生日おめでとうございます!!!」」」」
国中の人々が私を祝う言葉とともに祭典は始まりを告げた。
いつも思うけど、こんなに盛大にしなくてもいいんじゃないかな。
ここは大きな広場になっていて国中の人が全員きても少し余るくらいの広さである。
今日は国民も衛兵も商人も子供もみんなが自由にする日。
だから最初に言わなきゃ。
「皆さん!問題は起こさないようにしてくださ~い!!!!」
「「「「は~い!!!!」」」」
私は自分のスピーチ兼乾杯までは食事を楽しんだり、プレゼントをもらったりする。
階段が7段あり少し豪華な椅子に私は座っている。
みんなを上から見下ろし、ゆっくり見回す。
今日はとても天気の良い日だ。
街中を彩る素敵な装飾。
美味しい食事の数々。
そして、国中の人々の楽しそうな笑顔。
この国の王女になれて本当に良かった。
「王女様、全員に行き渡りましたのでスピーチを」
「分かりました」
「王女様のスピーチが始まります!静かにしてください!」
衛兵がそう言うと先ほどまでガヤガヤしていた広場が一瞬にして静まる。
グラスを持ち、立ち上がる。
深呼吸をして…
「皆さん、今日はこのような祭典を開いてもらいありがとうございます。私はこの国を王女になれて本当に良かったです。皆さんのおかげでこの国は活気に溢れ、多数の国々に支えられています。それは間違いなく、私ではなく皆さんのおかげと言って良いでしょう」
そこまで言って、また深呼吸をする。
ここからが大事だ。
「私は…奴隷でした。5年前に処刑されたエメラルドの奴隷でした」
「エメラルド」の名前を出したとき、広場は緊張感に包まれる。
「どうしようもなくて私は人形のようになっていました。誰もが私のこの髪ばかりを見て、本当の私を見てくれませんでした。誰も気付いてくれませんでした。しかし、それは私の勘違いでした。衛兵の皆さん、メイドの皆さん、誘拐された子ども達、エメラルド以外の城にいた人達は私を私として見てくれていました」
遠くからたくさんのすすり声が聞こえてくる。
私は続けた。
「それに気付かせてくれたのはその時、私を盗んでくれた怪盗でした。王女になる事も彼に勧められたからです。私は彼に感謝しても仕切れないぐらいの恩があります。そして彼は私に予告状を送ってきました。私を盗むそうです。さらにファーストキスも奪われるかもしれません」
自分でも笑っていると分かる。
それにやっと気付いたかも知れない。
オパールさんへのこの気持ち。
やっとスッキリした。
そうだよ。私はオパールさんの事が…
「サファイア、予告状はこんな場所で言うものじゃないぞ」
前を向いていた視線を階段下に向ける。
5年前と変わらないその声。
男の声なのによく透き通った声。
5年間、ずっと聞きたかった懐かしい声。
目の縁があつくなるのを押さえ、
「オパールさん……」
そこには私と正反対の髪の色を持ったオパールさんがいた。
みんな、いきなりの登場に驚いている。
なんたって、有名であり私に予告状を送りつけてきた怪盗だからだ。
でも、誰も捕まえようとはしない。
なんたって今日は自由の日だから。
オパールさんは階段を上り、私に近づく。
「5年間、よく待ってくれたな」
「長かったです。もう忘れられてるんじゃないかと思いました。あなたの我が儘な頼み事…私はきちんと果たせましたか?」
階段を上りきった時、オパールさんは優しい笑みを宿し、頷いた。
それからぎゅっと私を抱きしめる。
とても温かくて待ってて良かったと思える。
それから私から一歩離れ、人々に見えるように横に並び向かい合う。
「なぁ…また俺の我が儘な頼み事を聞いてくれるか?」
「何でしょうか?」
すると、オパールさんは跪き、私の右手を取る。
優しい微笑みのまま、私を見つめる。
涙はもうどこかに行った。
私も見つめ返す。
「…俺と結婚してくれないか?」
それは静かな広場にやけに響いた。
それに私の心にもよく響いた。
「はい、喜んで!」
その瞬間、広場が歓声で包まれた。
驚いて広場を見るとなぜかグラスで乾杯がされていた。
「サファイア」
「はっはい!」
「乾杯は?」
オパールさんの手にはグラスがあった。
「かっ乾杯」
カランッ。グラスとグラスが鳴る。
「あの…怪盗のお仕事は?」
「終わった…これからはお前の夫として国王としてこの国に住むさ」
「えっあっ…」
好きだって気付いたのは昨日の夜だけど……。
「あっあの…予告状に書いてあったキスって……」
ニッコリとしたオパールさんが私の頭を撫でる。
「待ってろ。面白い事、思いついたから」
なんだか、嫌な予感しかしない。
そうしてまた騒ぎ始めた広場に顔を向け、
「国民の皆さん!こちらに注目してください」
すると、また静まり返りこちらを一斉に見る国民の皆さん。
「サファイア、俺は貴女を一生幸せにします」
そう言うと、オパールさんは私にキスを落とした。
ファーストキスを怪盗に盗まれました。
めでたしめでたし……。
作者のこころです!
今まで見て下さり、ありがとうございます。
マジ感謝です!
しかし…終わり方が雑かもしれなくてすみません。
あんまり、完結させたことはなくてですね。
はい、言い訳です。
ですから!今まで見てくださり本当にありがとうございました!!