朝の出来事
「……ん、朝か」
カーテンの隙間から差し込むあかりがやけに明るい
ん~、にしてもいつもより暖かい
目がしょぼしょぼの為、目をほぼつぶったままリビングにのそのそと向かう
「……カーテン開けて、日を浴びたら目が覚めるかも」
……うん。そこそこ目が覚めた
太陽を浴びて伸びをしたら意識が帰ってきた
時計を見てみると6時を指していた
いや~、なんやかんや猫山さんよりも早く起きれた!よーし、朝ごはん作っちゃお
昨日寝る前にパン作るって猫山さん言ってたし、猫山さんもパン多分食べれるでしょ
そう思い朝ごはんと弁当を作り、コーヒーの香りが部屋を満たした頃
そろそろ7時になるから猫山さん起こそっかな
僕の部屋に向かい猫山さんをゆする
「ん……うんん、」
「猫山さん、7時だよ」
「……おはよう、ございます」
やけにテンションの低い猫山さんが答える
さすがの猫山さんも朝は弱いよね。分かる
「おはよ、猫山さん。よく寝れた?」
「……寝れませんでしたけど、いい夢は見れました」
「寝れなかったけど夢見たの?」
「……はい。最高の夢でしたよ」
猫山さんは微かな笑みを浮かべていた。寝起き特有のぼんやりした意識が、妙に猫山さんを艶っぽく見せている気がする。
猫山さんも面白いこと言うんだなぁ。朝だから少し意識がはっきりしてないのかな?
「朝ごはん、もうできてるから一緒に食べよ?
コーヒーも淹れたけど飲む?」
「……なにからなにまで、すみません。いただきます」
そう言って猫山さんは伸びをして起きる
朝弱すぎるって訳じゃなくて良かった。でも、あんまり寝れなかったんだ。悪いことしたかな、
リビングで向かい合わせに座る
「いただきます」
「いただきます」
コーヒーを一口含んだ彼女の表情が、わずかに緩んだ。
「……おいしいですね」
「そう?よかった」
まだ少し眠いためゆっくり食べる
「……ごちそうさまでした」
「早いね猫山さん」
「そうですかね?多分美味しかったからですよ」
「も~、上手いこと言っちゃってさ」
そう言って少しして僕も食べ終わる
「あ、そういえばさ猫山さん」
「……あぁ、はい。どうかしましたか」
「あんまり寝れなかったって言ってたけど、それって枕が合わなかったとか?それともベットか僕とか?」
「……いや、気にしないでください」
「え、でも寝れないと色々ストレスじゃない?」
気を遣ってくれるのはありがたいけど、それで体調悪くなっちゃったらなんか悪いし
「……寝ること以上に素晴らしいことを見つけたので大丈夫ですよ」
「……んん?寝る時になにかしてたの?」
「してたと言うか……されてたというか……、
でも、素晴らしかったです。今日も一緒に寝ましょう」
「え、あ、うん。な、なんか大丈夫?」
「何がですか?」
「性格……変わった?」
「……変わってないですよ。元々こんな感じです、色々あってこうなりました」
「ほ、ほう。まぁいいけどさ」
そう言って朝の支度をする
全てが終わったのは7時23分だった
「ん~、家出るまでまだあるなぁ」
そこでふとなんで猫山さんがなんでなんとかかんとかになったのか気になった
「ねね、猫山さん」
「あ、はい。何かありましたか?」
そう言いながら猫山さんは支度を続ける
「あの~猫山さんってなんで、なんとかかんとかになったの?」
「なんとかかんとか……?」
「あのぉ、なんとか課的なの」
「……あぁ生活支援庇護課ですか?」
「あ!そうそうそれ!なんでなったのかって聞いてもいいのかな……?」
「神崎さんならいいですよ。いい方ですし」
「なんか信用されてる」
「とは言っても深いものはないです。私の家はお母さん、妹、私の3人家族でした」
そう言いながら猫山さんはソファに座る
「私の家庭は、はっきり言うと貧乏でして。お母さんも頑張っていたんですけど体を壊してしまいまして。そこで生活支援庇護課のことを知ったんです」
……猫山さん、すごい人じゃん
「えっと……なんで生活支援庇護課がそこで出てくるの?」
「生活支援庇護課は社会全体で見てもかなり給料がいいですし、学生の場合は学校に通いながらでいいので私にはピッタリでした」
「……なるほどね。でも、凄いね。生活支援庇護課ってかなり難しいって聞いたけど」
「それはそうですけど、私の家は貧乏だったので娯楽などもなく、単純にやることが勉強しか無かったことと」
少し言葉を途切れさせると猫山さんは少し顔を赤らめて視線を落とした。
「男性に何かされるとしかめっ面になるという特性のような性格も、この仕事ではむしろ『適任』だと判断されたようです」
あれ?……ってことはさ
「あ、しかめっ面になるのってほんとに怒ってないってことなの?」
「……正直に言うと照れてるだけです。なのでしかめっ面の時はあまり攻めてこないでください」
「……無理かな、諦めて受け止めてね」
「……っ、ほんとに、刺激が強い……」
猫山さんは立ち上がる
「私の学校は電車通学なので少し先に行きますね」
「うん!また家で会おうね」
「もちろんです。あ、それと」
猫山さんが鞄から一枚のチケットを取り出す。
「私、今月のどこかに生活支援庇護課の会議?話し合い?的なものに参加しないといけないので、家に帰れません。なのでその日はこれを使ってホテルに泊まるなり、実家に泊まるなりしてください」
「うん!事前に教えてくれてありがとうね」
なるほどね、でももうだいぶ猫山さんと仲良くなったし、これからは攻めてもいいよね!
「猫山さん」
そう言って僕は猫山さんの前に立つ
「何かありましたか?」
「行ってらっしゃいのハグしよ?」
「……」
猫山さんが、固まった。
「……え、は、はい?」
やっぱり猫山さんのこともっと攻めていいんだ!
「何か変なこと言った?」
「え、えっと……」
猫山さんが視線を泳がせた。天井を見て、床を見て、また僕を見た。
「あの……それは、どういう……」
「どういうって、ハグだよ?行ってらっしゃいの」
「い、行ってらっしゃいのハグ……」
「うん」
猫山さんが、口を開いたり閉じたりした
さすがの猫山さんもテンパったりするんだ。
「……神崎さんは、その、ハグを……日常的に?」
「えー、どうかな。猫山さんとはしたいなって」
「……したい」
「うん」
「……神崎さんが」
「そうだよ」
猫山さんがまた固まった
「する?それともしない?どっちにする?」
猫山さんがゆっくりと僕の方を向いた。しかめっ面だった。でも教えてもらったから分かる。照れてるだけだ。
も~照れちゃってさぁ
「……一回だけ、ですよ」
「うん」
「本当に一回だけ」
「うん」
「絶対に一回」
「猫山さん」
「……何ですか」
「そんなこと言って我慢しなくてもいいんだよ?」
「っ……」
猫山さんが、少し前に出た。
僕も手を伸ばした。
猫山さんの背中に手を回した。猫山さんも、ゆっくり、おそるおそる、僕の背中に手を置いた。
温かかった。
しばらく、どちらも動かなかった。
猫山さんの呼吸が、少し速い気がした。
「……神崎さん」
小さい声だった。
「どうしたの?」
「……もう少し、このままでいいですか」
「もちろん。猫山さんが満足するまでいいよ」
時計はこくこくと過ぎていく
猫山さんが電車に乗れるか少し心配になってきたけど、大丈夫かな、
しばらくして、猫山さんがゆっくりと離れた。
しかめっ面のままだった。
「……ありがとうございました」
「うん!僕も嬉しかったよ!」
猫山さんが玄関に向かって、靴を履いて、ドアを開けた。
出ていく直前に、一度だけ振り返った。
「行ってきます」
「あ、待って。はいこれ」
そう言って弁当を渡す
「……これは?」
「お弁当だよ、学校頑張ってね!今日もよろしく!」
「……はい、頑張ります」
「行ってらっしゃ~い。気をつけてねぇ」
猫山さんも送り届けたし、僕もぼちぼち行きますか
少し億劫だが、桐島さんたちのことをいじれると考えると少し足取りは軽くなる
「うーし、行きますか!」
読んでいただき、ありがとうございました!
もし良ければブクマや評価をつけていただけると、とても励みになります。




