18話
王都中が祝福に包まれていた。
今日は、ニマルディア王国第二王子ハルトと、公爵令嬢サリーナの結婚式。
王城の大聖堂には貴族や騎士団、王国中の重臣たちが集まり、二人の門出を見守っていた。
祭壇の前で待つハルトは、いつもより少しだけ落ち着かない様子だった。
扉がゆっくりと開く。
純白のウェディングドレスを身にまとったサリーナが姿を現した。
光を受けたその姿は、まるで女神のように美しい。
会場中が息を呑む。
だが、誰よりも目を奪われていたのはハルトだった。
サリーナ「待たせちゃった?」
ハルトはしばらく言葉が出なかった。
そして、小さく呟く。
ハルト「……綺麗。」
その一言だけで十分だった。
サリーナ「ありがとう。」
神官の祝福の言葉が響き、二人は永遠の愛を誓う。
「あなたは健やかなる時も、病める時も──」
迷いなく返る二人の返事。
「はい。」
誓いの指輪が薬指へと通される。
そして――。
「誓いの口づけを。」
ハルトはそっとサリーナの頬に手を添え、優しく口づけを落とした。
割れんばかりの拍手が大聖堂に響く。
騎士団長ライトは笑いながら隣の騎士へ囁いた。
ライト「殿下、今日は一日中あの顔だな。」
「幸せそうですね。」
ハルトはそんな声も聞こえていない。
目の前のサリーナしか見えていなかった。
披露宴。
豪華な料理が並び、人々の笑顔で会場は満ちていた。
ライトが乾杯の挨拶を終えると、騎士たちが次々と二人のもとへ祝いに訪れる。
「殿下、おめでとうございます。」
「ありがとうございます。」
「サリーナ様を幸せにしてください。」
その言葉に、ハルトは真剣な表情で頷いた。
「もちろん。」
迷いのない返事だった。
サリーナは思わず笑みをこぼす。
するとライトが悪戯っぽく笑った。
「殿下、今のお気持ちは?」
ハルトは一瞬だけ考え、サリーナを見つめる。
「世界で一番幸せ。」
会場が温かな笑いに包まれた。
「それと。」
ハルトはサリーナの手を握る。
「世界で一番好き。」
今度はサリーナが真っ赤になる番だった。
「もう、ハルト……。」
それでも握られた手は離さない。
その様子を見た参列者たちは、自然と笑顔になる。
誰もが思っていた。
この二人ほど、お似合いの夫婦はいない、と。
数日後。
新しく用意された王城の一室。
窓から朝日が差し込み、穏やかな時間が流れていた。
サリーナが目を覚ますと、隣にはまだ眠るハルトがいる。
寝顔は戦場で見せる最強の王子とは思えないほど穏やかだった。
そっと髪を撫でると、ハルトがゆっくりと目を開ける。
ハルト「……さーちゃん。」
まだ眠そうな声。
サリーナ「おはよう。」
ハルト「おはよう。」
そう返事をすると、ハルトは自然にサリーナを抱き寄せた。
サリーナ「ハルト?」
ハルト「もう少し、このまま。」
甘えるような声に、サリーナはくすりと笑う。
サリーナ「仕方ないなぁ。」
優しく背中を撫でると、ハルトは満足そうに目を細めた。
ハルト「毎朝こうして起きられる。幸せ。」
その言葉にサリーナは微笑み、そっと額へ口づけを落とした。
サリーナ「私も。」
二人は顔を見合わせ、自然と笑い合う。
戦いの日々も、すれ違いも、数え切れない困難も乗り越えてきた。
だからこそ、何気ない朝が何より愛おしい。
これから先も。
嬉しい日も、悲しい日も。
二人は寄り添い、支え合いながら歩いていく。
その手を、二度と離さないと誓いながら。




