第一シリーズ 第5章 茨の城、三人の魔女、そして裏切り
茨の迷路を抜けると、城が闇の中に姿を現した。
石壁は黒く、蔦と茨が絡みつき、月光に照らされて鋭く光る。
「……ここが、茨の城か」
レオンが息を吐く。
クロウが翼を広げ、ヴァルドが前足を踏み鳴らす。
フィーネは茨を軽やかに跳び越え、無言で先導した。
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> 城の中に足を踏み入れると、そこにいたのは想像とは違う三人の女性だった。
やつれ、疲れ切った姿。
だが目の奥には、静かな怒りと、森を愛する強さが宿っていた。
「……あなたたちが、魔女……?」
レオンが訊ねると、最年長のノーラがゆっくりと頷いた。
「長い間、人間たちに裏切られてきた。
森の資源を奪い、村を飢えさせ、私たちを幽閉したのは、あなたの村の者たちだ」
「呪いは……復讐だったのか」
レオンは胸のチャームに手をかける。
「自然の報いだよ。呪いなどではない」
セラが低く告げる。
灰色の瞳が、レオンを射抜く。
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> そのとき、遠くから村長の声が響いた。
「レオン! 報酬を手に入れろ! 魔女を倒せ!」
背後の森から追手が迫る。
富と名誉のために、村長は最初から彼を騙していたのだ。
「……またか」
レオンは溜息をつく。
だが仲間たちは動いた。
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> ヴァルドは突進し、追手を迎え撃つ。
だが、その牙は鋼の矢に貫かれ、動かなくなった。
クロウは叫ぶ最後の言葉を残して石のように固まり、動かなくなる。
フィーネは恐怖を知らぬまま無感情に戦い、やがて息絶える。
レオンは胸のチャームを握り、追手に投げつけた。
琥珀が放つ光が茨を弾き、道を切り開いた。
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> レオンは魔女たちと共に地下通路へ逃げ込む。
石壁の冷たい湿気が、血と涙の匂いを運んでくる。
「……ここから先は、安全だ」
イリスが静かに告げる。
だがその目には、深い悲しみが映っていた。
レオンは振り返る。
森、仲間たち、村……すべてを、代償として置き去りにしてきたことを思い知る。
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> やがて城の影は後方に消え、森のさらに奥深く、静寂の中へと消えた。
村には富も平和も戻らず、魔女の呪いはさらに深まり、
人々は互いを疑い、恐怖の中で暮らす。
森は再び静かに泣き、茨の花を咲かせる。
その花は、誰かが失ったものの代わりに咲く、わずかな赦しの証。
――英雄とは、勝利する者ではない。
代償を知り、守る者である。
森は覚えている。
そして、森は決して赦さない。




