第一シリーズ 第6章 森の奥深く、赦しの花
茨の城を抜けた先には、静謐な森が広がっていた。
木々は幾重にも重なり、光はほとんど届かない。
だが、風が運ぶ土と苔の香りは、命の匂いに満ちていた。
レオンは胸のチャームを握りしめ、深呼吸する。
体からは、代償として失った五感や感情の痕跡が微かに疼いた。
「……これが、森の本当の顔」
呟くと、風がその声に応えるように葉を揺らした。
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> 魔女たち──ノーラ、セラ、イリス──は、静かにレオンの周囲に立った。
その姿は、かつての人間としての面影を少しだけ残していた。
目には深い悲しみと赦しの光。
「あなた、人間を信じるの?」
イリスが訊ねる。
「……信じたい。だが、恐ろしいのも、人間の心だ」
ノーラは微笑み、茨の間から白い小花をひとつ摘み、レオンの胸元に置いた。
「なら、森の奥で生きなさい。ここは、あなたが守るべき場所」
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> 森の奥深く、魔女たちとレオンは姿を消した。
村は結局、富も平和も手に入れられず、疑心暗鬼の中で暮らすことになる。
しかし、茨の森の一角には、ひっそりと小さな白い花が咲いた。
それは、失った仲間たちの代わりに咲いた、赦しの花。
ヴァルドの瞳、クロウの声、フィーネの心──すべては森に刻まれ、
風がそっと、森を歩く者たちに囁く。
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> 森は覚えている。
人間の欲望と裏切り、勇気と犠牲、そして赦しの連鎖を。
英雄とは、勝利する者ではなく、代償を払い、守る者である。
そして、森は決して、忘れない。
――茨の森に咲く白い花は、
誰も触れられぬ赦しの証。
悲劇は連鎖するが、
その痛みを知る者に、光は残る。
森番の息子は、森と共に生き、
森は静かに、未来を見守る。




