31.英知の書
「久しぶりだな。英知の書を開くのは。
相変わらず、その鍵穴は意味を成していないが。」
「奥様がノリで付けましたからね。」
二人とも承知の上かーい!
しかもノリって。母上は明るく、
天津爛漫だったことを思い出す。
「結果的に、この鍵穴のおかげで、本に群がる馬鹿どもを
一層出来たのはよかったですが。」
「確かにな。この本のおかげで、たくさんの血が流れた…。」
あれれ、この本って結構やばめなやつなのかな?
おら、不安になってきたぞ。
「父上…。この本は何か良からぬ事があったのですか?」
僕は意の決して質問してみる。
「ん?あー…。ジャックにも伝えておくべきだな。
この本はな…、ずばり…、料理本だ。」
「…。はい?」
「料理本だ!」
「いやいや!聞こえてますよ!なんで、
料理本でたくさんの血がながれるんですか!?」
「そりゃー、料理って大変なんだぞ!
特にララは料理が苦手だったから
それはそれは、大量の血が流れたんだぞ!」
自滅かい!
「では、本に群がる馬鹿どもとは何のことですか!?」
「あの剣聖を射止めた料理本です。それはそれは、
有象無象の女どもが群がって来ましたわ!」
真剣に聞いた自分が馬鹿でした。
「料理本と冒険に何の繋がりがあるのでしょうか?
それにただの料理本に英知の書なんてたいそう立派な
名前を付けるのもどうかと思います。」
半ば呆れ声である。
「ところどっこい、実は料理本とは言っても
ただの料理本でないのだよ!!」
「そうでございます!」
「どういうことでしょう?」
わけがわかりません。
「初めは料理本として使っていたのだが、
旅を続けている間に色々な知識や知恵を少しずつ蓄えていった!
その結果!旅をするのに大変便利な万能本になったのである!!」
「そうなのです!」
なるほど。確かにこれは冒険初心者には
かなり助けになる本だ。
しかし、解せぬ。
「確かにすごい本ではありますが、何もここまで
もったいぶったり、誇張していうほどでもなかったのでは?」
ジト目である。
「まっ、まぁ、もしジャックが本を使う事になったら、
そういう風に話そうとララが決めたことだからな!」
「そうでございます!これは遺言ですわ!」
「ぐぬぬ」
母上を出すとは卑怯な。
これ以上何も言えなくなったではないか。
しばらくの間、二人の誤魔化し笑いがやむことはなかったのであった。




