第24話時間は大事に使おう
「不死鳥の絶叫!!」
フェイザーの叫びと共にフェイザーの体は発光した。
そして、その次に強烈な閃光と爆音が身を包んだ。
その強烈な光に俺は咄嗟に目を瞑ってしまった。それほど強い光だったのだ。
そして、目を開けると周りは煙に包まれていた。
そして、何故か身に着けていた衣服などが消えていた。つまり俺は再び全裸になってしまったのだ。
「……な、何が起きたんだ?」
「ガッハッハッ! おいおいおいおい!! なんだよその赤いオーラは!! 」
前方から先ほどの爆音に負けないくらいにでかい声が聞こえてきた。そう、フェイザーである。
煙が晴れてきて、楽しそうな笑みを浮かべたフェイザーの姿が見えるようになってくる。
そして、それと同時にさっきここで何が起こったのか理解した。
煙が晴れた先は本来なら下にあったであろう岩肌。そして、さっきより遠くなっている空。
フェイザーを中心に地面が抉られているのだ。
「自分自身を爆発させる魔法・不死鳥の絶叫。俺の魔法の中でも最高クラスの破壊力を持つ魔法だぞ!! それを無傷とかやべーなテメェ!!」
セリフとは裏腹に楽しそうに言うフェイザー。だが、俺にはどうでも良いことだった。
地面は直径10メートルは抉られている。
あの時フェイザーの周りにいたのは俺だけではないのだ。フェイザーに攻撃していたテッド、カール、モヒカンのおっさん。そして、…………ウル。
俺は絶対的破壊者のおかげで無傷だが、あいつらは違う。
こんな規模の攻撃耐えられるわけない。
俺は必死に辺りを見渡そうとするが、
「おいおい! 余所見とはつれねぇな!! 楽しもうぜ!!」
いつの間にかすぐ目の前にまで来ていたフェイザーにぎょっとした。
そして、フェイザーはそのまま俺に殴りかかってくる。
「なっ! 俺の拳が消滅した――!?」
だが、もちろん俺に触れたフェイザーの拳は消える。
「くそ、邪魔すんな!」
驚いているフェイザーの顔を虫を払うように手で薙ぎ払った。
残ったのは首から上のないフェイザーの胴体。
しかし、すぐにフェイザーの首から炎のようなものが出てきて、どんどん顔を形成していく。
それを見て、俺の足は勝手に後ろへと下がろうとする。
「くっ! 何で倒れねぇんだよ! 首をはねられても再生するとか不死じゃねーか!!」
「それはこっちのセリフだぜ、全裸の冒険者ぁ! 魔法攻撃だけでなく、物理攻撃も意味がねぇとはな! まるで無敵じゃねぇか! 面白れぇ!! 面白れぇ!! ”不死”対”無敵”!! どっちが強いか比べようじゃねぇか!!」
「いやだね! そんな我慢比べみたいな勝負!!」
俺は焦ったように殴りかかった。いや、実際に焦っていた。
何故なら、長期戦は俺が最も避けたいことだったからだ。
実は、絶対的破壊者には制限時間がある。その時間は約5分。
既に絶対的破壊者を発動させてから3分以上は経っている。
つまり、もうこの状態を長くは維持できない。
だから、俺はフラムの言っていたもう一つの倒す方法――”再生しなくなるまでダメージを与え続けること”に賭けることにした。
ウル達の攻撃を受けてもなお余裕なフェイザーに効果は薄いと言っていたが、今はこれしかない。
「うおおおおおおおおおおおお!!!」
俺はがむしゃらに殴りかかった。百〇拳ばりの連打で何度も何度もフェイザーの体を消していった。その都度その都度フェイザーの体は再生していく。そして、フェイザーも消えながら、回復しながら俺に攻撃してくる。それは、もはやノーガードの殴り合いだった。
「うおりゃああああああああああ!!!」
「不死鳥の鉤爪!! 不死鳥の羽ばたき!! ガッハッハッハッ!! いいぞぉ!! サイコーだ!! こんな楽しい戦いは久しぶりだ!!」
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もうどれだけ腕を伸ばしたかわからなかった。いや、フェイザーの体が消滅していっているということはまだ2分以上経ってないのだが、今までこんなに長く殴り続けた経験がない俺からしたらとても長く感じた。
しかし、フェイザーの顔はまだ豪快な笑みを浮かべたままだ。
そして、ついにその時が来た。
もう自分の意志で動かしているのかさえ疑問な俺の拳がフェイザーの体に当たっても何も起こらなかったのだ。
「おいおい、体の赤いオーラが消えてるぜ!? もう限界か?」
フェイザーの言う通りだった。もう限界だった。
この瞬間から時間がまるで止まってしまったかのように遅く感じた。
フェイザーが俺につきだそうとしてくる右手も、自分の体が必死に後ろによけようとしているのも。すべての景色が遅く感じる。
あの時と同じだ。グレガスに捕まえられたときだ。
あのときは絶対的破壊者が運よく発動できて助かったが今は違う。
もう、既に使い終わってしまったのだ。
もうどうしようもできない状況なのだ。
だから、
「避けるんだ!!」
だから、この時起こったことがすぐに理解できなかった。
俺の目の前に剣が振り下ろされた。フェイザーの腕を真っ二つにしながら。
俺の目の前には男が立っていた。同年代くらいのどこかでみたことある顔。その剣と身に着けている全身鎧はとても高価そうだ。
「冒険者ヒロ・アイカワ只今推参!」
突然現れた男は剣を構えなおしてそう言った。




