俺の人生16
あー今年もあっという間に終わるじゃねーか。なんだか二十歳を過ぎてたからの1年がとてつもなく早く感じるのは気のせいか?10代の頃は早く大人になりたくて未成年と言う壁が重く俺達にのしかかっていたぞ。生きる事が大変だった時にはめちゃくちゃ1年が長くてまだ17歳かよ!あと3年も俺達生きられんのかって思う程1年を長く感じていたのにな。万引き少年の時なんて1日すら長く感じていたぐらいだ。そんな俺はもう21歳を過ぎ師走と言われる慌ただしい日々を俺も例外なく忙しく過ごし気づけばあっという間に新年をも過ぎ去っており新年の挨拶回りや新年会も終わりもう2月も半ばに差し掛かっていた。
『慶太郎!千佳は元気か?』
千佳!21歳の誕生日も慶太郎におめでとうは言えなかったんだろ?それに慶太郎は会社を立ち上げて以来さらに忙しい毎日だ。同棲しているとは言え千佳が出勤するまでに帰って来ない慶太郎とはすれ違いになっているようだしな。今年俺達は22歳か。本当に月日が立つのをはやく感じるぞ。何故だ?
『どうですかね。とりあえず明日は千佳の誕生日のお祝いをしようと思ってますけどそれが終わったら俺は別れてやろうと思ってますよ。千佳の誕生日であるバレンタインは俺ホストやらなきゃいけないでしょ。だから前日にお祝いだけはしておこうと思ってね。俺がいつまでも縛っていたらダメだと思うし千佳に悪いでしょ。幸せにしてやれねーのに』
これでいいのかって言われても俺にはまだ正しい決断だと言いきれる程吹っ切れてはいないんだけどな。でも幸せにしてやれる自信がまったくねーんだ。千佳が大切ならこんな俺が縛ってちゃいけないだろ?
『そうか。お前らが決める事だから俺が口出しできねーけど慶太郎!お前はそれでいいのか?』
良いって顔はしてねーけど。まあでもお前らが決める事を俺がどうこう言う気もないんだけど。
『いいも何も幸せにしてやれねー男がいつまでも無駄に時間使わせてたらかわいそうでしょ。千佳には幸せになって欲しいんだよ。俺みたいなクズじゃなくもっとまともな男が山程いるだろう。もう何も言うな!大輔!これがベストな選択なんだ』
そう思うしかねーんだよ。今の俺じゃ無理だ。
『わかったよ』
慶太郎!でもお前は千佳がいなきゃダメだろう。もうお前が本気になる女なんてできねーんだろうな。まあこれも神の計らいに委ねるしかないんすかね。結城さん。そして慶太郎と千佳は別れる事を決め慶太郎が出て行く事にしたらしい。慶太郎はすぐにマンションを決め引っ越しを済まし月日は3月を迎え桃の節句も過ぎ去った。春の訪れも間近だな。あっという間に桜も咲き始めるのであろう。花見なんて出来る時間もねーけど。
『大輔さん!おはようございます!』
『おはよう!翔太!今月も調子いいじゃねーか!うちのナンバーワンは!』
ここ1年ずっとお前はナンバーワンを明け渡さないな。すごいじゃねーか。
『はい!俺はこの店のナンバーワンを誰にも譲りませんよ!ずっと慶太郎さんを見て勉強してきましたからね!まだまだ慶太郎さんにはかなわないっすけどいつか超えてみせます!』
『お前は慶太郎のヘルプについてよく頑張ってたよな!先輩を観察して自分の武器にしていけるお前はすごいよ!伊織達はそのへんがまだわかってねーんだよな。今日も頑張ってくれよ!ヘルプは誰がいい?』
翔太は田舎の高校を中退し18歳になり無謀にも誰一人アテもなく上京し住む家すらない状況で俺達の店に面接を受けに来た。面接をしたのは俺だ。自分にどこまで出来るか挑戦したいと語っていたが住む家も友達すらこっちには1人もおらず正直難しいだろうと俺は思っていた。その日たまたま慶太郎が店に早く出勤し田舎から出てきたばかりの翔太にスーツを与え今日1度体験してみろと言い実際はほぼ見学であり採用も何も決めていない状況ではあったがやる気だけは見られたのでその日にいきなり入店体験をさせてみた。勤務を終えその日の時給を受け取った翔太は慶太郎みたいになりたいと言い働かせて欲しいと強い希望を見せ寝泊まりは漫画喫茶を利用すると言う翔太に慶太郎はマンションを与え寮として貸し出した。借りたワンルームマンションを寮だと伝えていたが実際は寮ではなく慶太郎の実費だ。狭い寮のワンルームマンションから自分で稼いで好きなところに住めるぐらいになれと慶太郎なりの応援だった。寮と言うならけして安くない都会のワンルームマンションであるわけだから少しぐらい寮代を差し引いてもいいのだがお人好しの慶太郎は給料から引かずタダで貸し出していた。俺が食う事に困っていたガキの頃に住んでいたアパートよりも断然いい所だ。俺達も住む所がなくて困っていたからな。それ以降翔太みたいにアテのない者の為にと慶太郎は同じマンションの空き部屋を数戸抑え俺達みたいにさまよう少年が現れた時には拾ってやろうといつでも住めるようにしていた。翔太は慶太郎を常に観察し慶太郎のヘルプを自らさせてほしいと言い努力を積み重ね十分な給料を得るまでになったが貯金をして慶太郎のようにいずれ高卒認定を取り大学に通いたいと寮として借りているマンションに住み続け翔太の二十歳の誕生日プレゼントに慶太郎は高級時計を贈り受け取った翔太は一生大事にしますと言いかわいいぐらいの笑顔を見せて喜び毎日その時計をはめて頑張っていた。
『はい!頑張ります!怜恩でお願いします!あいつにも稼ぐ楽しさを知って欲しいんで』
『わかった。じゃあ今日も頼むぞ!』
『はい!任せて下さい!』
そんな翔太はいつもとまったく変わらね様子で慶太郎を超えたいと笑顔で仕事に入ったんだ。俺がアルテミスのナンバーワンホスト翔太と会話を交わすのがこの日で最後になるだなんて思ってもいなかった。次の日翔太は無断欠勤をした。うちの店で働いて約2年と言う月日の中で無断欠勤なんて1度もないどころか遅刻すらないやつだった。最後に会話を交わした日も売り上げトップで上がり怜恩達と飯を食いに行くと笑顔で帰って行ったんだ。携帯の電源も入っておらず何度かけても繋がらないので俺は体調でも悪いのか何かトラブルに巻き込まれたかどちらかだと思い店を閉め仕事を全て終わらせ早朝慶太郎を引き連れて店の寮として借りているマンションへと向かった。千佳と別れた慶太郎は引越したばかりで片付けが進んでおらず寮の合鍵などどこにあるのかわからないと言いやがったから仕方なく俺達は管理人を呼び出し翔太の部屋の鍵を借りたが俺は留守だろうと思っていた。おそらく変な女に捕まって女の所にでも行っているんだろうとな。鍵を開けた俺の予想をはるかに超え俺達が見たのは手首を数カ所切り首をつった翔太の姿だった。俺は慌てて慶太郎に救急車を呼ぶよう何度も言ったが慶太郎は呆然と立ち尽くしたままもう死んでいると冷静に言い放った。俺はまだわからないと思い救急車を呼び病院へ運んで貰ったが翔太は既に死亡していた。翔太の両親には借金がありその返済を翔太に頼っていたと翔太の両親から聞いた。翔太の部屋に残された遺書は2通あり両親と俺達へのものだった。返しても返しても終わらない借金返済に疲れもう頑張れないと書かれていた。俺達には迷惑をかけてすいませんと血のついた文字が翔太の苦しみを表していたが俺はまったく翔太の異変には気づけなかったんだ。今まで借金返済の為などとは言った事もなく慶太郎を見習って大学へ行きたいと希望を語っていたぐらいだったんだからな。翔太の両親に俺達は泣きながらご迷惑をおかけしましたと挨拶をされ翔太は故郷へと帰っていった。慶太郎は香典と共に翔太の退職金だと言い翔太の両親に手渡した。アルバイトに退職金なんてねーよ!バカ!でもお前はそういう奴だよな慶太郎!俺達はこんな悲しい事があっても生きなければならない。翔太!お前が追い詰められている事に気づいてやれず悪かった。俺らがそっちへ行く時にはまた一緒に飲もうぜ!でもお前は本当にバカだ!お前がやった事は罪だぞ!親が泣いてるじゃねーか。二十歳になって親不孝してんじゃねーよ。翔太!お前はアルテミスの中で誰よりも努力をしていたな。だからお前がずっとナンバーワンだった。翔太!また会おうぜ!




