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ツヨイチカラ  作者: 桃馬 穂
第7章 「深海の攻防」(ROV降下〜妨害対処〜接近戦の縁)

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第7.4 量子パルス:砂幕の試技

 ≡ Quantum Pulse 7.4 / Trial of the Sand Curtain


 T0+23(二十時四三分)、同海域。表示は復帰、帯域は安定。

  甲板はまだ湿って重い。郷田のグローブの縁に塩が白く残り、呼吸が深く短い。さっきの抜ける感覚が、足裏だけに薄く残っている。

 影山「線を切る。短く、はっきり。」

  ライラ「今の拍でいける。乱すな。」

 翔太は右で姿勢を抱え、左で推力を置く。置き場所は呼吸の端、戻しは押し込まない。四隅の水平が生きているかぎり、距離は嘘をつかない。

 最初の吸いで底の灰が薄く浮く。白くならない弱さ、渦の芽も出ない。緊張で乾いた喉に、海の匂いが少し戻る。

 ライラ「横、短く!」

  翔太は斜め姿勢のまま一目盛りだけ横へ送る。中央は静か、端が強くなる。端が生きれば、縁が見える。

 一拍の間を置くと、薄い膜が残った。膜は流れに沿って細く伸び、一直線の視線を手前で受け止める。受け止められた線が、軽く折れて鈍る。

 カナデ「重なり低下。外の目、甘い。」

  影山「二枚目は半分でいい。」

 郷田は息を整え、張力計の針を人差し指で弾く。針は浅く震え、中央に止まる。さっきのEMPの痺れは指先から抜け、握力が戻る。

 翔太は同じ手順を短く繰り返し、先の膜に半分だけ重ねた。重ねは厚みになり、厚みは時間になる。時間ができれば、次の段が選べる。

 ライラ「拍、維持。吸い弱く、横さらに短く!」

  翔太「了解。」

 吸いを置き、横押しをさらに短く寄せ、一拍だけ間を置く。置きすぎれば流れ、短すぎれば立つ。今はちょうどいい。

 幕の向こうで直線が細り、端が揺れてほどけた。ほどけた端はこちらに絡めず、別の道を探す。甲板の金具は鳴らず、舷側の影は切れない。

 カナデ「重なり、七割台。外乱、小。」

  結衣「学園、記録面に抜けなし。」

  影山「十分。数字だけ残せ。」

 翔太は姿勢を少し水平に寄せ、推力を最小に置き直す。親指の段差をもう一度触り、手の震えを呼吸で押さえる。効いた――このやり方で通せる。

 郷田「張力、規定内。撚り、ゼロ。……行けるぞ!」

  ライラの口元に、息の合う瞬間だけ細い笑みが走った。影山は頷き、視線だけで次の合図の場所を示す。

 支えがあるうちに一歩進める。進めた分が、そのまま防壁になる。焦りはある。だが今は、目の前の一拍だけを外さない。


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