第6.8 量子パルス:兆候、近づく直線
≡ Quantum Pulse 6.8 / The Approaching Line
T0+12、浅い水路の内側。海面は灰のまま、波は立たない。操舵輪の革に翔太の親指が触れて止まる。
結衣「学園の記録、同帯域で安定。揺れ、小。」
研究所担当「計測、誤差、三分の一拍未満。温度、一定。」
カナデ「海域、角度、維持。速度、変化小。」
青い線は一枚の上で静かに伸びる。翔太は舵をわずかに送り、素直な戻りを腹で受ける。怖いが手は離さない。
結衣「同帯域に新しい直線。周期、一定。揺らぎ、少。」
研究所担当「応答、なし。自己照合、閾値内。」
カナデ「進行方向、こちら寄り。変化、小。」
距離は縮み続け、速度は一八前後で揺れがない。識別表との一致率は七割台に上がり、ばらつきは目に見えて縮む。名は付けず、数字だけを見る。
結衣「信号の癖、既知パターンに近似。識別、上方修正。」
研究所担当「Unit07仮説、成立域。宣言は保留。」
カナデ「動きの荒さ、なし。行き先、直。」
海面の灰は変わらず、舷側の影だけが前へ滑る。記録は増え、線は太り、太った線はごまかしを許さない。紙の端のしるしは濃さだけが増えていく。
結衣「帯域の重なり、九割台。周期差、微。」
研究所担当「変調、一定。外乱、少。」
カナデ「進路、こちらに向けたまま。速度、維持。」
影山「見た。」
ライラ「拍、合わせて。」
翔太「了解。」
結衣「三点の記録、同時重なり。抜け、なし。」
研究所担当「誤差、極小。閾値、越え。」
カナデ「角度、変わらず。直線、揺れず。」
同じ帯域に乗ったまま、直線は向きを変えずに近づいてくる。近接サインが、同じ帯域に乗った。




