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山本さんのお嫁さんは、最強のヴァンパイアちゃん!?  作者: ほしのしずく
第3章:魔女の決心

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一大決心

 魔女キルケーは、アカーシャとの想い出に浸りながら、人生で初めての一大決心した。


「妹が、あの世界に残るって決めたのなら、お姉ちゃんである僕も行くべきだよね♪」


 なんとも迷惑な話である。


 たぶん……いや、間違いなく、千恵子あたりは「それってこじつけじゃないですか……?」などと、呆れつつツッコミを入れるだろう。


 けれど、その彼女はここにはいない。


 ということは――?


「よし! きーめた♪ いっちゃおう〜♪」


 そう、千恵子とアカーシャの住まう日本へ行くことになったのである。


 魔女キルケーは今後の方針が決まって、嬉しくなってしまい、その場で豊満な胸を揺らしながら、ホップ・ステップ・ジャンプ&ターン。


 方針が決まっただけで、例えば住まいであったり、働き口であったり……というか、日本のことをよく知らないというのに――なんとも呑気な魔女である。


 しかし、これこそ、マジな”年の功”というやつなのかもしれない。


 大体のことは、行動してから解決すればいい。

 細かな心配事の八割は、起きたとしても案外大したことない。

 キルケーはそう考えていた。


 そうである。そうなのである。

 この神の血を引く孤独な魔女は、脳筋なのだ。


 アカーシャに教鞭をとっていた時も、その後に来たアラクネへ師事していた時も、最終的に「わからないなら、見に行ってみる?」なんてことを口にしていた。


 それが一般的に見て、正しいのかは別問題として、アカーシャとアラクネとは相性がぴったりだったのだ。


 正しいより、楽しい。正しいより、面白い。


 遥かなる時を生き抜いた、魔女キルケーの矜持みたいなものである。


「あ、そうだ、そうだ! その前にアラクネちゃんも連れて行かなきゃ♪」


 そういうと、ローブから杖を取り出し、魔法で薬釜を異空間にしまう。


 そして、その異空間に身を乗り出して、なにかを探す。


「箒……箒……箒〜♪」


 そう、箒である。彼女にとって、箒は空を飛ぶ為の必需品。


「あった♪」


 見つけた箒を掴み取り出し、すぐさま跨って、魔力を込める。

 それにより、キルケーの緑色をした魔力が体を伝って、箒に流れ込んでいく。


「これで飛べるね♪」


 彼女が声を発した瞬間、緑の魔力は先程よりもまばゆい光を放つ――それはまるで新緑から深緑へと深まっていく葉ような感じであった。

 

 そこから、空を飛び、川を三つ、山を一つ越えた先にある無数の扉が設置された一角。


 その場所を隠すように木々が生い茂り、守るようにさまざまな魔物が生息する。


 割とどの世界でも有名なスライムから、ミノタウロスといった人型の者まで。


 魔女キルケーは、そんな場所に訪れていた。


 目的は言うまでもなく、アラクネの回収と日本への転移である。


「えーっと、まずは夜の国に通じる扉はっと」


 端から順に扉を開けていく。

 この扉、便利ではあるが、扉一つにつき転移出来る場所一箇所となかなかに使い勝手が悪いのである。


 しかも、使用するには膨大な魔力を必要とするので、魔女キルケーであっても、一日に数回が限度だったりする。


 とはいえ、アカーシャが使うような転移魔法と違って、座標を指定出来れば、何処へでも自由自在に訪れることができるのだ。


 そうこうしている内に、キルケーはお目当ての夜の国へと通じる扉を見つけた。


「あ、この扉だ♪」


(ちゃんと目印しておいて良かった〜♪)


 その視線の先、扉の上部には、なんとも個性的な蝙蝠のイラストが描かれていた。


(この絵、我ながらよく出来ていると思うんだよね〜♪ 犬歯っていうか、牙の部分とか、すんごく可愛いし♪)


 暇を持て余した魔女の遊び……いや、趣味みたいなものである。


 このキルケーという魔女、全く器用ではない。芸術のセンスも平凡であった。


 けれど、時間を持て余したからだろう。音楽や絵画、芸術と呼ばれるものは、全てそれなりに出来るようになった。


 時は金なりとは良く言ったものである。


(まぁ……この印がアカちゃんにバレたら、かなりまずいかもしれないけど……いや、今はそんなことどうでもいっか〜♪)



 そして。

 


「レッツラゴ〜♪」


 年の功をいかした切り替え術を用いて、扉の先へと消えていった。

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