お願い
今日は副作用やばいんで三話で勘弁してください。
「ミラさん。この依頼を受けます。手続きを」
ミラというのは受付嬢さんの名前だ。
カンバラさんはギルドの掲示板から取ってきたと思われる依頼内容が書いた紙をミラに渡す。
「ダメですよ! 危険じゃないですか! S級の依頼なんて!」
依頼にも階級がある。例えばB級の依頼ならB級の冒険者は解決できて当然という扱いになっていて、つまりA級の冒険者がS級の依頼を受ける、というのはちょっと難しい依頼になるのだ。
「すいませんね。この子は心配性なもので」
カンバラは僕たちのほうを向いて軽く頭を下げる。
「いえいえ。それより難しい依頼なら手伝いますよ?」
「大丈夫。私一人で十分です」
余裕そうにカンバラは言う。たしかにこの人相当強い。対峙していないのに強者が纏うオーラのようなものを感じる。
「あ! ごめん……カンバラさん。間違ってそこの子たちも依頼の同行人にしちゃった」
「は?」
カンバラの表情が固くなる。
「どうします? まさか、規律命のカンバラさんが同行人にした子たちを置いてくようなことしませんよね?」
「……わざとですね」
カンバラの額に青筋が浮かび上がる。ミラさん何やってんの!
「……はあ。わかりました。ただし私一人で戦います。皆さんはなにもしなくていい」
諦めたようにため息をつくと、そう不満そうに言った。
「さあ、準備してきてください。すぐに出発しますよ」
こうしてカンバラが引き受けたS級の依頼に同行することになった。僕としては前のパーティーでもS級の依頼はしたことがなかったので、S級の依頼がどんなものか、この目で見たい。でも他の二人の意見を聞かなくてはな。
そう思ってカノンとエリーの意見を聞くことにしたが、カノンは「いいんじゃない。S級の依頼とかおもしろそうじゃん?」と好奇心旺盛な様子、エリーは「ウロナさんが行くところならどんな場所でもついていきます」と嬉しい返事をしてくれた。
二人ともオッケーみたいだ。
「ウロナさん」
僕が安心していると、受付嬢のミラが耳打ちしてくる。
「はい。何でしょう?」
「私の頼みごとを聞いてくれませんか?」
ミラさんが頼みごと? 珍しいな。普段お世話になってるから引き受けるけど。
「いいですよ。何です?」
「カンバラさんのことで……」
ミラは小さな声でこそこそと語り続ける。
「あの人、昔は気さくでよく笑う人だったんですけどね、ある事件を境にああいう風に孤立するようになったんですよ。……ウロナさん。昔に戻してくれとは言いません。ただちょっと肩の力を抜くよう、カンバラさんに言ってほしいんです。お願いできますか?」
僕にはミラの言うことがよくわからなかった。とりあえず「肩の力を抜いてください」って言えばいいのかな?
「引き受けてくれたらお礼にウロナさんの言うことをなんでも聞きますよ?」
な、なにィ?