コロシアム前
白熱する対抗戦に裏側で。
コロシアムの外にはガラの悪い着物姿の集団が並んでいる。
その中にはウロナがこれまで出会って来た男たちが混じっていた。
「今日は三番隊を動かしていただきありがとうございます」
そう言ったのはカンビラ・バランガ。カンバラだ。
「ええよ。それにしてもカンバラクンはほんまにおもろいこと考えるなぁ。メグムもそう思うやろ?」
カンバラに答えたのは王宮騎士団三番隊隊長、ワープ・ストップだ。そう、コロシアムの外にいる集団は三番隊の構成員だ。
「面白いとは思わないですけど、良い案だとは思いますよ。敵は未知。数も正体もわからない。奴らとの戦いは長期戦になる可能性がある。だから早い段階から疑わなくちゃならない。内通者がいる可能性を」
彼らの目的は内通者がいるかいないか確かめることだ。
実は対抗戦の景品が魔王の右腕だということは、開会式までごく一部の人間しか知らなかった。 だがそのごく一部の人間たちは対抗戦が始まる前から公開されている情報だと認識している。
ムテキをさらった彼らは魔王のパーツに執着していた。対抗戦の景品を魔王のパーツにしようものなら襲撃にくる確率が高いのだ。
だが、魔王のパーツが景品になることを知っているのはごく一部の人間のみ。
つまり、彼らが襲撃に来たのなら、カンバラが対抗戦の景品のことを伝えたメンバーの中に彼らと通じるものがいるということになる。
「よく物語であるでしょ? 最後の最後で味方に裏切り者がいることが発覚して多大な損害が出るみたいなパターン。あれ、嫌いなんですよ。いないならいないでよし。いるならいるで早く潰さなくてはね」
「そうやけど、カンバラクン。僕らの中に内通者がいるかもよ。僕かもしれんし」
「……ワープさん。私は王宮騎士団の中で君たちと四番隊だけは裏切り者ではないと考えています」
「そのココロは?」
「君たちは喧嘩が大好き集団でしょ? 裏からこっそり情報を流すなんてできませんよ。私が対抗戦の景品のことを話したのは王宮騎士団隊長格とA級以上の冒険者たちです。彼らはこちら側の主力です。戦いになれば重要な情報がおりてくる。その情報を流されたら厄介だ」
「逆にそれ以外の奴が内通者やとしても大した情報は流れんから無視でいいってことやな」
対抗戦の客の中に敵側の人員がいる可能性も想定して、予め観客席では妙な真似ができないように細工している。
具体的に説明すると、観客席ではスキルを使えなくする結界が貼られていたりと、他にも色々あるが、一つ一つ紹介していたら日が暮れてしまうので今回は省力させてもらう。
とにかくカンバラと三番隊一同は裏切り者をあぶりだすための算段を完璧に練っているのだ。
それからしばらく経ったが襲撃者は現れない。
裏切者はいないんじゃないか?
誰もがそう思ったときコロシアムから客たちの熱気が漏れてきた。恐らく対抗戦の一回戦が終わったのだろう。
その声援に混ざって……「バン!」
と発砲音が鳴り響いた。
そして、三番隊の隊員が一人倒れる。
倒れた隊員の側にはさっきまでいなかった三人組がいた。
一人はウロナたちが森で戦った長い青髪の男。
もう一人はウロナたちがその青髪の男を倒した後、彼を回収した赤髮の女。
それから最後の一人はカンバラも恐らくワープも、もちろん、ウロナたちもまだ遭遇していない人物だった。
雪のような短い白髪に冷たく光る赤い目。女だが風格は多くの修羅場を潜り抜けてきたアウトローのようだ。
見えるもの全てを魅了するような見た目に加え、白というよりかは元々黒かったのが脱色したような色のスーツを着ている。
男は黒の緩いズボンに白いシャツの上から黒いパーカーを着たシンプルな服装。女は肩出しのトップにダメージジーンズと露出の多い格好だ。
その二人の間にいるせいか、彼女のスーツの迫力を増す。
三番隊の隊員を撃ったのは白い髪の女のようだ。
「さて掃除をしようか」
低い声で白髪の女が言う。
その瞬間、赤い髪の女が消え、カンバラの正面に現れる。女はカンバラに蹴りかかる。突然のことでカンバラは反応できない。
だがこの二人の間に突然ワープが割り込み、女の蹴りを受ける。
「カンバラクン。やっぱよわなった?」
「どちらにしろ、私のスキルで防いでましたよ。ギルドでは先の戦いのダメージが残っているから対抗戦には出れないと言いましたが全てはこの戦いに参加するための噓です」
カンバラは不機嫌そうに表情を歪めながらそう語った。
「そうか。まあ、ええわ。こいつは僕がやる。同じようなスキルやしなぁ」
「一人で私を止める気?」
女は挑発的な口調で言う。
「止めるんちゃう。潰すんや」
「あ?」
突然女が消え、ワープの背後に現れる。そして、ワープを蹴り飛ばそうとするが、今度はワープが消えて女は空を蹴る。
そして、次にワープが現れたのは女の背後。ワープは容赦なく女を蹴り飛ばす。
激しい攻防を見せる二人だが、この戦いは彼らだけのものじゃない。
「久々A級」
青い長髪の男がカンバラに向かって火を放つ。カンバラは懐から木の棒を取り出すと、強く振って火をかき消した。
「また君ですか。そういえば名乗ってませんでしたね。私は——」
「カンビラ・バランガ。通称カンバラだろ? あの戦いの後、お前のことは調べさせてもらったよ」
「勤勉ですね。そういうタイプには見えませんが」
「失礼だなぁ。まぁいいや。今からぶっ殺すんだし」
男の身体が発火し、その火がどんどん青に変わる。
「死ねや!」
青い炎はカンバラに向かう。対してカンバラは……
次々と戦いが起こる中、メグムは白髪の女の前に立つ。
「坊やが私の相手をしてくれるのかい?」
「坊やじゃない。王宮騎士団三番隊副隊長メグム・ユララだ」
メグムは言いながら手を合わせる。すると、彼の周辺から魑魅魍魎の魔物たちが現れ、うめき声を上げる。
「そうか……」
女は薄っすらと笑って……、
「私はスノー・コンマ。君は私を満たしてくれるかな?」
ユダ




