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先鋒戦

 先鋒戦が始まった。

 カノンは風の力を使って空へ。コントは自らの肌を切り裂く。すると皮膚からは赤い液体が流れる。

「俺らにもお前らと同じ血が流れてんだ」

 なにかを呟いたと同時に液体は円形に固まり、カッターのように回転してカノンに向かう。

「あいつらは肌の色が違うだけで俺たちを目の敵にする! 俺の力の源は人間への憎しみだ! エルフのくせに人間が好きだとほざくような奴に負けねェ」

 どうやらコントは血を操るスキルを持っているらしい。

「……火の聖霊よ」

 対してカノンは血のカッターに向かって炎を放つ。炎は血のカッターは焼き尽くし、その下のコントを襲う。

 コントは懐から赤い液体が入った透明の袋を取り出し破る。すると中の液体が飛び出す。飛び出た液体はコントを守るような壁になった。

 が、炎は壁を貫く。

「この威力は……!」

 コントはぎょっとした。

 僕もびっくりだ。

「すごいでしょ?」

 隣のエリーが僕に話しかける。

「うん。まるで別人だよ」

「カノンはあの件が本当に悔しかったみたいです」

 あの件とはたぶん、僕が王宮騎士団三番隊の隊長、ワープ・ストップを殴った件だろう。

「私とカノンは一緒に修行をしてたんです。ずっと言ってましたよ。『私が強くなって、ウロナを弱いとか言った奴を叩き潰すんだ』って」

「……カノン」

 なんだか胸が熱くなる。カノン……君はそこまで……

「ダメだ」

 カノンが呟く。

「あ? 何がだ?」

「あの程度の壁で防がれてるようじゃ……」

「壁? 俺が造った奴のことか? だったらあの程度ってどういうことだ、コラ!」

「決めた。あの壁を貫通して、コントを倒す」

「……こいつ、俺を見てねェ」

 カノンは集中力を高めるように目を閉じる。

「……火の聖霊よ。……風の聖霊よ」

 カノンの右手に火が、左手に風が宿る。火と風は混ざり緩やかに宙を舞う。その先にはバリスタの矢のような、火と風の矢ができていた。

 矢は真っ直ぐコントのほうに飛ぶ。対してコントはまた赤い液体のはいった袋を取り出し、さっきと同じように赤い壁を造る。

 だが今度のカノンの攻撃はひと味違う。風を纏うことで速さが増し、矢の形状にすることで鋭利になった炎は赤い壁を破り、コントの腹を貫いた。

「ぐは!」

 コントはその場に倒れる。そして、そのまま動かない。審判たちが彼に近寄り……

「勝負あり! 勝者カノン・ミレーネ!」

 勝者の名を高らかに宣言する。

 歓声がどしゃ降りの雨のようにカノンに降り注いだ。

 だが彼女はそんなこと気にも留めず、タンカで運ばれているコントの方に向かう。


「憎しみの力、負けちゃったね」

「何しに来た?」

「ちょっと話したかったの。私も人間が嫌いだった。あんたみたいに憎んでた。でもある人に出会って変わった。その人は馬鹿みたいに優しいの。あんたもいつかそんな人間に出会える。だからもう憎まないで。憎むって悲しいことよ」


休み過ぎてしまった。すいません。

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