決意
ほんとにすいません
「あー、あー」
ワープは頬を押さえて立ち上がる。
やばい。やってしまった。足が震える。
「お前、なにしてくれてんだ」
僕とワープの間にロン毛の男が割って入る。
「この人のことを尊敬したことはねェけど、うちの隊長なんだよ。この人の顔に泥塗るんだったら許さねェぞ」
口ぶりから察するにこの人は三番隊の副隊長だ。
「尊敬しろや。ボケ」
ワープはロン毛の頭を小突く。
「こんな奴の相手すんなや。話始めるぞ」
僕を睨むことすらなく、ワープは席につく。
そのとき
「いいんすか?」
「いいも悪いも弱い奴に興味ない。なんの感情もわかんわ」
三番隊の副隊長は僕を一瞥するが、ワープの椅子の側という定位置に戻る。
その後、カンバラが騎士団にあの森でのことを語る。一級冒険者ムテキがなぜさらわれたのか、魔王のパーツを集めてなにを企んでいるのか、そもそも敵は何者なのか、様々な議論が繰り広げられたが、僕にはすべて雑音に聞こえた。
ただ胸がえぐられるような感触を嚙みしめていた。
「……ありがとうございます」
気づけば帰りの馬車の中、エリーが丁寧にお礼を言ってくる。
「お礼はいいよ。仲間として当然のことをしただけだ」
カノンは行きと同じように馬車酔いしてダウン。僕の膝の上で寝ている。エリーはなぜか不満そうだ。
「悔しいですか?」
向かい側の席に座るカンバラが僕にそう聞いてきた。僕の頭の中にある人物が浮かび上がる。
「ウロナさんはこの件に関わることができません。魔王のパーツ、それから敵側の戦力がA級以上あることがわかっているからです。こちらはすでに尊い犠牲を二名も出している。この件に関われるのはA級冒険者の資格があるもののみです」
ということはカノンの仇も討つこともエリーの無実を証明することもできないってこと?
「だから君がA級冒険者になるんです」
「え? 万年C級の僕が?」
思わず素っ頓狂な声を出してしまう。
「そうです。もちろん、君のやる気次第ですが」
「やります!」
あいつに好き勝手いわれたのが悔しいのもある。でも一番は仲間の雪辱をはらすために僕はA級冒険者になってやる。
僕の答えにカンバラはにこりと笑うと……、
「ではまず来週に行われるギルド対抗戦に出てもらいます」