乱入者vsカンバラ
男は大木の枝から飛び下り、カンバラと魔物の近くに着地する。
「あんた強そうだなぁ。A級か?」
言いながら男は魔物に触れ発火。魔物は消し炭となり、水晶玉のようなものが落ちる。
「はい。おしまい。こいつ討伐しに来たんだろう? 解散、解散」
ステータス値10000越えの魔物を瞬殺した。その衝撃が僕らを駆け抜ける。
「待ちなさい」
そう言ったのはカンバラだった。
「君はなにを持ってるんです?」
外見が印象的で目がいかなかったが、男の手には人らしきものが掴まれていた。
「ムテキ・へスカバン。最初にこの森に来たA級冒険者だ」
男は魔物から落ちた水晶玉を拾いながら続ける。
「俺らの目的はムテキだ。だからこいつが所属してるギルドから一番近い森にさっきの魔物を放った」
「それは魔王のパーツですか?」
カンバラは男が拾い上げた水晶玉のようなものを見ながら尋ねる。水晶玉のようなもの中にはよく見ると鋭い爪が入っている。
「ああ、爪だ。爪だけでも魔王様のパワーはやばくってな、放置してたらさっきみたいな魔物になる。魔物を使ってムテキを呼び出し、ムテキを拉致。ここまでは作戦通りだった。でも魔物野郎が暴れ回ってどっか行っちまってたのさ。でも魔王様のパーツを放置するわけにはいかねェ。だから一生懸命探してたんだよ」
「B級の冒険者がムテキさんと同じく派遣されたはずですが?」
「あー、灰になった」
瞬間、カンバラは木の棒で男の顔面を殴り飛ばした。その表情は恐ろしい。まるで、鬼のようだ。男の手からムテキが離れる。
「くっそ。A級はめんどいな」
と、ぼやいている間にカンバラは男の顎に木の棒をくらわせる。
だが男も負けていない。彼はカンバラに炎を浴びせる。しかしカンバラはものともしない。きっとカンバラのスキル【完全防御】が無意識に彼の身体を守っているのだろう。
カンバラが圧倒的に押していた。流石はA級冒険者だ。ステータス値10000以上の魔物を一瞬で討伐する化け物を完封している。
だが、ここで男は切り札を使った。そう、スキルの天井。
「ゴクギ!」
男の放つ炎がオレンジから青に変色する。
「ハハッ。やっぱA級はやべーな。しかたねェから本気出してやんよ」
カンバラに青い炎が襲いかかる。カンバラはもちろん、ものともしない……はずだった。
青い炎はカンバラを焼き尽くす。カンバラが炎でひるんだ瞬間に、男はポケットから包丁を取り出し、カンバラをめった刺しにする。
ぐさぐさと生々しい音が聞こえているのに僕たちは一歩も動けなかった。
「さーてかえっか」
カンバラがばたりと倒れ、血の海に沈んでく。
……身体が動かない。声も出せない。
「待て!」
気絶しているムテキと共に、森の中に消えていく男に誰かが声を上げる。
「よ、よくもカンバラさんを! 殺してやる!」
そう発したのは膝をガタガタ笑わせながらも必死に男を睨むサリーだった。