転生3日目
夜明け前だろうか。仲間のアントに起こされる。寝ている間に特にモンスターによる襲撃などはなかったようで安心する。入り口近くまで歩いていき、見張りを交代する。そして昨日と同じように新たに2体のレッサーアントを生成して自分の代わりに見張りを任せる。
見張りを任せている間、おれは入り口外近くにある手頃な大きさの岩を洞窟入り口に集めておく。これは襲撃などあったとき、少しでも相手の数を減らせるようにするためだ。ゴブリン程度のモンスターなら小さめの岩をぶつけるだけで行動不能にできるだろう。そうして岩を入り口にある程度集め終わるころには外が明るくなって朝を迎えた。
よし、転生してから三日目、今日も頑張るって生き残るか。
仲間を集合させてアント達に食事をとるように伝える。俺はゴブリンを食べることができないので食事抜きだ。流石に腹が減ってきた。今日は何としても食料を見つけなくてはならない。その間俺は今日の予定を立てる。
まずは俺らの数を数える。
ジャイアントアント×3(一匹負傷)
レッサーアント×5 (一匹負傷)
ふむ、全体で8匹か。負傷していないアントだけだと6匹なるな。ふむ・・・。
よし、今日も昨日と同じように二手に分かれて洞窟の防衛と、探索をするとしよう。
今日は1体のジャイアントアントと、3匹のレッサーアントを連れて探索に出ることとする。残りのアント達には洞窟を守るよう指示を下して探索に出かける。
昨日は洞窟から出て正面を中心に探索した。その方面に行けば池があり、何か食べ物があるかもしれないが池にはあの得体のしれないモンスターがいるので今日はやめて、戦力がもっと整ってから行くことにしよう。なので今日は洞窟を出て右側を探索することにした。ジャイアントアント1体とレッサーアント3体を引き連れて歩き始める。
しばらく歩き始めると何やら前方に何かの気配が。おれは注意しながらゆっくり近づき、木の陰から顔を出して覗く。
するとそこには狼のような生き物が三匹。彼らは狩りを終えた後のようで倒したらしい何かのモンスターの肉を食べていた。
しかし、狼の一匹がクンクンと何か嗅ぐような仕草をするとこちらに向かい吠えてきた。それによって三匹全員の狼にこちらの存在がばれた。彼らはためらうことなくこちらに向かって走ってきた。
しょうがない、戦うしかないようだ。俺も同様に狼に向かって走り出す。それによって仲間のアント達も狼に向かって走り出した。数ではこちらの方が上だが向こうの強さは未知数、何とか勝てるだろうか。
狼がとびかかってくるのに合わせてこちらもジャンプする。そしてそのまま背中の羽を使って上昇し狼どもを飛び越える。よし、うまくいった。これにより、狼を俺とアント達で挟み撃ちにすることができる。狼は初撃を交わされたことに加えて後ろに回り込まれたこと、さらに5匹のアント達が攻め込んでくることにより完全に慌ふためいていた。もしかしたら俺一人だけだと思い込んでいたのかもしれない。
おれはその隙を逃さず、手の爪を使って狼をひっかく。
しかし、分厚い毛皮が邪魔をしてあまり深い傷がつかなかった。ひっかき攻撃はあまり有効じゃなさそうだ。しかしダメージを与えることはできるようだ。おれは4本の手を必死に動かし狼たちの顔や手足を狙って切り傷を増やしていく。その間にアント達による顎の攻撃により、狼たちはだんだん弱っていった。
そうして戦闘を始めてから数分後、3匹の狼を無事に倒すことができた。最後の一匹を倒した瞬間アナウンスがなった。
【レベルが6から7になりました。】
【スキル 生命力譲渡 を習得しました。】
狼を倒したことによりレベルが上がり、それにより新しいスキルも得られたようだ。おれはステータス画面をみる。
名前:なし
種族:蟲人(幼体)
体力:30/30
魔力:13/27
レベル:7
スキル:虫モンスターテイム、自己修復、生命力譲渡(new!)
生命力譲渡。なまえから察するに自分で生成した蟲を強くすることができるのだろうか。
スキルを確認した後は仲間の様子に目を向ける。攪乱がうまくいったのか4体とも特に大きなけがはなさそうだ。よかった。戦いのたびに戦力が減るわけにはいかない。特にいまは数があまり多くないので一匹一匹を大切にしなくてはならない。
とりあえず、倒した狼を洞窟に持ち帰ることにしよう。昨日からろくなものが食べられなかったのでおなかが空いて力が抜けてきた。狼どもをアリたちに担がせて洞窟に戻ろうとしようとしたとき、狼たちが食べていたモンスターが目に留まった。
そういえば狼たちは何を倒して食べていたんだろう。そう思いながら近づいてみるとぞっとした。
それはほとんど噛み荒らされていてわかりずらかったが、甲殻などが残っていてなんとなくわかってしまった。
これは俺と同じ種族だ。体の大きさは俺ぐらいだから幼体だろう。しかし体の色は俺と違っていて緑色だった。個体差だろうか。一人で死んでいるところをみると先ほどの狼と1対3で戦い、やられてしまったのだろうか。おれも仲間がいなくて一人だったらやられていたのかもしれない。
俺と似た存在が他のモンスターに襲われて喰われているという現実にしばしショックをうけていると近くでガサガサと音がした。
急いで目を向けるとそこには大きな芋虫が一匹いた。逃げる様子もなくこちらの様子をうかがっている。
なぜここに傷ついた芋虫が・・・。そこではっと気が付いた。傷跡は何かに噛まれたような傷に見える。もしかしたらそこの芋虫はこの蟲人のテイムした虫モンスターだったのかもしれない。
おそらく主人の蟲人に連れられて森を探索していたところ、狼に出会い、戦闘を開始した。この芋虫も主人と共に一緒に戦ったのだろう。しかし戦いによって芋虫は深い傷を負い、主人の蟲人が倒された。狼どもは蟲人から先に食べ始め、この芋虫が食べ終わる番だったのかもしれない。しかし、狼どもが食べ終わる前に俺たちが現れて狼を倒した・・・。こんなところだろうか。
しかし、傷ついた虫を見るというのはなかなか心が痛むものだ。なんとかできないか・・・。
そうだ!新しく得たスキル、生命力譲渡を使えばおれの体力を分けてあげることができるかもしれない!
おれは早速芋虫に近づいて芋虫に手を当てて頭の中で生命力譲渡、と唱えた。スキルの使い方はなぜか何となくわかった。
芋虫は特に抵抗をしなかった。もしかしたら傷つきすぎてできなかっただけかもしれないが。
スキルにより、俺の身体から力が抜けて、魔力が抜ける感覚がした。
しかし目の前の芋虫の傷が見る見るうちに治り、まったく傷跡がわからなくなった。
スキルを使い終わると俺はステータス画面をみた。
名前:なし
種族:蟲人(幼体)
体力:22/30
魔力:5/27
レベル:7
スキル:虫モンスターテイム、自己修復、生命力譲渡
どうやら生命力譲渡は使用した魔力分だけ体力も消耗するようだ。スキルを使用する前と後で体力、魔力が共に8減少している。
俺は続けてジャイアントアントを仲間にしたときと同じように自分の触覚を芋虫の触覚に触れさせた。
そうして自分の仲間になるように伝えると、相手の忠誠が伝わってきた。すると
【グリーンキャタピラーが仲間になりました。】
こうして俺は新たな仲間を手に入れた。




