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説得


2か月ぶりに互いの強さを確認し合った俺たちはアダムズさんとニュートン君のところに行くことにした。最近はアダムズさんの残された時間も大分少ないらしく、意識のある時間も日に数時間となってきている。それに比例して短い時間を使って一生懸命に孫を説得するアダムズさんと、祖父がだんだん木人トレントではなくなることを感じ取りそれによりなおさら意思を曲げないニュートン君とのやり取りを見かけることが増えていた。アダムズさんが完全に木になってしまう前に早くニュートン君を説得してアダムズさんを安心させてあげなくては。


彼らの方を目指して歩くとすぐにアダムズさんとニュートン君の姿が見えてきた。しかし前のように言い争ったりしている様子はなく、二人とも俺らのほうを見ている。どうやら俺らを待っていたようだ。彼らの傍まで行くとニュートン君に念話で話しかけられる。


『爺ちゃんから話は聞いたよ。あんたらが爺ちゃんを守るために護衛を置くってね。後ろの集団がその護衛か?』


ニュートン君が俺らの後ろの虫モンスターやゴーレム、アンデットたちを見る。これだけの集団が近づいてきたら少しは緊張するはずだが彼は少しも臆した様子を見せなかった。強がっているのか、それとも自分の強さによほどの自信があるのか。どちらにしても大したものだ。

ニュートン君はさらに続ける。


『この2か月間、あんた達のことを陰から見てきた。それで、あんたたちの人となりをちゃんとわかったつもりだ。だから、その、最初の考えを改めてあんた達になら爺ちゃんを任せてもいいと思っている。』


どうやら彼は出会って時からこれまでの間に俺ら三人の様子を観察し、信頼できると評価してくれたようである。俺たちがアダムズさんの為に一生懸命修業をした甲斐があった。

その後もニュートンは続ける。


『ただ、どうしても2つだけ頼みたいことがあるんだ。』


彼の真剣な様子に俺も姿勢を正す。ここで何か間違えれば彼は俺たちに連いてこなくなってしまうかもしれない。


『内容にもよるが、俺たちにできることなら引き受けよう。』


『そんなに難しいことじゃない。1年に1回ほど、爺ちゃんの姿を確認しにここに来たいんだ。』


なるほど、護衛によって守られるとしてもちゃんと自分の目で祖父の無事を確認したいということか。納得だな。俺だって彼と同じ状況ならそのようにしたいだろう。いくら護衛を置いたからといって一抹の不安もなし、というわけにはいかない。彼にとっては大切なたった一人の祖父なのだ。たとえこれから木となり、口を利かなくなったとしてもその大切さは変わらない。


『いいだろう。俺ももともと定期的にここを訪れて護衛を強化する予定だったからな。』


いくら俺たちが成長して強くなったとはいえ2か月間ではこの森の頂点に立てたわけではない。俺らより強いモンスターはまだまだおり、アダムズさんの安全が絶対という保証はありえないのだ。しかしこれからの旅で強くなった後に再度ここを訪れ、より強い護衛を置けばその度にアダムズさんの安全性は高まるはずだ。


『ありがとう、やっぱりあんたたちは思った通りのいい人達だ。』


前に会った時、彼はこんな感じだっただろうか?ニュートン君にはもっと反抗的な態度で来られると思っていた俺はなんだか褒められているようで調子が狂う。完全に調子が崩れてしまう前にとりあえずもう一つの条件を聞こう。


『もう一つのほうは?』


『もう一つは、あんたたちと一緒に旅をしている途中で見かけた木人トレントを見かけたら、彼らに協力してあげて欲しい。爺ちゃんや俺のような状況の木人トレントは世の中に沢山いると思うんだ。そういう木人トレントを見かけた時、彼らが守られることに納得したら同じようにしてあげて欲しい。』


彼はやっぱり素直で優しい性格の持ち主だろう。自分の祖父以外の木人トレントのことも気にかけている。若くして仲間のことを考えられるのは珍しい。きっとアダムズさんが彼を大切に世話して育てた結果だそう。ニュートン君にとってアダムズさんが大切なようにアダムズさんにとってもニュートン君は宝のように大切なはずだ。俺は彼に協力してあげたい。


『わかった、約束しよう。いいよな?二人とも?』


『もちろんです。』

『ええ、問題ないわ。』


ソフィアとネラさんの方を見ると二人とも了承してくれた。


『ありがとう』


ニュートン君は俺たちに頭を下げて感謝をする。すると今まで傍で黙って聞いていたアダムズさんが念話で絞り出すように話しかける。


『おお、、、カヤイたちよ。ありがとうのぉ。』


アダムズさんは喋るものやっとという様子で俺たちに話す。お別れの時間はもうすぐそこまで来ているのかもしれない。


『そなたらの心遣いのおかげで安心して孫との、、お別れができそうじゃ、、、。心から感謝をするぞ、、、。』


もうかなり限界な様子がアダムズさんのゆっくりと喋る様子から伝わってくる。

アダムズさんはニュートン君の方を向く。


『ニュートンよ、、、わかっていると思うが、、、これでわしとの時間は最後じゃ、、じゃがわしはこの者らのおかげで安心してお別れができる。わしはこの者らに恩を受けた、、、そのことを忘れずに、、彼らと共に行くがよい。お前は立派な木人トレントで、、、わしの誇りじゃ。これからの旅、くれぐれも気を付けての、、、元気でな、、、ニュートン、、、。』


今まさに意識が途絶えそうなアダムズさんにニュートン君が落ち着いて応える。


『爺ちゃん、今までありがとう。俺この人たちと旅して世の中を見てくるから。すごく強くなっていつか木人トレントがもう襲われない世の中にするから。だから爺ちゃんも安心して木になって。』


ニュートン君の言葉に対してアダムズさんからの返事はなかった。いつアダムズさんの意識がなくなったのかはわからない。しかし彼はきっとニュートン君の願い通り、安心して意識を手放せたことだろう。


そのままアダムズさんを見つめて動かなかったニュートン君だったが、しばらくして振り返り俺たちの方を見る。


『ありがとう、爺ちゃんは安心して逝けた。』


正確にはアダムズさんはまだ死んだわけではないが木人トレントとしての世は終えたのであながち間違いではない。ニュートン君はもう二度とアダムズさんと話すことはできない


ニュートン君は目元の涙をごしごし拭いた後、数度深呼吸した。そして落ち着くと俺たちに笑顔を向けて


『それじゃ、これからよろしく。』


と言った。これで彼は俺たちの旅についてくることになった。

頭の中でアナウンスが流れる。


木人トレントのニュートンが仲間になりました。】



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