提案
俺らは未だに言い争いを続けていたアダムズさんとニュートン君のほうへと歩く。二人までの距離が近づくにつれて念話の内容が聞き取れるようになってくる。
『だから何度言ったらわかるんじゃ!』
『それはこっちのセリフだよ!この分からず屋!』
予想通りといえば予想通りだが、どうやらまだニュートン君が俺らと一緒に行くかどうかの話はついていないようだった。言い争いに熱中してて二人のすぐ傍に立ってもこちらに気が付かない。
『二人ともちょっと落ち着いてください。そのままではいつまでたっても話がまとまりませんよ。』
俺がそう念話で声をかけると言い争いを続けていた二人がこちらを向き、アダムズさんが先ほどの話し合いの時とは打って変わって優しい口調で俺たちに声をかける。
『おぉ、すまんの客人たちよ。ちょっと孫を説得するのに手間どっての。なに、すぐに終わる。』
昨日の夜と朝でずっと同じ内容の言い争いを続けているのにそれをすぐ終わらせるというその自信はどこから来るのだろうか。というか人にお願いをするのに本人の了承を取れてないのはやっぱりどうかという気はする。そう思っているとニュートン君が念話で話し出す。
『というか、爺ちゃんはなんでこの人達について行けっていうんだよ。昨日会ったばかりの人たちらしいじゃないか。』
おお、それは俺もちょっと気になっていた。いくら縁があるとはいえ、出会ったばかりの人を信用するのは少し変だろう。特にアダムズさんにとってニュートン君は何よりも大切な存在のはずだ。そんな大切な彼を出会ったばかりの俺らに任せるというのは、何か俺らを信用する特別な理由でもあるのだろうか?そう思いながらアダムズさんのほうを見る、するとアダムズさんは堂々とした顔で
『わしの勘じゃ、文句あるか。』
と答えた。人間が腕を組むように太い枝を胸当たりのところで組んでふんぞり返るように。ここまでくるとかえって清々しいな。いや、しかしニュートン君にとってはどうなんだろう。これで納得いくわけがないよな。ほんとにすぐ説得を終わらせる気があるのかなこの木人のお爺さん。
『そんなんで納得できるわけないだろ!やっぱり俺はこの人たちと一緒に行かないで爺ちゃんのもとに残るよ!どのみち爺ちゃんが木になったら口もきけなくなるんだ!俺の勝手にさせてもらうからな!』
ニュートン君はアダムズさんの答えに納得しないどころか怒ってしまったようだ。そしてこれで話は終わりだと言わんばかりに背を向けてそのまま森の奥のほうへと歩いて行ってしまった。
『すまんのぅ、客人たちよ。もう少しじゃったんじゃが。』
俺には全然そう見えなかったが。ソフィアやネラさんの方を見ると二人とも首を振っていてどうやら二人も同意見のようだ。このお爺さんにまかせると話が進みそうにないので俺らの提案をアダムズさんに伝えることにした。
『・・・というわけで、俺らが生成したり、使役するモンスターをアダムズさんの護衛としておけばニュートン君も安心して俺らとの旅に出られると思うんです。』
『なるほどのぅ、確かにそれならあの子も納得するかもしれんの。』
俺らの案をアダムズさんに話した結果、すんなり受け入れてくれたようだった。よし、後はニュートン君を説得するだけだな。実際それが一番難しい部分なのだが。俺はアダムズさんにニュートン君が納得してくれるだろうかどうかについて一応聞いてみた。
『そうじゃのぉ、あの子は自分の強さに自信をもっておっての。実際木人の中では抜きんでて強いほうなのじゃ。しかしだからこそ中途半端な護衛だと納得しないかもしれんの。』
『どのくらい強いんですか?』
『ふむ、この森に鉄鋼甲虫がいるのは知っとるかの?あれの突進力はなかなかのものじゃが、あれを正面から受け止めて持ち上げるだけの力はあるのう。』
鉄鋼甲虫は前に仲間にしたことがある。鉄のような硬さの甲殻をもつ大きなカブトムシの虫モンスターでゴブリンくらいの相手ならその得意の突進で軽く弾き飛ばしてしまう。
『しかもそれが昔のことじゃったからのぉ。あれから成長してさらに強くなっていることじゃろう。』
アダムズさんからの話を聞く限り、少なくともニュートン君は鉄鋼甲虫以上の強さを持つようだ。これはまずいな。もしかしたら今の俺達では護衛用に彼以上の強さの戦力を用意することができないかもしれない。
『カヤイさん、おそらく今のカヤイさんやネラさんではニュートン君に勝てるようなモンスターを用意できないと思います。ひとまずレベルを上げたり、仲間を増やしたりしてはどうでしょうか。』
『そうね、私なんかまだゴブリンしか使役してないもの。あまり強そうじゃないし、護衛にするならもっと強いモンスターがいたほうがいいと思うわ。』
どうやらソフィアとネラさんも同じようなことを思ったようで、レベルを上げるように提案される。確かにな。今の俺達の生成したり使役するモンスターではニュートン君に敵いそうになさそうだ。
『確かに二人の言うとおりだ。今はとりあえず、このあたりでモンスターを倒してレベルを上げることに専念したほうがよさそうだ。そして強いモンスターを複数体、アダムズさんの護衛とて置けるようになってからニュートン君を説得することにしよう。今のままではどのみち護衛も説得もうまくいかないと思う。』
俺らはアダムズさんにそのことを伝える。するとアダムズさんから
『そうか、そうか。なるほどそこまでしてくれるとは、、、なんともありがたいのぉ。よし、それなら皆が強くなれるようわしが手助けをしよう。わしも伊達に長く生きているわけでないでの、レベルやスキルに関する知識ならこの森一番のはずじゃ。それにこれでも若い頃、仲間と共にいろいろなところを旅をして戦ってきたんじゃよ。』
と返事が返ってきた。どうやらアダムズさんは俺たちが強くなるための手助けをしてくれるようだ。残り時間が限られたアダムズさんは時間が惜しいということで早速これからアドバイスを受けることになった。
俺たちは自分自身の強さの為、そして残された時間の少ない木人のお爺さんに託された願いを叶えるため、真剣に彼の話に耳を傾けた。




