アダムズ
先ほどの戦いでゴブリンを戦力にした後、俺ら3人はさらに森の奥へと向かっていった。しかし、しばらく進んでいるうちにだんだんあたりも暗くなってくる。これ以上は危険なのでそろそろ野宿をする準備をしようかと考えている時、ソフィアから突然念話で声を掛けられた。
『カヤイさん、ネラさん、あれを見てください。』
ソフィアの示す方向を見てみると前方に森の開けた場所があり、中央に一本大きな木が生えていた。周りにこれだけ木が密集している森の中であそこだけ木が一本しか生えていないというのは少し妙に感じた。
『一本だけ大きな木が生えてるけど、、、あれはなにか特別な木?』
『はい、といっても厳密には木ではありません。木人と呼ばれる種族です。』
ネラさんの質問にソフィアが答え、続けて詳しく説明してくれる。
曰く、木人は人型の生き物で木と人の特徴を兼ね備えた生き物らしい。かなりの長寿であり、数千年を生きる個体もいるのだとか。しかしそういった例は極稀でほとんどの木人は数十年から数百年くらいの寿命とのこと。木人は一昔前なら多くの数がいたそうだが、その魔力を多く含んだ体は魔術師が使う杖などの良い材料となるため、乱獲など受けて数が減少し、今では珍しい存在となりつつあるらしい。
『近づいても平気か?』
『わかりません、個体ごとに性格がかなり違うそうです。もしかしたら攻撃してくるかもしれないので近づくなら十分に気を付けてください。』
『わかった。とりあえず危なくなさそうな距離まで近づいて念話で話しかけてみる。』
俺は少しだけ緊張しながら木人に近づいて念話で話しかける。一応いつでも逃げれるように準備だけはしておく。
『こんにちは、木人さん。聞こえますか?』」
しばらく木人からの返事を待つが反応がない。もしかしてソフィアが勘違いしたのかもしれない。そしたら俺は木に向かって話しかけているのか、ちょっと恥ずかしいな。そう思っていた瞬間、突然大木がぐるりとこちらを振り返った。
『もしかして、今、そなたが話しかけたのかな?』
俺は不意打ちを食らう形になり、驚いてしまったがなんとか返事をすることができた。
『そ、そうです。木人を見るのは初めてで。名前を聞いても?俺は蟲人のカヤイといいます。』
『ふむ、自分から名乗るとは礼儀正しい子じゃの。私は木人のアダムズという。よろしくな蟲人の子、カヤイよ。』
どうやら割と友好的な性格の木人のようだ。俺は安心するとアダムズさんに仲間を紹介することにした。
『アダムズさん、こちらが俺の仲間の人間のソフィアとスケルトンのネラさんです。』
『こんにちは、ソフィアといいます。』
『こんにちわー、ネラです。』
『人間のソフィアと、スケルトンのネラじゃな。こんにちは。私はこの森に長く生きる木人のアダムズじゃ。久々の客人と出会えてうれしいのぉ。』
アダムズさんによると最近は森にあまり人が来ず、少し寂しい思いをしていたそうだ。木人は人と同じように歩くことができる種族だが、生まれたばかりの頃や歳をとってくると木のように根を張り移動しなくなるのだとか。アダムズさんは人と話したくても、もう高齢になりつつあり移動ができなくなったので自分から人に会いに行って話をすることもできなかったらしい。
『たまにせっかく人が来たと思ってもわしの木人の身体を狙うゴロツキばかりでのう、話の前に斧をぶつけてくるんじゃ。ま、普通の斧ではわしは倒せんがの。』
木人の身体は歳を取ればとるほど密度が増し、高齢になる頃には全身鋼鉄のような硬さになるそうだ。なのでその場を動けなくてもその鋼鉄のような硬さの枝を自在に動かせるためゴロツキぐらいなら問題にならないのだとか。アダムズさんの周りに草木がないのも自分で刈り取ったからだそうだ。そのとき俺は最初からアダムズさんの間合いに立っていることを知りヒヤッとした。もしアダムズさんが攻撃的な木人だったらとっくにやられていたかもしれないからだ。ちなみに返り討ちにされたゴロツキたちはどうなったのか聞いてみると
『人の命を狙うなら失敗した時、自分の命を失う覚悟がないとの。』
と返ってきた。どうやら返り討ちにした人達はもうこの世にいなさそうだ。
ゴロツキ達の話をしてから少しだけアダムズさんのことが怖くなったが話していると普通の人だ。思うに攻撃してきた人たちを中途半端に追い返せば彼の身が危険なのだろう。攻撃してきた人達を容赦してしまうような木人は逆にこの世からいなくなってしまうのかも知れない。この世界はやはり弱肉強食の世界だと常々思わされる。そう考えているとアダムズさんが何やら思いつめた表情で話し始めた。
『実を言うともう私は老い先短い身でな、ここで会えたのも何かの縁。一つ、頼みごとをきいてくれんかの?』
突然のアダムズさんからの頼み事に躊躇する。雰囲気からして真剣な内容だろう。とりあえず俺一人で決めるわけにはいかないので仲間と相談させて欲しい、と言おうとして口を開きかけた時、後ろのほうでガサガサと草木をかけ分けるような音が聞こえる。
振り返るとそこには別の木人がいた。




