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4・シスコン姉と婚約者

遅くなってしまって、申し訳ございません…っ!

ある春の昼下がり。

フィーアは珍しく鍛錬するでもなく、一人で紅茶を嗜んでいた。


「はぁぁぁぁ~~~~っ」


―遠目から見れば、だが。

当の少女は高級そうな菓子に目もくれず、思考に没頭する。


(あぁ…今日もミューラが可愛い…。どうしよ、もう悶え死にそうだ…。あぁ~、可愛い可愛い可愛い可愛い‼なんか言っても足りないくらいだ。神様ッ!転生させてくれてありがとうッ‼今日から神様信じちゃうぞ♪)


「へぇ…。君が溜息をつくなんて珍しいこともあるんだね?いつも無表情で完璧令嬢な、君が」

「うるさいぞ。恋煩いだ、恋煩い。………………って、え?」


急に何処からとなく聞こえた声に思わず生半端な返事をしてしまった。


(え、待って。この声って……)


「…へぇ。相手は誰?婚約者のボクを差し置いて、君がそんなことを言うなんてねぇ…?」

「せせせせせせせせせ、セシリアル王太子殿下ぁ!?」


滅多に会いに来ない貴方がどうしてココにぃぃいい!?


***


私には婚約者がいる。

その名も、セシリアル=クリストアート。

クリミア王国の王太子殿下で、私の二つ上の七歳。


そう…七歳なのだ。あんな腹黒なのに…ッ!!!


「………そ、それで…本日はどのようなご用件で…?」

「ん…?あぁ、別に用事はないけど…?」


はぁああああああ!?じゃあ来るなよッ!?

私のミューラちゃんとの時間が減っちゃうじゃないかッ!!


「………さ、サイですか」


あ~ぁ、早く帰ってくれないかなぁ…。

どうせ将来ヒロインが現れたらそっちへ行くんだから…。

ってアレ?私ってモブ・オブ・モブだよな?

それにセシリアル殿下って言ったら、確かミューラの婚約者だったはず…?


「!!!」


もしかして、セシリアル殿下がミューラちゃんに一目惚れ…!?

そうだ!絶対そうに決まっている!!

どうするか…ミューラの家庭教師は確か十五時まで…。

あと五分もしない内に終わってしまうぞ…。何かの拍子に殿下がミューラを見かけてしまったら…!


「…ぅぅぅぅぅ……」


あげないからな!絶対に、こんな腹黒男に私の天使はあげたりしない!!


そう決意を固め、フィーアはキッと睨むようにセシリアルを見た。


「!?」

「さっきから面白いくらい百面相していたけど、何か決まったかい?」


睨んだ途端、ずっとフィーアを見ていたらしいセシリアルと目が合い、フィーアは目を丸くした。


「べっ、別に…っていうか!百面相なんてしていません!?」

「いやいやいや~、さっき十分していたから。いやぁ、君ってこんなに表情豊かなんだね。いつもつまんなさそうな無表情だから全く気が付かなかった」

「なぁ――――ッ」


気が付いていたのなら教えてくれれば良いものを…っ!

羞恥を怒りで顔が赤くなるのを自覚しながら、私は悪魔を睨みつける。


柔らかな金髪。すべてを見抜いてしまいそうなエメラルドの瞳。

―――無駄にイケメンなところが苛立たしい。


私だって五歳ながらも結構綺麗な顔をしていると思う。

ミューラちゃんとは正反対な胸までの真紅の髪。ノスタルト公爵家特有の瑠璃色の瞳。

何回か出席したお茶会では"青薔薇の姫"…髪が赤なのに"青薔薇"と呼ばれているのは、私がいつも白地に青薔薇の刺繍がされているドレスを着ているため…と噂になる程の容姿だ。


「あのねぇ……っ!」


私が思わず反論しようと、紅茶を置いた。


途端―――コンコン。


扉がノックされ、ミューラが顔を出す。


「あの…お姉さま…。お客様がいらしていると聞いたのですが…」

「みゅ、ミューラ!?だだだだだだ、駄目ッ!こんな()()()を貴方の純粋な瞳に映してはダメ!!挨拶は要らないから、()()()()までお部屋にいて!!」

「え、えぇ!?お姉さま…!?……まぁ、お姉さまがそうおっしゃるのなら…」


渋々と言った感じに扉からミューラの気配が離れていく。


(ふぃ~~~ッ!いい仕事をした!これで死亡フラグ一つ潰せた!!)


達成感と爽快感に浸っていると、目の前から黒いオーラが溢れ出しているようだ。


(んん……?そっちって…)


「せっ、セシリアル、様……ど、どうかなさいました…か?」

「ん?君なら分かるんじゃないかな?」


(あはは~、なんでだろう。ものすごく心当たりがある…)


「も、もしかして…腹黒男って言ったこと、怒っています…?」


愛想笑い…といっても、頬が痙攣してしまっているが…と冷や汗を浮かべながら、フィーアが問いかける。


「いや~?まさかねぇ~。君はボクに興味ないなぁ~と思ってはいたけどさぁ~まさか"腹黒男"とか"視界に映しちゃダメ"とか"追い出す"とか……あはは、ボク仮にも王太子なんだけど?」


(ひっ、ひぇええええええええッ!?オーラ!オーラが黒いですぅうううう!)


「ひょぇ…っ!?」


いつの間にか私の近くに来ていた殿下が私の視線を上に持ち上げる。

…つまり、顎クイ状態である。


「~~~~っ!!」

「ふっ、まぁ。いいけどね?」


ちゅ、っという音と共に頬に暖かな感触。

そして目の前には嫌味なほど整った顔。


「ぎゃぁああああああああああああああああああ――――ッ!変態ぃぃいいいいいいいいいいーーーーー!?!?!」


思わず渾身の力で目の前の男を突き飛ばして絶叫した私は…きっと悪くない。

ーはず。











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