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転生者は魔法学者!?  作者: 藤原 高彬
第七章:「建国の師父は人文学者!?」
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第15話 武器を作ろう・5

第03節 竜の山へ〔4/5〕

 今回の事件で、俺達が(たお)した飛竜(ワイバーン)は、公的には1頭のみとなっている。他方、俺たちが自分たちの装備の為に使うのは、その1頭を解体した素材だけ、と定められている訳ではない。

 なら、俺たち自身の装備を更新するのに、これら(ドラゴン)素材(マテリアル)を使わない理由はない。


 まず防具。

 俺たちは体の動きを阻害することを(いと)い、(ライト)(レザー)(アーマー)しか装備していない。が、竜素材の最大の特徴は『鉄より強く、羽毛より軽い』だ。勿論(もちろん)、『羽毛より軽い』というのは言い過ぎだが、竜革(ドラゴンレザー)は水に浮く程度の重さなのは事実のようだ。つまり、樫材(木材の中では比較的比重が大きい)とほぼ同程度の比重で絹より軽いということになる。

 なら竜革で鎧を作り、その上に竜鱗(ドラゴンスケイル)を貼り付ければ、かなり信頼出来る強度になるということだ。胸と肩、(ひじ)ひざ(すね)硬鞣(かたなめ)しをして強度を調節する。


 また、楯も竜鱗で強化出来るだろう。

 汎用の大楯(ヒーターシールド)は面倒だから放置するとして、ルビーの『有角円楯(イージス)』とサリアの『魔導楯(アキレウス)』はともに表面に鱗を貼ることで、強度が増す。但し『イージス』は、中央から外側に向かって花開くように鱗を貼らなければならないので、ちょっと面倒だった。


 次いで、武具。

 カレンに渡した『ゴルディアス』を、彼女用に調整するのは当然のこととして(大の男が持つには良いが、女性が手にするには大きすぎて重すぎる)、竜牙・竜爪で何か出来ないか検討してみた。


◇◆◇ ◆◇◆


「確認してみたところ、竜爪(ドラゴンクロー)神聖鉄(ヒヒイロカネ)とほぼ同程度の強度があった。重量は比較にならないくらい軽く、また有機素材だから靭性(じんせい)は高い。逆に衝撃には弱いとは言っても、そこらの鉄製品の比じゃないし」


 竜素材は、本当の意味で不思議素材である。是非成分分析をしてみたいが、その機材も無ければ知識もない。あったとしても、地球の知識で対応出来ないモノが見つかるのでは? と本気で思っている。というか、地球の知識では矛盾の(かたまり)でしかないのだ。


「その性質を活かした武器造りを考えると、方天戟(ほうてんげき)戦鎌(グレイブ)鉾槍(ハルバード)などの長柄(ポール)武器(ウェポン)と、近接武器としては前方湾曲刀(ショーテル)、その他はネタ武器として逆刃(さかば)刀と死神(デス・)(サイズ)なんかが作れるね」

「普通の刀剣は作れないの?」


 「逆刃刀」という名称にロマンを感じている雰囲気のサリアだが、やはり現実的な部分で気になることもあるようだ。


「普通は切って削って直刀にするらしいけど、何といっても“爪”だからね。金属素材と違って、切ったり削ったりしたら、その分弱く(もろ)くなっちゃうよ。有機素材はそのままが最高だってこと」


「『デス・サイズ』がネタ武器に含まれる理由は?」

「刃が内側を向いているってことは、引いて使う武器だろ? 実戦じゃ役に立たないし、役に立たせたかったらもっと小さな暗殺用にすべきだからね」


「だが、ポールウェポンはリリスが趣味で使う程度だろう?」


 ルビーが口を開く。

 ポールウェポンは、集団戦か、個人が膂力(りょりょく)任せで振り回すか、或いは騎乗戦か、が有効利用出来る状況(シーン)ということになる。言い換えれば、【緋色(スカーレット)の刃(・ブレード)】の面々でそれを好んで使う人間はいない、ということだ。


「そうだね。同じ理由で竜牙(ドラゴントゥース)使(つかい)(みち)がない。

 軍を組織して馬上で振るう武器を設計する時まで、お蔵入りかな?」


 竜牙も、その軽量さから長槍(パイク)などに向く。そして一般の投げ槍(ジャベリン)は、その飛距離を確保する為に全体重量を軽くする必要がある為、軽ければ軽い方が良いということになる。が、俺たちが槍を投げて使う時は、重量(正しくは質量)が威力に直結する為、ある程度までなら重い方が有り難いのだ。

 そう考えると、現状は真実使(つかい)(みち)が無い、ということになる。


 どちらも(あきら)めるしかないな、と思った時。


「ご主人様、お願いがあります」


 シェイラが発言した。


◇◆◇ ◆◇◆


「作ってほしい武器があります」


 シェイラが望む、その武器は?


「はい、これです」


 そう言って取り出したものは、手甲(ハンド・)(クロー)。俺がシェイラの為に用意した、最初の武器だ。今は体が大きくなったのとヒヒイロカネの脇指(わきざし)の攻撃力から、随分(ずいぶん)長いこと使用する状況が無かった。

 しかし、言われてみれば、これほど竜爪に合う武器は、無い。

 手甲(ハンド・)(クロー)それ自体も「猫の爪」と()われているのだから、「猫の爪」を「竜の爪」で作ったとして、それで何が変わる?


 そして、初代の手甲(ハンド・)(クロー)を作った時期(ころ)は、技術的な問題があった。

 手甲鉤はその性質上、手首と前腕(肘から先)に大きな負担を掛ける。また、その負荷が限界を超したとしても、手を放して逃げることが出来ず腕を壊してしまう。

 だから、以前造った手甲(ハンド・)(クロー)は、一定以上の負荷がかかると固定具(ベルト)が自壊するように(あらかじ)め設計されていた。その所為(せい)でシェイラの手甲(ハンド・)(クロー)は、不意を突いて切り裂くものであって打ち合うモノではなかったのである。


 ところが今は、俺もシンディもかなり技術レベルが向上している。入間(ウィルマー)氏のPCにも、幾つかの工業製品の概念図が保存されており、ワンアクションでロックを解除する機構などについても充分に理解している。


 つまり、シェイラの為に作る手甲(ハンド・)(クロー)も、装着場所を手首ではなく肘当(ひじあて)の内側から上腕を(おお)籠手(こて)を兼ねるようにする。手の甲の部分から小指側を経由して(てのひら)側に延びるハンドルを握って手甲鉤を固定することで、剣戟の際の負荷を手首・前腕部から腕全体と肩に分散し、その上で限界を超える負荷がかかったとき、ハンドルを手放すか、或いはハンドルに付けたボタンを押下することで除装出来るようにすれば良いのだ。


「確かに、ワイバーンと空中戦をすることを前提に考えたら、脇指より手甲鉤の方が扱い易いな」

「いやちょっと待ってよ。『高速でワイバーンと空中戦をやらかす魔道士なんぞ、作り話の中にも出てこない』って話をどっかで誰かが言っていたことがあるけど、ここにいたのは吃驚(びっくり)だけど――」

「どっかじゃなくて前世でだな。ラノベの名言って、意外に耳に残って忘れないもんなんだな」

「そんなことはどうでも良いけど、それを前提に装備を調えるって――」


「『竜の(ドラゴンズ・)(ピーク)』にワイバーンをはじめとする有翼魔物が出てこない筈がない。ましてや真打(しんうち)(ドラゴン)もいるだろうし。

 空中戦装備は必須だろ?」

(2,951文字:2016/05/28初稿 2017/06/01投稿予約 2017/07/16 03:00掲載 2017/12/18誤字修正)

【注:「逆刃刀」は〔和月信宏著『るろうに剣心』集英社少年ジャンプコミックス〕に出てくる架空の武器ですが、峰の方に刃が付いている刃物は2014年に千葉県で発見されたという記事があります(千葉日報2014年3月23日)。

 『高速でワイバーンと空中戦をやらかす魔道士なんぞ、作り話の中にも出てこない』という台詞は、〔神坂一著『スレイヤーズすぺしゃる1 白魔術都市の王子』富士見ファンタジア文庫〕に収録された作品「りべんじゃあ。」に出てくる台詞のオマージュです】

・ 絹の比重は1.56。樫(赤樫)は0.96ですので、それより重いのです。どころか、セメント(1.36)より重いという衝撃の事実。「絹が軽い」のは、それだけ多くの空気を含んでいるからです。

・ 「戦鎌(グレイブ)」は「薙刀」とも訳されますが、作中では刃が後ろに反っているものが「薙刀」或いは「大刀」、前に反っているものが「戦鎌」と区別しております。

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