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第74話「ほけんの先生登場」

「かっこいい男の人だったらどうします?」

「ふむ……そうじゃな」

 ほーら、考え込んでます。

 わたしもシロちゃんもミコちゃんも笑ってしまいます。

「わらわの美貌で奴隷じゃ」


「今日の給食おいしかったです、ごちそうさま」

「どういたしまして」

 えへへ、今日のお昼は学校給食をご一緒しました。

 ごはんにさつまあげ、ひじきにポテトサラダ……

「あの……校長先生……村長さん」

 そう、校長兼村長なんです。

 老人ホームの館長もやってるんです。

「村長さんでいいわよ……何、ポンちゃん?」

「今日の給食、ごはんでしたよね?」

「だけど?」

「ごはんあるのに……食パンもありましたけど……」

「え? は?」

「いや、ごはんあるのにパンもあるのってどうなんだろうって……」

「あっちゃだめなの?」

「……変じゃないです?」

 パン屋さんの朝だってパンかごはんかどっちかで、一緒はない気がします。

 あ、村長さん、笑ってます。

 手招きされるまま行って、一緒になって窓から外を見ます。

 昼休みでドッチボールで盛り上がってますね。

「ポンちゃん、たまに給食一緒だけど……どう思う?」

「え、えっと……お世辞抜きにおいしいですけど」

「いや、そうじゃなくて、子供達」

「子供……達?」

 村長さん、ドッチの方をじっと見てます。

 わたしも見るけど……わかんない。

「なんですか?」

「あの子達、バクバク食べるでしょ」

「ああ! ええ!」

「給食の『量』が大事なのよ、『量』が!」

 それでごはんにパンですか……

「村長さん!」

「何、ポンちゃん?」

「それって、『お好み焼きとごはん』とか『パスタとごはん』ですか?」

「さ、さぁ……ね」

 って、村長さんの表情、急に険しくなりましたよ。

 わたしも見ます、校庭を。

 ああ、わかりました、レッドですレッド。

 いつもドッチで逃げ回ってるレッドですが……

 今日はなんだかやる気があるんです。

 なんでそれがわかるかって?

 しっぽですよしっぽ。

 ピンとまっすぐなんです。

 真剣だとそーなるんですよ。

 嬉しいとブンブン振って……

 眠いとダランとして……

 イタズラの時はうねっている……

 そんな感じでしょうか。

 今のレッド、真剣です。

 逃げてればいいのに……みんな、レッドに当らないように投げている。

 それをレッド、わざわざ受けに行きました。

 千代ちゃんを狙って投げられたボール。

 レッド、割り込んで顔面ヒット。

 大の字になってレッド、バタンキュー。

 ボールがテンテンと転がって止まります。

「レッドっ!」

 千代ちゃん血相変えて駆け寄り、抱き上げます。

 みんな集まって、心配そう。

 千代ちゃん、レッドを抱えてやってきました。

「先生、ポンちゃん」

「見てたよ、レッド、バカ~」

「ポンちゃんレッド気を失ってるのに」

「どれどれ」

 レッド、千代ちゃんの腕の中でぐったりしてますね。

 受け取って背中をトントンしてあげます。

 を!

 目をパチクリ、気がついたみたいですよ。

「レッド、お目覚めですか?」

「ポン姉……あれれ~」

「ボールに当って倒れたんですよ」

「……」

 ポカンとしてます。

 あ……マズ……

 目に涙、溜まってます。

「わーん!」

 泣き出しちゃいましたよ。


 場所は変わって保健室。

 村長さんがレッドの傷を消毒してくれます。

「村長さん、なんでもできるんですね」

「保健の先生いないから……ね」

 ちゃちゃっと消毒済ませると、村長さんホットミルクをレッドに飲ませて、ベットに寝かせます。

 給食と昼休みが終ったらレッドはお昼寝の時間だからちょうどいいかも。

 レッドもホットミルクが効いたのか、すぐに寝息たててます。

「ふふ、でも、レッドちゃんを手当てするのも最後かも」

「え?」

「保健の先生、雇ったのよ、明日から」

「そうなんですか」

「ほら、前に言わなかったっけ?」

「?」

「ここ、村の診療所も兼ねているのよ」

「病院……ですか」

「ええ……老人ホームが出来てからはあっちの診察室が綺麗だから移してもいいと思っているけど……どっちにしてもお医者さん一人、いるからね」

「そうなんですか~」

 って、わたし、考え込み。

「あの……村長さん」

「何、ポンちゃん?」

「お医者さんは……ここか老人ホームの診察室なんですよね」

「そうね」

「レッドやみどり、どーなっちゃうんでしょうか」

「!」

「ポン太やポン吉も学校にいるし」

「……」

 村長さん、目が泳いでます。

 あ、わたしを見ました。

「だ、大丈夫よ、なんとかなるわよ」

 た、たまらなく不安です。


 翌日。

 わたし、興味津々で配達に行きました。

 でも、まだ保健の先生は着ていないみたい。

 お店に帰ってそれを話すと、

「ふむ、保健の先生が来るのじゃな」

「コンちゃん、聞いてないの?」

「うむ、わらわ、初耳じゃ」

「どんな人が来るんでしょうね?」

「本官も初耳であります」

「シロちゃんも知らないんだ……ミコちゃんは?」

「私も聞いてなかったわ」

「どんな人が来るのかな~」

 コンちゃん、ティーカップを口元に、

「ポン、おぬしまた浮気かの」

「は?」

「ポン、おぬしドラマに出てくるような医者を期待しておろう」

「そんなの考えもしませんよ」

「いーや『かっこいい男の人がいいな~』とか思っておったろう」

「それ、コンちゃんが思ってたでしょ?」

「いーや、思っておらん」

 コンちゃんウソつきです。

 ふふ、化けの皮をはがすなんて簡単なんだから。

「かっこいい男の人だったらどうします?」

「ふむ……そうじゃな」

 ほーら、考え込んでます。

 わたしもシロちゃんもミコちゃんも笑ってしまいます。

「わらわの美貌で奴隷じゃ」

 わたし、シロちゃん・ミコちゃんを見ます。

 みんなイメージは一緒みたいですね。

 コンちゃんが女王さまで、イケメンが奴隷になってる画が浮かびます。

 テレパシーでシロちゃんに、

『どー思いますか?』

『コンちゃんならやりかねません』

『なんか似合っていそう』

『私が許しませんっ!』

『ミコちゃん、真剣に怒ってる?』

『エッチなのや変なのはダメです』

『……』

『ここ、子供がいるんだから、そんな事したらコンちゃん封印』

 ちょ、ちょっと封印も見てみたいけど……

 コンちゃんなにもしていないみたいでも、大切なの。

 だってみんなが配達に行った時、いるだけでも人は要るんです。

「でも、その心配はないみたいでありますよ」

 シロちゃん、店の外を見ながらポツリ。

 レッドが……白衣の女の人に抱っこされて帰ってきます。

 白衣……保健の先生は女の人です。

 コンちゃんの女王さまはなくなりました。

 しかしまぁ……新しい保健の先生、眼鏡です。

 抱かれたレッドのしっぽ、嬉しさ満点って感じで振りまくり。

 ドアのカウベルがカラカラ鳴って、保健の先生入ってきました。

「こんにちわ~」

「いらっしゃいませ」

「この子、ここの子?」

「はい、そうです」

 わたし、先頭に立ってお出迎え。

 白衣で眼鏡で、ちょっとかっこいい感じの女の先生。

 って、そんな保健の先生の眼鏡がキラリ。

 レッドを降ろすと、タックルよろしくわたしに突っ込んで来ました。

「はわわっ!」

「しっぽ、しっぽだわっ!」

「ちょっ!」

「レッドや他の子の言う通りねっ!」

 保健の先生、わたしのしっぽをモフモフしまくり。

「や、やめてくださいっ!」

「あんた、ポンちゃんね!」

「そ、そーですよ、だからモフモフやめっ!」

「すげー気持ちいいモフモフ」

 わたし、保健の先生の頭をグイグイ押し返し。

 でも、保健の先生、嬉々としてモフモフ。

 その視線が今度はシロちゃんをロック・オン。

 今度はシロちゃんのしっぽをモフモフです。

「何、あんた、ミニスカポリス?」

「や、やめるでありますっ!」

「このしっぽは犬? ねぇ? 犬?」

「タイホでありますっ!」

 出た「タイホ」!

 久しぶりにシロちゃんの銀玉鉄砲が抜かれました。

「ぬるいっ!」

 保健の先生、シロちゃんの懐に入ってます。

 あれじゃ銀玉鉄砲無力ですよ。

 みぞおちに一撃、シロちゃんダウン!

「さて……最後ね」

 保健の先生、コンちゃんを見つめます。

「あなた、コンちゃんね」

「むむ……何故わらわの名を知っておる」

 って、嬉しそうにレッドが、

「ぼくぼく~」

 まったく……でも、レッドだけじゃなくて、みどりやポン吉もしゃべっていそうかな。

「お稲荷さまって聞いてるわ……ご利益ありそうね」

「神もおそれぬたわけ者がっ!」

 ああっ、コンちゃんの手に光る弓矢!

「ゴット・アローじゃっ!」

 うわ、人前で術発動。

 ミコちゃんも見てるけど止めないみたい。

「甘いっ!」

 おおっ、白衣がたなびいて、保健の先生も得物を抜きます。

 で、でも……なんかオモチャの銃みたいなの。

 黄緑色のボディに赤や青、黄色のパーツでカラフル。

 で、でも……保健の先生の動きに無駄なし。

 コンちゃんがゴット・アロー発射する前にシュート。

「ポワワ」なんて音をさせて光の輪っかがコンちゃんに命中します。

「ふぎゃっ!」

 ああ、コンちゃん、しびれてダウン。

 保健の先生に目を戻したら、もうポワワ銃は腰のベルトに戻ってますよ。

「さーて、コンちゃんのしっぽ、モフモフさせてもらうわよ~」

 わたし、傍観中のミコちゃん・シロちゃんの所に退避たいひ!

 テレパシーで、

『み、ミコちゃん、この先生は危険です』

『そ、そうね……』

『まったく、とんでもない先生が来たであります』

 ああ、わたし達の見ている前で、保健の先生コンちゃんに乗っかりました。

 嬉しそうにコンちゃんのしっぽ、モフモフしてます。

「さすが、銀狐の綺麗なしっぽ、モフモフと言うより、フサフサ、フカフカ?」

 ああ、コンちゃん、最後の抵抗で手を上げたっ!

 って、先生のこぶしが「ゴン」ってコンちゃんの頭に落ちます。

 コンちゃん、撃沈。

『村長さん、なんて人を雇ったんでしょう』

『そ、それもそうね』

『村長さんに抗議こうぎ!』

『でも……こんな田舎によくも……』

 ミコちゃんのテレパシーの最中、お店のドアが開きます。

「ちわー、綱取興業っす」

 来たのは目の細い配達人。

 コンちゃんのしっぽをもてあそぶ先生を見て、

「あ、長崎先生、もうパン屋に遊びに?」

「ええ、あんたが紹介してくれた仕事、すげー楽しめそうよ」

「喜んでもらってよかったです」

「楽しいアルバイトになりそうだわ」

 わたしとシロちゃん、すぐさま配達人の両脇に着いて、店の外に連行です。

「な、何をっ!」

「なにをって、わかっているんですよね!」

「な、何、ポンちゃん?」

「あの先生を連れてきたのは配達人さんですねっ!」

「えーっと……そうなるのかな? 紹介したし……」

 シロちゃん、据わった目をして、

「危険人物を村に入れた罪は銃殺です」

「えーっ!」

 配達人を裏に連れて行って……正座させてお説教しました。

 まったくこの配達人、余計な事ばっかりです、モウ!


 な、なぜかわたしとシロちゃんの頭に「×」なバンソウコウ。

 配達人をこらしめたら、店長さんに怒られちゃったんです。

 わたし、コンちゃん、シロちゃんでおやつのテーブルはどんより空気。

 そんな隣のテーブルでは店長さんが保健の先生……長崎先生とお話しています。

「あんたのお店、コスプレ喫茶っぽいわよ、コスプレパン屋」

「長崎先生……ポンちゃん達をいじめないでください」

「しっぽをモフモフしただけじゃない」

 長崎先生はもう、わたし達を攻撃してきません。

 レッドがまとわりついて、攻撃できないんです。

 レッドに感謝かんしゃですね。

『ねぇねぇ、シロちゃん』

『何でありますか?』

『保健の先生……長崎先生……なんだか店長さんと知り合いみたい』

『お話しを聞いていると、そんな感じでありますね』

 わたし、お話している店長さんと長崎先生を見ます。

「あの~」

 我慢できずに切り出します。

「長崎先生……は、店長さんのなんなんです?」

 そんな質問に長崎先生の瞳がぱちくり。

「私、以前はここによくパンを買いに来てたのよ~」

「え……まさか常連さん?」

「っても、ポンちゃんが来る前なんじゃないかしら」

「そうなんですか……」

 わたし、店長さんを見ます。

「昔はよく来てたけど……保健の先生で来るなんて思ってなかった」

「ふふ、これからも、よろしくね」

「パン屋もごひいきに」

 店長さんと長崎先生はにこやかです。

 わたし達のテーブルを見て、

「よろしくね」

「……」

 わたしやコンちゃんは、配達の度に学校で会いそう~

 これからの配達、気が重いですです。


「この間の配達でホットケーキミックスがたくさんあったんですよ」

「え……」

「てっきりここで使うとばかり……注文してなかったけど」

「お店の注文にはないけど、ほら、お届け先はパン屋さんですよ」

「間違ったんだろうね……じゃ、持って行くか」


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