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おまけ小話:人狼さんの幸福な鎖

割といけないことを人狼さんがやらかします。

ヨハンは、自身の腕の中ですやすやと眠るレイチェルをうっとりと見つめた。すやすやとヨハンからすれば世界で一番かわいい、世間的には間の抜けた顔で眠るレイチェルは何やら恍惚としている恋人に穴が開きそうなほど見つめられても、起きる様子を全く見せない。

何年もの間こっそりと見つめ続けた、ヨハンのたった一人のお姫様は訴えられたら確実に負けるであろう出会いの後、何をまかり間違ったのかヨハンを選んでくれた。レイチェルの祖母であるマーブルは退院した後、苦虫を噛み潰したような顔をしていたが、レイチェルがそれでいいならとしぶしぶ頷いていた。レイチェルの両親は男っ気のなかった娘がイケメンの彼氏を連れてきたと呑気に喜んでいる。2人の間には今や何の障害もない。こんな風に微睡むレイチェルを腕の中に収めるのはヨハンだけの特権なのだ。

恋人という立場は得た。周囲もヨハンのことを認めつつあり、村の住人も最初はレイチェルに頻繁に会いに来るヨハンを怖がっていたが、今となっては「もう村に住めばいいのに。」とすら言われている。いわゆる村公認のカップル、外堀もばっちりだ。あとは、そう。彼女が逃げられない理由を作るだけ。

(レイチェルと結婚できたらきっと毎日が幸福なんだろうなぁ・・・。俺のとってきた餌だけ食べて、俺が与えたものだけに囲まれて、俺のことだけ見て・・・。レイチェルが俺で成り立つなんて夢みたいだ!)

歪んだ結婚願望を持ったヨハンは、うっそりと笑う。完全にレイチェルを飼い殺しにする気満々であるが、レイチェルはそれでは納得しないだろう。彼女を囲うための十分な理由がなければ。

ヨハンは瞳を蕩けそうに歪ませながらレイチェルの少女らしい薄い腹をなでた。

「ずっと2人でいるためだから、ちょっとくらいのズルは許してね。」

いつの日か、なんてまどろっこしいことは言わない。今までの努力が実って今日にでもこの種が実ればいいのに。

レイチェルが聞いたら大慌てしそうな言葉を吐いて、ヨハンは穴の開いた避妊具をポイッとゴミ箱に放り込んだ。

その、三か月後。

青ざめた表情でヨハンに自分の身体に起きていることを伝えたレイチェルに、ヨハンは狂気をひた隠し、ただただ優しくて理解ある年上の恋人の微笑みをレイチェルに向ける。その種が芽吹いた理由など知る由もないかわいそうな赤ずきんちゃんに飛びきり優しく、甘く囁く。

「結婚しよう、レイチェル。」



可愛そうな赤ずきん。

オオカミに食べられて戻らない。

可愛そうな赤ずきん。

オオカミの鎖に気づかない。

気づいたときにはもう手遅れ。


おまけ小話でした。ここまで読んでくださってありがとうございました!

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