40.漫画の日々
ABCはこの業界のプロである。
今まで、この薬局は三方が開業医に囲まれているという最高の立地であるにもかかわらず、隣の内科が処方箋を出さずに自分の医院の中で薬を出していたため、患者さんがほとんど来なかった。
「我々が内科のドクターと交渉して、処方箋を院外に出してもらうようにお願いしましょう」
ケータイ部長が熱く語っていた。
つまりケータイ部長がお願いに行って、医師にお願いを聞き入れてもらって処方箋をバンバン出してもらうようになるまでの期間、今までどおり暇な毎日だった。ABCに替わって一か月もたつとABC本社から
「この処方箋の数で薬剤師二人はもったいない」
と、金銀のボールペンをくれた薬剤師は移動になった。代わりに事務の女性がやってきた。
この人とはなかなか気があった。なぜか一緒に仕事をして、とりあえず今は暇な時期なのだと分かると
「よし、遊ぼう! 」
ということになった。
遊ぶと言っても、決められた時間はその場所に待機していなければならない。
店の待合室に置いてあるテレビのワイドショーも見飽きてしまった。
私たちはお互いに自宅から、自分が読み終わったマンガの本を持ってきた。それを交換して、ほぼ朝から晩までマンガを読み続けた。もちろんケータイ部長とくらげ課長がやってきた時は、サッと机の引き出しに隠すという細かい作業は忘れない。
そうやってほぼ一日中マンガを読み、テレビを見て給料をもらっていた。
人生にはいろいろな時代があった。




