38.駐車場事件・前編
「さあ、今日も元気にお仕事だ」
と出勤してきたある朝のこと。
駐車場が!
あんな光景は後にも先にも見たことが無かった。
初めから説明する。ABC薬局の向かい側には車を四台止められる駐車場がある。そのうちの一台分のスペースは、夢野薬局専用としてずっと使用していた。そこが薬局売却とともにABC薬局が引き継いで借りていることになっている
はず。
その場所を、今まで見たことのない男女二人がコンクリート・ブロックを並べ、鎖をかけて厳重に封鎖しているのである。
私はこの二人に声をかけた。
「もしもし、私はここの薬局でずっとここを使用していた者です。あなたたちは何の権利があって、こんなひどいことをするのですか」
二人は聞く耳を持たず、鎖をかける手を休めなかった。
「私たちはイキナリ不動産の者だ。文句があるのなら、お宅の社長に言え」
なかなか強気である。
「社長……」
咄嗟に浮かんだ。
「ほほえみ社長とABC社長。どっちの社長のことを指しているのだろう」
とりあえずABCの社員として指示を求めるため、くらげ課長に電話をした。
「今朝、駐車場が突然、得体の知れない何者かによって封鎖されています。何があったのでしょう」
くらげ課長は即答した。
「そんなはずはない。あそこは夢野社長さんとの取り決めで、ABCが毎月賃料を払っている。ちゃんと金庫に書類が入っているはずだから確かめてくれる? 」
言われて私は金庫を開け、中の書類を探した。
あった!
『駐車場賃貸契約書』
その契約書をじっくり読んでみた。普通、平社員はここまで見るのが仕事なのだろうかと思いつつ。
“(株)ABCは夢野大洋に対し、毎月○○円の賃料で、駐車場一台分を借りる”
やった!
これでABCが前の貧乏社長のような賃料の不払いさえやっていなければ、当然私たちが使う権利を持っている。
「くらげ課長。もし指示があれば、私がイキナリ不動産へ行って抗議してきます」
私はやる気マンマンだった。




