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  作者: らいらい


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1

神聖ザルツ帝国暦 697年 

45代皇帝マクシミリアン治世10年夏


帝国領 コブレント

この土地は 帝国の領土の中でも西端に存在し隣国との国境である 

良好な港を持ち貿易も盛んである

場所がもっと王都に近ければもっと栄えているだろう

港から市街地に続き なだらかな丘に続く

地形

隣国との関所があるが

行き来の規制は緩やかなもので

身分証を提示するだけになる

毎日行き来する者などは 顔確認で

「おはようございます 今日もいい天気ですね」

等の会話をしながら通るというゆるゆるである


隣国トラバス王国とは 言語も同じな為 とくに不便なところはない

その昔 大きな国がいくつもの国に分かれ

た 

トラバスとザルツは元は同族だったのだ 民間の交流はお隣の町的なもの


コブレントは交易や産業で潤っている土地ではあるが 珍しく貴族階級でも下からのほうが早い子爵コブレント子爵の治める土地で 子爵家と領民の関係も

「子爵様~

さっき採れた野菜 持っていってください 今年のは美味いですよ~」

「おぉ これは大きいな 美味しそうだ」

「えぇぜひ 皆様でお食べ下さい」

こんな会話が普通である


そのコブレント領の街中からかなり外れた一軒家

特別大きくもなくあえて言うなら

こぢんまりとした庶民の普通の家

その中で

女の子と女性が向かい合って話している


「ねぇ マリア」

「はい 何でしょうフィー様」

「おしょといきたい」

「そうですねぇ」

マリアと呼ばれた50歳頃の 庶民とは少し違う感じのする品のある女性が 窓から青天の空を眺め

「お母様に伺ってきましょうね ここでまっていてくださいな」

「うん わかった」


フィーと呼んだ女の子を椅子に座らせて

部屋を出た


「きょうは おはなばたけにいくのよ」

誰もいない部屋でしゃべるフィー

『そうなの?わぁ楽しみ~』


「フィー様 お母様のお許しが出ましたからね 行きましょうか」

マリアが戻ってきて 椅子からフィーを下ろしながら話すと

「いっぱいね お花を摘んでお母様にあげるの」

「まぁ お喜びになりますね

では篭も少し大きめで持っていきましょうね」

「うん!」



「フィー様 お母様にご挨拶を」

外に行けるので 走り出していたフィーに

マリアが声を掛けると


片手で 自分にとっては少しツバの広い麦藁帽子を押さえながら

「しょうね!おかあさまに ごあいさつ!」

と いま来た廊下を小走りで戻っていく


小さい家なので 十歩も走らないうちにドアの前に立ち 小さな手を握り

コンコン


「おかあさま フィーです

はいっても よろしいですか?」

3歳とは思えない言葉を使い ゆっくりとした口調で ドアの向こうの人に問いかける


「ええ お入りなさい」

声は若いが 張りがなくか細い声で返事が返ってきた

ノブにようやっと手が届くらしく

背伸びをしながら ノブを回しドアを開け

部屋に入ると 小走りをしていた子供とは思えない カーテシーをする


「フィー 今お家の中で走っていたでしょ?困ったお姫様 

さぁ こちらにいらっしゃい」



声がかかった途端 カーテシーを止めて

母の方に顔を上げる

見れば ベッドに横になっていたのであろう 上半身を起こしてショールを

肩に掛けようとしている


「おかあしゃま!フィーがおてつだいしましゅ!」

注意された事も忘れて ベッドに駆け寄る


「まぁ 今怒られたばかりなのに

もう忘れたのでしょうか 私のお姫様?」


病でやつれてはいるが 健康であれば

どれだけの美貌なのか

髪は金髪だが 陽が後ろから当たれば

プラチナに見えてしまうほど淡く

子供を見やる優しい瞳は サファイアを埋め込んだような青

透き通るほどの肌 なかなか出会えないであろう美貌の持ち主

年の頃は二十歳を過ぎてはいるが

若い

ただこの国では 17 18歳ではお嫁に行くのが当たり前なので フィーが3歳でも

納得の行く年頃なのだ


「おかあしゃま 起きても大丈夫?」

なんとかベッドによじ登ったが

ショールは既に母が掛おわり 

することがなくなった

ベッドの端にちょこんと座って

顔を母の方に向け 尋ねると

母が見えない

「あれ?」

そこで漸く

「あっ」

麦藁帽子の存在に気がつき 慌てて取ろうとするが ツバが大きすぎて自分ではなかなか取れない


「まぁまぁ フィーじっとして?」


クスクス笑いながら母がとってくれた


「これで見えるかしら?」

「はい!おかあしゃま大好き!」


母の首に腕を回し抱きつくと


「私のお姫様は 今日も元気ね

お母様も嬉しいわ」

と 母がフィーを抱き返す

暫くそのままだったので


「フィー?お外に行くのではなくて?」

「あ そうでした ご挨拶に来たんだった」

照れた笑顔で母をみると

「大好きよ 私のお姫様 

さぁ いってらっしゃい」

形の良いフィーのおデコにキスをすると

「いってきます おかあしゃま」

フィーも母のおデコに 背伸びをしてキスをした


もう一度麦藁帽子をかぶり

「ロナウド いきましょう♪」

マリアの息子のロナウドに声をかけ

拙いスキップ (たまにスキップではなくなる)をしながら 篭をロナウドに持たせて出かけた



二人が出ていった後に フィーの母親

ソフィアの元に マリアが薬と水差しとコップを お盆にのせて持ってきた


「フィーは元気が良くて マリアも大変でしょう?」

体を起こしたままソフィアが尋ねると

「ホントにお元気…お転婆ですね

どなたににたのでしょうか?うふふ」


微笑みながら 水の入ったコップを渡す


「あら マック様ではないのかしら?」


薬を水で飲み 苦虫を噛み潰したような

顔で ソフィアが答えると


「いえいえ マック様はとても大人しい方でしたわ ロナウドが剣術に誘っても

乗馬に誘っても いつも 『いかない』

そして本を読まれてましたよ?」

「まあ マック様は幼い頃はそんな風に過ごされていたのね 初めて聞いたわ」

「今度お聞きになったらよろしいですわ

さぁ 少しお眠りなさいませ フィー様がお戻りになるまで」


ソフィアの背中に手を回し 横になるソフィアを支えた


「えぇそうするわ マック様の幼い頃を夢に見れたらいいのに」

「大丈夫 夢にまでもでてきてくださいますよ お優しい方ですから」

「そうね 楽しみだわ」


横になり マリアが肩までお布団をかけてくれる


「では おやすみなさいませ」

「ええ」


ソフィアが目を瞑ると そっと音を立てないように マリアが出ていく




 






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