表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ねぇ、それ、誰の話?  作者: 春風由実


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/42

30.これが王様


 ゆっくりと重厚な扉が開いていく。

 鮮やかな色がまず目に入った。天井と壁をキャンパスにして壮大な人物画が描かれているのだ。


 その絵を追っていけば、それぞれが同じ物語の場面を切り取り描かれていることが分かった。



 ──神話の絵だね。これは凄いや。



 一方で床は真っ白で、おかげで置かれたものが良く目立った。

 壁際には棚に壺などが飾られているが、何より目立つのは中央の椅子。


 アシェルが大きな椅子に腰掛けた白い服を纏う男性の姿を目に入れたところで、声が掛けられた。



「おぉ、待っていたぞ、ウォーラー侯爵。そちらがそなたの娘と例の子息か」



 ローワンを先頭に、アシェルとソフィアは横に並んで部屋に入った。

 アシェルは左の肘を曲げ、そこにソフィアが右手を置いて、社交界で男性が女性をエスコートする際の姿勢を保っている。


 ローワンが足を止めて腰を折ったところで、後ろに続いていたアシェルとソフィアもその場で歩みを止めて、二人同時に頭を下げた。



「我が娘ソフィアと、我が義息アシェルにございます。陛下、他の方々の姿が見えないようですが?」



 ローワンはすぐに頭を上げたが、アシェルとソフィアはまだ頭を下げた姿勢を保った。

 白い床とお互いのトラウザーとドレス、靴だけが見えている。



 ──細かい刺繍が入っているんだ。これが離れるときらきら光って見えていたんだね。



 なんてアシェルがソフィアのドレスの柄に気付きを得ている間も、ローワンと国王が会話を続けていた。



「そなたの娘らのために下がらせたのだ。成人して間もないのだろう?多くいては緊張し、よく話せまい」



「まったく不要なご配慮ですが。感謝しておきましょう」



「そなたはどうしてそう……まぁよい。そこの二人も、顔を上げよ」



 言われてようやく、アシェルとソフィアが同時に姿勢を正す。


 王はアシェルだけを見た。



「ほぅ。これはまた。よい、もっと近うよれ。よいよい」



 振り返ったローワンが頷いたので、一歩前に出たアシェルとソフィア。

 しかし王は「もう少し近うよれ」と言う。



「陛下。二人ともに慣れぬ場所です。若い者たちですし、お戯れはそこまでに」



「むぅ。そなたは本当につまらぬ男だ。しかし見れば見るほどに……美しい男であるな。話に聞いた通り、いや聞きしに勝る美しさぞ。常に側に置きたい美しさだ。どうだ、わしの側近にならぬか?」



 舐めるように全身見られたのち、顔を凝視されても、アシェルは真直ぐに前を向いていた。

 ソフィアはアシェルの腕をぎゅっと強く握っている。



「陛下、お戯れはそこまでにと」



「そなたには聞いてはおらぬわ。どうだ、わしの側近になりとうないか?」



「お断り申し上げます」



 淡々と答えたアシェルは、ちらとローワンの背中を見やった。



 ──これでいいんですよね、ローワン様?





読んでくれてありがとうございます♡

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ