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罪の銀翼  作者: 富嶽 ゆうき
第四章 Allies激動
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見参

 

『来たぞ!』

 米粒のような大きさだった影が、徐々に大きくなっていく。

 それは間違いなく月光だった。

 悠然とAllies部隊に近づく。


 と、その時。

 彼らのうちの数機が火を噴いた。

 被弾したのか。いや、そうではない。

「全機散開!奴らはやる気だ!」

 ミサイルを発射したのだ。長谷はそれに一瞬で気付き、被害を減らすための命令を下した。

 難なくミサイルは撃ち落とされ、Alliesに被害は出ず。


 彼らには、言葉を交わすつもりもないらしい。その事実に長谷は歯噛みする。せめて、過去共に戦い、敵として交えたこともあった者達に対して話をしたかった。

 ――わがままだろうか。


 憂いをそのままに、長谷は新たな命令を出す。

「全隊撤退!」



  * * *



 その言葉に、蓮二は目を点にした。

 真正面から戦うものだと思い込んでいた。

『どういうことなんだ?』

『さあ……』

 守や結も戸惑いを隠せない様子だ。しかし、命令には大人しく従った。三機は殿軍(しんがり)を務め、第四師団から距離を取る。


 なぜ日本占領軍の掃討を目前にして、逃げるような真似をしたのか。

 それは、牛島率いる旧第四師団の目的を推し量るためだ。Alliesを叩き潰しに来るのか、日本から排斥するだけなのか。

 長谷は後者だと読んだ。


 Allies上層部は、牛島を平和外交の障碍になると判断した。

 しかし、それでも同じ民族同士で争うような悲惨な状況は避けたかった。Alliesの統一見解として、同族同士で戦うのは決して日本国民に良い影響を与えない、というのがある。

 感情を蔑ろにした政治は存在しないのだ。


 今、彼らにとって数少ない戦力を失うのは下策だ。Allies、それもシュトラーフェらと戦えば、それ相応の被害が出ることは明白。

 もっとも、それは根拠のうちの二つ目。

 最も大きなものは別にある。


 どちらも自分達を日本と名乗ってはいないものの、事実上日本人であり、なにより主権者足りうる者だ。

 日本本土を支配する脅威が取り除かれた今、状況は複雑化してきている。

 わかりやすく言えば、二つの日本が日本を巡り争っているのだ。

 互いに相容れない思想を持っており、二勢力が手を携えることはないだろう。

 これは、ただの戦争ではない。

 刃を交えて解決できるものではないはずだ。


 なのだが……。

 彼らは追ってきた。

 領土上空を通り過ぎ、領空を抜けてもその速度を緩めることはない。

 完全に読みは外れた。



  * * *



「いつまで逃げる気なんだろ……」

 蓮二は思わず呟いた。

「さあ……」

 特にやることのないシュトラーフェは暇そうである。あくびをひとつした。

 そんな彼女を横目に、蓮二は背後を見やる。


 100m程の間隔を保ってついてくる彼ら。

 その()はしばらく変わらない。

 いや、追ってきた当初から変わっていなかった。

「そういやさ、第四師団の月光って特別仕様だったよな?」

「ああ。出力制限が解除できるやつだ」

「なんで今使ってこないんだろうな」

 純粋な疑問だった。

「……たしかにな」

「使えばさっさと追い付けて戦闘に持ち込めるはずなんだけど」

「追う側の方が有利でもあるが」


 追われる立場というのは、基本的に受け身に回らざるを得ない事が多い。つまりは、主導権を相手に握られているわけだ。

 どう料理しようが構わないのである。

 だと言うのに、ミサイルの斉射以来攻めの姿勢を見せない。


「わざわざ要らぬ戦いをしたくないのだろうな」

「やっぱりそういうことだよな」

「ただ……」

 シュトラーフェは一呼吸置いた。

「このままこの速度でついてこられると月光隊のエネルギー残量が気になる。最悪奥の手を使うしかなくなるぞ」

「なるほど」


 現在の飛行速度は、月光の巡航速度+50km/hほど。そもそも巡航速度とは、最もエネルギー消費の少ないスピードのことである。

 そこから外れると燃費効率が下がり、航続距離が短くなっていくのだ。


 個体差もあるが、空戦でかなり消費しており、帰り道が心許ないほどまで減っている。

 それを予測していたのだろうか。

「何にしてもまずいな……それなら」

「どうするんだ?」

「決まってるさ」


 蓮二は長谷へと通信を繋いだ。

『どうした?』

「俺があいつらを引き付けるんで、そのうちに速度を落として離脱してください」

『うむ……』

 長谷は渋った。

「どうしたんですか?」

『すまないが、それは出来ない』

「なぜです?効率的だと思うんですが」

『室長……いや、司令から言われていてね。単機での行動はやめさせるようにと』

「はあ、そうですか…」


 蓮二は大人しく引き下がり、通信を切った。

「俺って面倒臭がられてるのか」

『らしいな』

 シュトラーフェは笑って言った。

投稿大変遅れましたすみません。

リアルの方が忙しく、溜めも使い切ってしまったので一ヶ月〜二ヶ月ほど休載させていただきます。いつも読んで頂いている方、申し訳ありません。

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