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罪の銀翼  作者: 富嶽 ゆうき
第三章 Allies
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第一回会合

 

「さて、皆を集めたのは私であるから知っているとは思うが、改めて、西馬源三だ。最終階級は大将。今は……フリーターといったところだな」

 西馬が先陣を切ってそう挨拶した。軽い冗談に、雰囲気は和やかになる。

 座ると同時に、西馬は蓮二へと目配せをした。次にやれということだろう。

 そう読み取った蓮二は立ち上がる。

「えっと、播磨蓮二です」

「彼はあのシュトラーフェのパイロットだ」

 あえて言わなかった事を西馬が付け加えた。

 その言葉に反応し、列席者は周囲と、二、三言葉を交わす。

「なるほど、彼が」

「ふぅん……」

 蓮二は品定めされているマグロのような気分になった。

「質問いいですか?」

 唐突に一人が声を上げる。スーツを崩すことなくぴっちりと着込み、短くまとまった黒髪は清潔感を漂わせる。新入社員の中にいそうな様相の男だが、髪には数本の白髪が混じり、顔の所々には皺がある。年齢を掴みにくい。

「構わん」

 取り仕切る西馬が答える。

「では一つ」

 男は立ち上がり、蓮二に正面を向く。

「単刀直入に言います。現在の状況で、兵学校での成績が酷かった彼に戦略兵器とも言えるシュトラーフェを一任する必要はあるんですか?」

 静寂に満ちた部屋に、その声は隅々まで行き渡った。

 その男が言ったそれは、紛れもない事実である。蓮二の直近の成績はワーストであった。

 彼のその一言に、周囲もはたと気付いたようだ。

「これから軍を作ろうという話です。ならば、彼より優秀な搭乗員は五万といるはずです。彼に任せる必要はないのでは?」

 男は言葉を重ねる。

 蓮二は何も言えなかった。


 たとえどんな弁明をしようが、事実は事実だ。それを否定することは出来ない。

 それに、滅多なことは言えないのだ。

 シュトラーフェが人に姿を変えられる事。自我を持っている事。むしろ、拡張戦術機に姿を変えられるだけで、他はほぼ人間であると言っても過言ではない事。

 機密保持の観点から、言える訳がなかった。

 だが、彼女を失ってしまっては機密も何も無い。

 蓮二は口を噤んだまま、迷った。


「今その結論を出す必要もないだろう。後の議題とする」

 苦悶の表情で俯く蓮二の様子を見てか、西馬はそう言った。先延ばしにしてくれただけでも、十二分に有り難かった。


 そして、蓮二から見て西馬の右隣に座る男が立ち上がる。

 面長で精悍な顔つきの男だ。四角い縁の眼鏡がよく似合っていた。

相模彰利(さがみあきとし)です。以前は空技廠を取りまとめていました。最終階級は大佐です。現在は西馬さんと同じフリーターですよ」

 真面目そうな相模は、柔和な笑みを浮かべる。そこに、蓮二はなぜか安心感を覚えた。


 空技廠というのは、軍直轄の技術部門である。技術士官や民間の技師が携わり、兵器の開発を行う部署だ。

 月光が登場する以前の主力機だった雷電 三型の前身である、雷電 一型を世に生み出している。また、月光の開発にも参加しており、民間の工廠と手を組んでいた。

 それを取り仕切る立場ならば、エリート中のエリートであり、かつ有能な人材と言えよう。

 だが、そこまでの事情を知らない蓮二にとっては単なる偉い人であった。


 次に立ったのは、先ほど蓮二を問い詰めた男だった。

「鈴藤電子、開発部長の金城久彌(きんじょう ひさや)です。フリーターではございませんのでご承知おきください」

 丁寧な口調で言い、丁寧な礼をした。

 その様子に、蓮二はその男に対する印象を改める。

 先の問答で、どうしても敵対意識を持ってしまった蓮二だったが、その様子を見るに、合理性を追求する性格なのだろう。


 鈴藤電子は、兵器に搭載される電子機器の受注を一手に担う企業だ。大規模な生産拠点が東北にあったためアヴァロニアの占領下だったが、製造ラインは無傷ですぐに製造を再開できたらしい。


「……早川智洋(はやかわ ともひろ)だ」

 金城が座ると同時に声をあげたのは、蓮二の隣に佇む、かなり高齢に見受けられる男だ。

 その挨拶はとても短い。

 だが、皆彼の事を知っている様子だ。

 それもそのはず、早川は数年前まで日本軍総司令を務めていた人物である。

 この場にいる誰も、知らないはずがなかった。


 他にも、以前蓮二と会った索 有人及びレジスタンスの面々、西馬の部下数名、大臣を務めた経歴を持つ国会議員と彼が従える官僚数名や、外交官など各界に名を轟かす重鎮ばかりであった。

 そうと認識する度に、蓮二はどうにも場違いなように感じてしまうのだった。

 同時に、西馬の顔の広さに舌を巻く。呼ばれたうちの数名も同様だったらしく、一様にその表情は硬い。


「最後っすかね?えーっと、谷真矢(たに しんや)です。一応国家情報委員会で働いてます」

 蓮二が内心、この場に最も似合わない人物だと思っていた派手な若い男の口から、驚きの事実が語られる。

 ――国家情報委員会。

 それは、簡単に言えば諜報部隊である。軍の管轄下ではない。平時であっても、彼らは国々を渡り歩き、情報収集の任に就く。戦時に至っては、重要人物の暗殺や敵国メディアの扇動まで行う。

 外交上重要な役割を担う委員会なのだ。

 そして何より、国が公には存在を認めていない事になっている部署である。


 集まった面々に、内心戦々恐々とする蓮二であった。

余談ですが、相模彰利は初登場ではありません。

最初の方にちょろっとだけ出てたりします。

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