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罪の銀翼  作者: 富嶽 ゆうき
第二章 決別 敵と味方
19/74

迷いと焦り

 

「呼び立てたのは他でもない。君達に報告しなければならないことがある」

 宇垣は三人を部屋に集め、そう言った。

「日本軍がアヴァロニア侵攻の算段を立て始めた。近いうちに攻勢に出るだろう」

 蓮二と結は特段驚くこともなかった。想定していた事の一つであったからだ。シュトラーフェは何か感じるものもないようで、無表情を貫いている。

「具体的な時期とか場所とかは割れてますか?」

「いや、まだ立案段階のようだ。分かり次第教えよう。それで、君はどうするつもりかね」

 薄く笑みを浮かべながら宇垣は蓮二に問うた。

「まあ、自分の決めたことをやるだけですよ」

 そう言って彼は軽く笑った。



  * * *



 その後二、三の報告を受け、三人は部屋へと戻った。

「蓮二はさ、どうするの?」

 蓮二のベッドに腰掛けた結が、ぼうっと立つ蓮二にそう聞いた。

「それは今後の身の振り方の話なのか、日本軍の話なのか」

「日本軍の話に決まってるでしょうが」

 蓮二は苦笑いした。

「止めたいとは思うけどね。いざ友達と戦うかもしれないってなると、怖くて」

 そう語る蓮二は俯き、結から表情はよく見えない。

「そう、だね。守、まだ軍にいるもんね」

「守の他に、もう一人居るんだ。たしか、小さい時からの友達」

「それは、戦いたくないって思っちゃうね」

 蓮二の言葉に違和感を覚えながらも、追随する結。そして、二人の間には沈黙が訪れた。

 何か気の利いたことを言おうとしても、そんな言葉は二人とも思いつかず、ただ黙って虚空を見つめる。

 その時、傍にいたシュトラーフェが口を開いた。

「蓮二はあの時、"戦争をどんな手を使ってでも全て消す"と言ってた。その言葉は嘘?」

 ――いつもと変わらぬ抑揚の少ない声音。シュトラーフェにとっては何気ない質問だったのかもしれない。だが、蓮二にとっては鋭利な刃物のようにすら思えた。

 蓮二は一瞬顔を上げ、シュトラーフェを見つめたあと、歯を食いしばってすぐに俯いた。


「ごめん。ちょっと出てくる」

 そう言って蓮二は部屋を出た。

 追いかけようとするシュトラーフェ。だが、結はシュトラーフェの腕を掴んで止めた。

「私、何を、間違えた?」

 シュトラーフェは悲しげな顔で、結に訊いた。目には涙が溜まり始めていた。

 結は首を横に振る。

「しょうがないの」

 結も悲しさの色が表情に混じっていた。それを隠すためか、優しくシュトラーフェの頭を撫でた。



  * * *



 ――蓮二は悔しかった。

 一度心に決めたものが揺らいだ事が、何よりも悔しかった。シュトラーフェに指摘されてようやく気付いたのも悔しかった。

 あのままでは、何かに当たってしまいそうだった。それを必死に抑え、部屋を出た。

 二人なら、受け止めてくれるかもしれない。

 だが、それは甘えだ。

 蓮二がそれを許せるはずがなかった。


 勝手口を出て、外へやってきた。

 廃墟に似せて建物から出る。地下からは分からなかったが、外は雨が降っていた。

 蓮二は雨をかき分けるように歩いた。何を求めるでなく、何を目指すでなく。雨は廃墟にこびりついた泥を流し、砂を流し、コンクリートを削る。

 蓮二の顔は濡れた。それが雨かどうかは、推し量ればわかるのではないだろうか。

心の動きの描写が難しくて辛いです。


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