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罪の銀翼  作者: 富嶽 ゆうき
第一章 日本奪還作戦
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懐古

 

 蓮二は、大地と共に星を探していたあの場所に来ていた。眼下の景色はあの頃と全く変わらない。原型をとどめていない建物。荒廃した都市。

 だが振り向くと、全てが変わっていた。焼け焦げた地面。崩れた構造物。なくなった柵。

 あの頃過ごし、今も頭の中に彩られている景色はもう無い。蓮二は心細く感じた。

「これが人の業か。面白いな」

 ――あの時のように、そう呟いた。

「どこが面白いんだ?」

 背後から声がした。あの時より太く、低く、逞しさをも感じられる声。驚き、急いで振り向いた。

「よう、久しぶりだな」

 笑顔の大地が立っていた。




「そうか、お前遊特戦に入ってたんだな」

 二人は都市の淵に腰掛けている。

「あの後すぐな。どうしても俺の日常を奪った奴らが許せなかった」

 大地は笑っていたが、その目の奥に憎しみをたぎらせていた。それは深く、暗く、燃え上がるように大地を追い立てているようにも思えた。

「そういえばお前、家族はどうしたんだ?」

「え?」

 大地の突拍子もない問いに蓮二は驚いた。

「あの時家にいたんだろ?」

「え、えっと……」

 そして、何を返せばいいのかわからなかった。いくら記憶を漁っても、出て来るのはあの時、シュトラーフェに出会う前に見た夢の情景と、大地と共に星を探したことだけ。

「あぁ、思い出したくないものもあるよな。すまない、忘れてくれ」

「ん……おう。なんか悪いな」

 蓮二は釈然としなかった。

「気にすんな。じゃあ俺そろそろ行くわ」

「ああ、またな」

「おう!」

 大地は踵を返し、どこかへ去っていった。

 ――蓮二は心に引っかかるものを覚えていたが、それが何なのかはついぞ分からなかった。


 空に轟音が響く。輸送機だった。これから基地や都市の再建で使う物資を運んでいるのだろう。

 日本は解放されたのだ。


 そして、蓮二はその場を後にした。思い出をそのまま置いて来て、体を軽くした。

「悪い、待たせたな」

「構わない。それより通信が入っているぞ」

「わかった。出よう」

 シュトラーフェは以前のように両手を前に出し、袖を蓮二に向ける。

 一瞬のノイズの後、響いたのは西馬の声。

「播磨君かね。西馬だ。突然ですまないが日本軍司令部に来てもらいたい」



  * * *



 日本がアヴァロニアを退けた、というニュースは全国を巡った。

「我々日本軍は、日本本土決戦にて敵主力部隊を撃滅。その後神速を以って日本に巣食うアヴァロニア軍を撃破。解放せしめたのであります。これは――」

 主にそれを伝えたのは、日本軍の広報部である。流石に戦果を誇張して報道する、なんて事はしないが、まるで世界の一大事のように大々的に報道している。もともと日本軍にはそういったきらいがあった。

 また、その報道の中にシュトラーフェの名は出なかった。一瞬それと匂わす言葉があったものの、それだけであった。軍のプライドと意地がそうさせたのだろう。

 ――日本全土はそれに湧いた。


 だが、実際はただ負けた分を取り返しただけである。その事に気づいている者も少なからずいた。それでも大衆心理には流される。

 その上、言論弾圧までもが行われていた。無論、軍が主導しているわけではなかったが、軍の威光を笠に着た連中が意味のない力を振るっているのだ。

 西馬もこれには手を焼いていた。発覚した時点で処罰してはいるものの、そのまま闇の中、と言うことも多い。

 古くから軍とは国と国民を守る為に存在するのであるが、それが一度暴走すれば庇護対象であるはずの国民に牙を剥くようになる。本末転倒なのだ。



  * * *



 蓮二は単身で司令部へと赴いていた。

「急に呼び立ててすまない。あの部屋だ」

 西馬が出迎え、部屋の案内までをしてくれた。

 蓮二はノックをし、両開きの扉を押し開ける。

  中で待つのは鬼か仏か。

「……すまない」

 扉が閉じられた後、西馬は小さな声で独りごちた。

 ――外は黒雲が埋め尽くし、雷鳴が鳴り響く。

これにて一章は終わりとなります。

次の章は物語が転がり始めます。

蓮二の記憶は一体なんなんでしょうかねぇ。

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