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第九幕『演劇団』

やっと楽しく書けた部分・・(笑)

「狙いは、“花の都・オレリア”の財宝だ。 まずは、王女レナ姫を誘拐する! これがいちばん大事なんだ」

銀髪を右胸に垂らしたその人は、いかにも男らしく言った。


 盗賊団『マスカレード』の団長だ。部屋の一番奥、長い背もたれのある椅子に腰かけている。団員は円卓を囲み、話を聞いた。


「やることは大体いつもと同じだが……今回の流れを伝えておく。アタシたちは、“劇団マスク・パレード”として、王宮に招待されている」


 この盗賊団の手口は独特で、劇団に成りすまし事を成す――貴族や富裕層など、お金や宝を握る者たちの娯楽といえば、演劇だ。

ターゲットは普段、観客席にいる観客、若しくは、観客不在の住居である。とはいっても、演劇に目のない者たち以外には、この手は通用しない。

もちろんオレリアの城下町も、たいていの富裕層は演劇に熱を上げていると言われている。


「今回はこの盗賊団、始まって以来の大仕事だ。依頼人≪クライアント≫は今は言えねぇが……。とにかく、失敗は許されない」


(なんで、会議の時は言葉遣いが男になるんだ? でも、“アタシ”なのは変わらないのか)若干一人を除いて、数十名の団員は、息をのんで話に聞き入る。


「ただ……今回厄介なのは、劇の後の催しにも招待されているって事だ。無断欠席しようものなら間違いなく……全員の首に金が懸けられる。真っ向からそうなるのは避けるべく、今回の狙いはその夜の催しの最中だ」

「その催しというは何だ?」団員の一人が言った。

「王族主催の仮面舞踏会≪マスカレード≫」団長の言葉にその場は一瞬歓喜の声が上がった。


 仮面舞踏会≪マスカレード≫とは。仮面をつけてさえいれば誰でも参加できる、パーティのようなものである。貴族や庶民、人種を問わずどんな人間でも参加できる。

とはいえ……衣装を上手く着こなせてなかったり、立ち振る舞いが不自然だったりすると多少はバレてしまう事もある。

高級な衣装を身に纏える庶民はごくわずかなのだ。

 しかし富裕層の中でも変わり者だと、あえて庶民と思わせるような服を着たり、普段はできないからと道化や盗賊、はたまた浮浪者などの恰好を好んでしたりする。


 こういったパーティ、お祭り好きなのは、この盗賊団の皆も例外ではないようだ。

 噂によれば、そこではお見合いのような――要するに異性さがしが密かに行われているらしい。普段はしづらくても素顔が見えないという開放感を利用し、いわゆるナンパ行為をするのだ。それは若者たちの間では、一般的な楽しみ方のひとつとなっているようだ。


 団員の中には一番の女好きがいるが、その男は誰よりも浮かれたような顔をしている。その人物こそ先ほど団長に質問をした団員の一人、頭にはちまきを巻いた男だ。クールな顔をして内心は(うっひょ~。かわいこちゃんをゲットだぜ!)などと思っているに違いない。

「まぁ、その、アンタたちの本領を存分に発揮できるってわけね」その言葉にはさまざまな意味が込められているが、本人は至って真面目だ。


 女嫌いのジャックは、その中でも全く表情を変えずに話が終わるのを待っていた。

(あ、オカマに戻った……って、そんなことはどうでもいいから早く終らないか)


「とにかく、アタシたちは盗賊団『マスカレード』だ。其処んところは得意分野ってわけね」

その理由は、団員のそれぞれが個々の仮面マスクを持っている事からだ。仕事の時、その仮面をつける事がトレードマークとなっている。それが団の名前の所以ゆえんでもある。


「音楽担当、舞台・俳優、姫の誘拐役、余裕があれば金品・財宝を狙う係。大体いつもと同じだから、ここの説明はいいわね」

いつも大体、観客やターゲットを惹き付ける役、仕事をこなす役と大まかには決まっている。


「ただ」団長は今までより一層深刻な、だが挑戦するといった表情をする。「今回は俳優、姫の誘拐をどちらもしてもらわなくちゃいけない団員がいる」


 静まる団員たち。一番の大仕事は、誰に任されるのか予想したのだろう。


「それはアンタよ」

意外な人物の名に、団員たちの目は一瞬にして一点に集められることとなる。

「ジャック」



                                -第十幕へ-


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