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蛇足 タイトル回収

この先は見出しの通り蛇足おふざけです。


※蛇足 意味: 余計なもの。あっても無駄なもの。


もしこれまでのお話や展開を気に入ってくださっている方がおられるなら、この先を読まないでください。


タイトルにつられてここまで来られた方、地味でわりとシリアスな非暴力不服従運動を延々と読ませて申し訳ありませんでした。これよりタイトル回収します。この先をお読みください。

「乾杯」


杯を一気に煽った。喉がかっと熱くなる。杏子の蒸留酒。酒精も強い。脳にまですぐに熱が回る。

視界の隅でラドは自分の杯を窓の枠に置いた。中身が減ってない。


「あれ、お前なんれ」


途中で舌が縺れた。頭がぐわんぐわんする。足から力が抜け、身体が傾ぐ。立っていられなくなり、その場で意識を失った。




あまり良い目覚めとはいえない。意識はあるのに体が動く気配がないし、頭がガンガンする。おまけに肺が圧迫され、息苦しい。

もう少し寝ていたいのに、と朧げに先ほどまでの出来事を辿り、ぱちりと目を覚ます。

開けた視界から、とても麗しいご尊顔が見下ろしていた。自分の胸のあたりにラドが跨っている。


「あの、ラドさん? 俺、動けないんだけど」


ラドは無表情のまま答えない。首だけ動かして見回すと、宿のような部屋だ。オグは寝台の上に横たえられていて、大の字に広げられ、腕は動けないように鎖で止められている。


……え? 鎖?


金属製のチェーンが、寝台に鋲で止められている。


「ミリちゃーん、助けて」


ラドの背後からミリャーナがひょっこり顔を覗かせたので救いを求めたが、彼女も動こうとしない。嫌な予感が頭痛とともに掠める。


「もしや、酒に何か入れた?」

「大丈夫、身体の自由を奪うだけ。害はない」

「大丈夫の根拠が迷子」


自分の状況を客観視しようと努める。

妙な薬を盛られ、寝台に拘束されている。控えめに言って絶体絶命だ。このまま拷問でも受けるのだろうか。

なんか最近よく拘束されているような気がする。今年は拘束される年でしょうと言う占い師がいたら信仰する勢いで信頼するかもしれない。

あってたまるか、そんな運勢占い。


ラドが乳頭のあたりに手を置き、前かがみになった。


「お前が悪い。私たちの心を奪っておいたくせに袖にして。私は、フラれることに慣れていないんだ」


そりゃ、それだけの美人ならそうでしょうね、とオグは頷く。


「お前を手に入れてやる」 

「どうやって?」


反射的に疑問が口をついた。いつまでも拘束しておけないだろう。このままオグの気が変わるまで待つつもりだろうか。


「お前を骨抜きにする」


襟をくつろげながら、ラドは獲物を狙う肉食獣のようににやりと笑った。そうすると嫌でも、女性に特有の二つの膨らみが強調される。


「それにお前は意外と情が深い。例えば、処女を奪って、子どもが出来たら、相手の女をほっとけるか?」

「そんな自分を犠牲にするようなことするなよ。利己的な理由でできる赤ん坊が可哀想だろ」


オグは自分が捨て子なので、そういうのはちょっと忌諱感がある。


「うるさい。こっちだって切羽詰まっているんだ」


不本意ならやめればいいのに、眉を吊り上げて逆上される。


「可哀想だと言うなら、一緒に子育てしてくれるな、お父さん?」


正気じゃない。この場にいるもう一人に視線を移す。


「ミリちゃんもなんとか言って」

「さっき妻って言われて、真っ先に私のこと思い浮かべてくれて、嬉しかった。オグ、ラドのこと好きだと思ってたから」


ミリャーナは円らな眼を向けている。


「オグのこと好き。ねえ、私も可能性があるって、思ってもいい?」


こんなひた向きな思いを向けられて、どうして邪見にできよう。


「ミリ、服を脱がすぞ。下の方を頼む」

「何すんの!」


ラドは力ずくでオグの胸元を剥き出しにし、ミリが腰に手をかける。せめてズボンは脱がされまいと、脚を開き、尻をシーツに押し付ける。


「オグ、脱がせない」

「脱げないようにしてんの。いい加減にしろよ!?」


さすがのオグもいつもの余裕がそぎ落ちている。


「ふーん、お前がそういう気なら」

「ひゃうっ」


後ろ手で足の付け根を撫でられる。ギリギリを攻めているのは、絶対わざとだ。


「お前ら、いいとこのお嬢さんたちだろうがッ! こんなはしたない真似して良いと思ってんのか!!」


逆ギレ気味に、自由が許される範囲で必死に抵抗するが、鎖の音が鳴るだけだ。


「うるさく言う親類はもういない。それに、由緒ある家なんか当にない」


父親がいなくなったので、ストッパーが無くなってしまったのだろう。ラドの利き手が耳の後ろから首筋を撫でた。


「学校で男たちの猥談を耳にした時はなんて野蛮な奴らだと思ったが、聞いておくものだな。淑女教育では知れない下世話なことを知ることができた」


まずい。

何がまずいって立場が逆ならトラウマものの行為なのに、相手が美少女姉妹のせいでまんざらでもない気がしてくる。


「ラドばかりずるい」


ミリャーナが太ももに触れながら抗議の声をあげる。


「悪いな。年長に先を譲ってくれ」


細い指が自分の顎を持ち上げる。ラドは前かがみになる。彫像の如き美しい顔が近い、近すぎる。差すようなモスグリーンの瞳に自分が映っている。


「私のものになってくれ」


真っ赤に熟れた唇が落ちて来て――。


(完)

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