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6-2

エリックの会社に着く、

装飾は一切なく、シンプルなビルだ、


そういえば、エリックがどんな仕事をしているか、

いまいち詳しく知らないのよねと思う。


事件が解決したら、聞いてみよう。


ジョン、マイケル、キャシーが呼ばれる、

それぞれスーツに身をまとい、

エリート会社員といった風貌だ。


真面目そうで、怪しい所は少しもなく、

本当にこの中に裏切った人がいるのかしら?と思う。


「すまない、犯人だと決めつけている訳ではないが、

 状況からして、犯行が可能なのは3人だけなんだ、

 もう一度話を聞かせて欲しい」


「「「はい」」」


3人が返事をする。


「では繰り返しになるが、書類のあった部屋にいた

 経緯を聞きたい」


3人が順番に部屋にいた日、何をしていたか答えていく。


何度も確認されたのだろう、

答えは淀みなく、怪しい所もどこもない。


エリックが私を見る。


私は頷いて、飴を口に含む。


『いいかげんにして欲しいわ』


『この会社も終わりだな』


『いい転職先探さないとな』


表情からは想像もできない内心にぞっとなる。

確かに、この中の人なら、

簡単に会社を裏切れるだろう。


「この会社を辞める予定は?」


エリックが聞く。


「まだ書類が出てこないとは限りません、

 私はこの会社に尽くすつもりです」


『もうとっくに転職先探しているって、

 ああ、早く決まらないかな』


「私も、何とかこの会社を立て直したいです」


『沢山の人が辞めるだろうし、

 これを機会に狸達が辞めるはず、

 そうなったら出世街道一直線よ』


「私もです」


『これでディアル社で出世は決定だな』


内心を読んで、ひっかかる物を感じる。


その後もエリックの質問が続き、

とうとう確信を得る。


「私も1つ質問してもよろしいですか?」


私の言葉に、4人の視線が集まる。


「かまわない」


エリックの言葉を受けて、私は尋ねる。


「マイケルさん、もし貴方が重要な書類を隠すとしたら、

 どこに隠しますか?」


マイケルさんは不思議な顔をして返答する。


「そうですね、書類棚に紛れ込ませるとかでしょうか」


『なんなんだ?一応書類は、一番下の引き出しに入っているが

 まさか2重だとは気づかないだろう』


私はその心を読んで、エリックに耳打ちをする。


「3人はそのまま待機してくれ」


エリックと私は従業員のいる部屋へ向かう。


そこで、エリックは1つの机の前に立ち、

遠慮なく、一番下の引き出しを開けた。


そして、その中の書類を全て出し、

その底を確認する。


すると、ガチャンと音がして、底が開いた。


「あった」


その言葉に、何かと見守っていた従業員達が、

歓喜の声を上げる。


すぐに社長であるエリックの父親に報告がされ、

マイケルは警察に引き渡された。





「それにしてもマイケルは困った事をしてくれたよ」


エリックのお父さんは、

エリックが歳をとったら、こんな感じなんだろうな、

と思わせるダンディさで、

ついつい見とれてしまう。


「書類は見つかったのに、まだ問題が?」


「ああ、商売とは信頼だ、

 電力の供給の為には資本がいる、

 しかし、今回の問題で投資家の足が遠のいてしまった」


「なら、私が投資します!」


エリックが私を見る。


「借金を返してもまだ9億あるんです、

 そうですね、とりあえず5億でどうですか?」


「エリスさん、ありがたいが、

 この会社は今揺らいでいる、

 大きな損を出すかもしれないんだよ」


「いいんです!もともと無かったようなお金ですし、

 それに、電気の事業って夢があるじゃないですか!

 夢を買ったと思ったらいいんです、

 利益とか全然考えていません」


エリックのお父さまは呆然としてるようだった。


「それに、エリックがこれから頑張ってくれるはずです、

 きっとうまくいきます」


「ははっは、エリスさんがいうと、

 本当にそうなりそうだ、いい嫁をもらったな」


「はい」


エリックは本心から嬉しそうだ。


「とりあえず、倒産の危機はなくなった、

 後は、信頼を取り戻し、投資を呼び込むだけだ、

 エリスさんの期待に応えないとな」


「もちろんです」


エリックは大きく頷いた。






その数日後、新聞に大きな記事が出る。


『伝説の賭博師、事業に投資する!』


胴元に勝ったエリスは、いつの間にか、

伝説の賭博師と呼ばれており、

その賭博師が投資をしたとして、

イースランド国の裕福層の中で話題となった。


結局、国中の賭博師がエリックの事業に投資し、

想定していた以上の資金が集まり、

事業は軌道に乗り、エリックの会社は大きく発展する。




元々、エリスとの結婚で、

子爵の身分を得たエリックだが、

国中に電気を広めた功労者として、

更に伯爵へと陞爵される事になった。




ちなみにマイケルだが、

ライバルの他社から、他社での役員ポストを目当てで、

犯行に及んだと供述した。

もちろんライバル社はシラを切って認めない。

結局マイケルはどちらの会社にもいられなくなり、

清掃員として細々と働いているらしい。




そして、5億事業に投資していたエリスは、

更に大金持ちになり、

7割程を銀行に預け金利を得、

残り3割をまた他の事業に投資し、

更に名声を高めていく事になる。





「本当にここに占いのお婆さんがいたのかい?」


無事に結婚式を終えて、

エリックの事業が軌道にのった後、

心を読める飴をくれた占い師のお婆さんに、

お礼を言いに行った。


しかし、占い師のお婆さんがいた所は、

何度寄っても、誰もいない空間があるだけで、

その事に誰も気にしていないようだった。


「そうなんだけど・・・全然会えないのね」


「ひょっとして、魔女だったのかもな」


「うん、多分、そんな不思議な人なんだと思う」


「心の中でお礼を言っておこう」


「ええ、本当にありがとうございます」


2人で手を繋いで、その場を後にした。

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― 新着の感想 ―
企業内の裏切りと再建、そして恋と信頼の成就を描いた6-2章は、物語の山場として非常に読み応えがありました。心を読む飴を使って真相を暴く展開は、緊張感と爽快感が同時に味わえます。裏切り者マイケルの末路も…
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