表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/9

6-1 最後の飴

エリックに万年筆を無事に渡し、

宝物にすると言われ、

私と同じ事を言っていると笑いあった。


ちなみに、カジノへ行った事もばっちりバレて、

ざんざん心配されてしまった。


貴族のみが参加できるカジノで、

合法で、安全性が高い所だったので、

何とか小言で済んだが、

裏カジノとか、非合法の怖い所もあるのだと、

こんこんと諭され、

そう言った場所には近づかないと、

念書まで書かされた。


そんな事があって、結婚式の準備もほぼ決まり、

結婚まで後1ヵ月となった時だった。


「婚約を解消しようと思う」


エリックのいきなりの言葉に、

なんの言葉も出てこない。


父親も沈痛な表情で俯いており、

エリックの気持ちの問題ではなく、

家の問題だと察しられた。


「どうして?」


「君は何も気にしなくていい」


エリックの口癖を久しぶりに聞いて、

カチンとなる。


「そんなの無理よ!絶対納得できない!」


エリックは私が初めて言い返したので、

かなり驚いた顔をしてる。


今はましになったとはいえ、普段は無表情のエリック。

相当、驚いたのだろう。


「君はカジノで家の借金も返した、

 俺と結婚する必要もない」


「必要とか・・・そんなんじゃない!」


「俺じゃない人の方が幸せにできる」


「それは無理よ!」


「なぜだ?」


「だって、私エリックの事好きだもの!

 エリックじゃなきゃ嫌!」


私のいきなりの告白に、

エリックだけでなく、父親も驚いているようだった。


私のほほに涙が伝い、

ぐずぐずと泣いてしまう。


「そうか・・・」


父親がポツンと言う。


「エリックの会社の重要な書類が無くなったそうだ」


「え?」


父親の発言に、エリックが驚く、

恐らく、私には内緒にする約束だったのだろう。


「このままでは、エリックの会社は信頼を失くす。

 下手をすれば、取引先から弁償を求められるかも

 しれない、私としては結婚を許可できない」


父親が淡々と言う。


エリックがぎゅっと、こぶしを握り締める。


私はそれを聞いて、自分の部屋へと駆け込む。


「エリス!」


と父親が叫んでいるが無視をした。





私は自分の部屋で小さな瓶を手にする、

中には飴が1つ、最後の飴だ。


そしてそのまま、父とエリックの元へ行く。


「これは心が読める飴、

 これで書類が無くなったの探せない?」


「「心が読める?」」


父とエリックの声が重なった。


「そんなバカな」


父の反応は当然だ。


「これがあったから、カジノでお金が稼げたの」


その言葉に、父とエリックの視線が集まる。


「それが本当だとしても、

 もっとカジノで稼ぐとか、

 凄い使いようができるんじゃ」


「エリックとの婚約解消を止める以上の、

 使い方なんてないわ!」


私が断言すると、父とエリックは顔を見合わせあった。







その後エリックから話を聞く。


書類は契約に関するもので、

ビルから出すと音が出るセンサーが付いているので、

まだビルの中にある可能性が高い事。


「犯人だと思われる人物の目星はついている、

 これでもさんざん調査したからね」


「社内の人間の犯行なの?」


「ああ、それは間違いない」


エリックはどこか苦しそうに言う、

社員が裏切っているのだ、辛くて当然だろう。


「容疑者は、ジョン、マイケル、キャシーの3人。

 書類のある部屋に入る事ができて、

 一人になる時間があったのはこの3人だけだ」


「分かったわ」


「会社についたら、すぐに3人を呼び出す」


「ええ、よろしく」


「正直、心が読めるというのは信じられない、

 しかし、それが本当なら、

 犯人が分かるかもしれない。

 時間がもうない、今日今すぐでもいいだろうか?」


「時間がない?」


「今日の夕方5時に監査官が来る、

 それまでに書類が必要なんだ」


「分かったわ」


今は昼の2時だ、まだ間に合う。

私はあわてて、エリックの車に飛び乗った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ