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3-2

気球での空の旅を楽しんだ後、食事に誘われた。


車で移動した先は、

きちんと駐車場も完備されているような高級な建物で、

気球といい、かなりお金を使わせてしまって

いるのではと少し気になってしまう。


しかし、それを口にするのも気が引けるし、

彼が一生懸命エスコートしてくれているのだ、

今は、ありがとうと受けるのがいいだろうと思う。


だだ、何かお返しはしないと・・・とは思うけど。


いかにも高級そうな建物は、

内部に入ってもその印象が裏切られる事はなく、

大きなカーテンに赤い絨毯。

大きめのテーブルにアンティーク調の調度品。


小さなシャンデリアがいくつもかけられ、

それらが光を反射して、美しい空間を作りだしている。


「コースを頼んである」


メニューがない事に不思議に思っていると、

私の心を読んだ風に、エリックが言った。


コースか、確かにお腹はすいているけど、

昼食としてなら、

食べきれるか少し心配だな。


そう思いながら、ナプキンを膝にかける。


「前菜でございます」


白のカッターに黒のベストを着たウエーターが、

サーブをしてくれる。


「あ、ありがとう」


サラダがメインで、サーモンが花の形で盛り付けてある、

美しい一品に、ついつい魅入ってしまう。


1皿目でこれなら、メインはどんなかしら?


「どうぞ、後念の為、酒は頼んでないがどうする?」


「いえ!水で結構です!」


私は思わず叫ぶように言ってしまう、

これ以上散財させる訳にはいかない。


次にポタージュのスープ、

次にメインの肉料理が運ばれてくる。


「この肉は何かしら?」


エリックはウエーターを呼んで聞いてくれる。


「子牛の肉でございます」


「牛?」


肉と言えば、鶏とが一般的、

我が領地は羊が大量に飼育されているので、

羊もよく食べるが、これはあまり一般的ではない。


牛は牛乳を取ったり、チーズを作るという

イメージが強い。


「乳牛ではなく、お肉の為の牛になります」


ウエーターの説明を聞いた後、

フォークで肉を刺し、口に運ぶ。


「美味しい!」


ワインで味付けされている肉は、

とても柔らかく、羊とはまた違った味だ。


「うちの領地でも、お肉用の牛、

 育てそうかしら?」


「そんなに気に入ったのか?」


「これから、牛の肉が広まっていく気がするの、

 私の好みというより商売よ」


「成程」


ランチという事で、メインは1品だけ、

後はデザートとコーヒーだけだった。


食べきれるか不安だったが、

実際にはぺろりと食べてしまえた。


ここの料理なら、今度はシーフードがメインの

料理を頼んでもいいかなと心の中で思う。


デザートはジェラートで、3種類の味があり、

ミルクとイチゴとレモンだった。

それぞれ味に特徴があり、とても美味しい。


「ジェラートだけで、店を出せそうね」


「俺のも食べるか?」


エリックに言われて迷う。

あまり甘い物が好きそうでないエリックだ、

食べてもいいのかもしれないが、

私のお腹もだいふ膨れている・・・それに・・・


「せっかく同じ料理を食べているのだから、

 一緒に味わいたいわ。

 アーモンドのクッキーは好きなのだから、

 全く甘い物が駄目な訳ではないでしょう?


 できるだけ食べて、

 どうしても無理な時だけもらうわ」


「分かった」


そう言ってエリックがジェラートを口に運ぶ。


コーヒーを飲みながら、

ふとまたあの飴を使ってみようという気になった。


そう”心が読める飴”である。


なんとなく、気が向いて飴を口に含んでみる。


「気球、楽しかった?」


「ああ」


『気球より、はしゃぐエリスを見ているのが

 楽しかったな』


「車は運転手を雇うのが普通なのに、

 運転は楽しい?」


「そうだな」


『「モテる男になる為の本」には

 運転する男の横顔に惹かれるとあった、

 ポイントは稼げただろう』


ん?と思う。


「モテる男になる為の本」?


「ねえ、今日は楽しかった?」


「そうだな」


『もちろん最高の一日だ!

 しかし、あまりぺらぺらと本心を話す男は嫌われる、

 これぐらいがいいだろう』


「私はもっと感想が聞きたい!」


「しかし・・・」


『いや、「モテる男になる為の本」には、

 クールな男がモテルとあった。

 どこまでがクールなんだ?』


どうやら、エリックの無口、無表情は、

「モテる男になる為の本」の弊害だったらしい。


「私はもっと思っている事を言って欲しい、

 言わないと伝わらないわ、

 確かに、誰彼かまわず噂話をするような男性は

 好きではないわ、

 でも、無口な男性より、

 素直に思った事を言ってくれる男性の方が好き!


 どこぞの本の情報より、

 私を見て、私を知って、

 私が好きな貴方でいて!


 もちろん、私もエリックの好きな女性になれるよう、

 頑張るから!」


エリックの目が見開かれる。


私は恥ずかしくなって話題を変えた。


「ジェラート美味しかったね」


「そうだな」


『思った事をもっと言って欲しいか、

 例えば甘い物が本当は凄く好きと言っても、

 気にしないでくれないだろうか?

 本には男はブラックコーヒーと書いてあったのだが・・・』


この心を読んで、ジェラートを私が食べずに、

本当に良かったと思う。


「例えば、甘い物が好きなら、

 好きって言って欲しいの、

 そんな事でエリックのイメージが悪くなったりしないわ!


 むしろ、エリックはかっこ良すぎなのよ!

 ちょっと駄目な所を見せたって、

 バランスが取れるぐらいだわ」


「俺がかっこいい?」


「凄く素敵な男性だと思うわよ?

 私にはもったいないぐらい」


『これは夢なのだろうか』


「顔良し、お金持ち、優しい、エスコートができる、

 完璧じゃない!

 女の子はみんなメロメロよ?」


「君は?」


そう言われて、うっとなる。


「秘密!」


そう言ってコーヒーを口に含んで誤魔化した。

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